【夫から我が子への虐待(7)】夫から慰謝料をとれるか?
2024.04.01更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.児童虐待とは?
どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等
2.お子様への虐待について、何らかの形で償わせたい
お子様が児童虐待被害を受けた場合、そのことに対して夫側に何のお咎めもないということになると、やりきれないという思いを持たれる方も多いと思います。
夫に謝罪させるという方法も考えられますが、法律上謝罪を強制させる仕組みがないため、この点を強く言うことは難しい面があります。また、DV旦那は、自己の暴力を正当化している人が多いため、謝罪に断固として応じないという人も多いです。
そのため、児童虐待を受けたことに対して相手に何らかの償いをさせるという場合には、慰謝料を支払わせるという方法が現実的な選択肢になります。
3.児童虐待の程度
前述の児童虐待防止法上の児童虐待に該当する場合でも、直ちに慰謝料が認められないケースもあります。もちろん、虐待の内容が深刻なものであったり、継続的・執拗なものの場合には、慰謝料は認められるのですが、「児童虐待」イコール「即慰謝料が認められる」という関係にはありませんので、注意が必要です。
4.児童虐待の証拠
前述の通り、離婚手続の枠組みの中で、児童虐待に関して相手に償いをさせるという場合、慰謝料をもらうというのが現実的な手段になりますが、その第一歩になるのが、児童虐待の証拠になります。
最も有力な証拠となるのが医師の診断書になります。また、目立った外傷が残ったという場合には、外傷の写真も証拠になります。あとは、室内の壁や家具を破壊した場合、壊れた壁や家具の様子などを写真撮影しておけば、暴れたことの証拠になり得ます。
いずれにしましても、上記のような客観的な証拠がありませんと、慰謝料を請求することは難しいのが現状ですので、今後慰謝料請求を考えているという場合には、診断書等の証拠を残しておいた方が良いと言えます。
5.慰謝料の相場観
それでは、慰謝料という場合、どの程度の金額をもらえるのでしょうか。
原則としてお話しさせて頂きますと、ケースによって千差万別ですので、「相場」というものは存在しません。ただ、児童虐待での慰謝料は数十万円程度とイメージして頂くのが良いと思います。
児童虐待は、あなた自身が直接の被害者ではないという事情もありますので、慰謝料額が下がってしまう傾向があります。
6.慰謝料をどのように請求して行くのか
それでは、慰謝料はどのようにして請求して行くのでしょうか。
通常は、DV夫との離婚を決意されていることと思いますので、離婚の条件の一つとして慰謝料も要求して行くことになります。
DVの問題は、離婚を決意した直接のきっかけになっていることが多いと思いますので、離婚で話し合う問題の一つとして解決するのです。
7.DV夫の支払能力
児童虐待のきちんとした証拠がある場合、DV夫から慰謝料を獲得して行くことになりますが、その際に注意しなければならないのは、DV夫の支払能力になります。
いくら慰謝料を請求しても、DV夫が無職であったり、ほとんど蓄えがないというケースも多くあります。その場合には、実際に慰謝料を獲得することが難しいという場合もありうると思います。
このようにDV夫自身は十分な支払能力がないとしても、その両親や親族は資産家というケースもあります。その場合でも、あくまで慰謝料を請求できるのはDV夫本人と言うことになりますので、直ちにDV夫の支払能力の問題が解決されるわけではありません。
8.離婚と慰謝料どちらを優先するかの選択
私が相談を受けたケースでは、DV夫が自己中心的にお金を使うため、ほとんど蓄えが残っていないとか、転職族のため、勤め先を特定することが難しいというケースも多いです。
そのため、残念ながら慰謝料を払う払わないという議論をしていることで離婚に時間がかかるのであれば、慰謝料を諦めて離婚を選択するという方もいらっしゃるのが現実です。
もちろん、今後虐待夫が再婚等して同じことを繰り返さないために、こちらが受けた被害の何十分の一かでも取り返したいという気持ちから慰謝料を請求すべきケースが多いと言えます。そのため、簡単に慰謝料請求を諦めて欲しくないのですが、手続が進む内に離婚と慰謝料とで優先順位を付けて検討しなければならない場面に遭遇することもありますので、そのことは頭の片隅置いておいた方が良いと思います。
7.まとめ
・「児童虐待」イコール「即慰謝料」という関係にないことは注意が必要である。
・児童虐待の慰謝料請求にあたっては、虐待被害の証拠が重要な意味を持つ。
・慰謝料の金額はケースによるため一概にいくらとは言いにくい。
・慰謝料の問題は離婚の話し合いと一緒に話をするのが一般的である。
・慰謝料を請求するにあたっては、DV夫の支払能力の問題を無視できない。
・ケースによっては離婚と慰謝料どちらかに優先順位を付けた方が良いケースもある。
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