【絶対に夫に親権を渡したくない(23)】1回家庭訪問をして問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?
2023.01.09更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.離婚の際に親権のことが一番心配
夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
今回は親権のことで、特に、「1回の家庭訪問の持つ意味」という点にスポットライトを当てて解説していきます。
2.家庭裁判所調査官があなたの自宅を訪れて家庭訪問を実施し特に問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?
そもそも、離婚・親権に関連して家庭訪問が実施されることは、いくつかのテーマ、タイミングによっていくつかのパターンが想定されますので、今回の家庭訪問がどの手続との関係で行われたのかという点が重要な意味を持ってきます。
そのため、代表的な例に絞って以下の通り解説していきます。
(1)離婚調停の中で家庭訪問が実施された場合
1)面会交流の関係で家庭訪問が実施された場合
離婚調停の中で親権が激しく争われている場合、親権の適格性を判断するための調査は実施しないことの方が多いです。
そのため、調停手続きの中で家庭訪問が実施されるのは、①離婚調停と平行して面会交流調停も起こされており、②その面会交流の話し合いの助けになるように家庭訪問を実施するというケースが圧倒的に多いと思います。
このような面会交流の関係で家庭訪問をする場合、この家庭訪問は、お子様が安心できる場所で調査官と顔合わせすることを目的としており、ご自宅の清掃具合や整理整頓の具合を確認することは目的としていません。調査官も仕事柄多少は室内の様子を確認するでしょうし、簡単に確認して、大きな問題がなければ「あまり問題なさそうですね」といった言葉を発することもありますが、このことは親権とは全く無関係です(あくまで、面会交流との関係で家庭訪問している以上、やむを得ません)
2)親権の関係で家庭訪問が実施された場合
あまりケースは多くないと思いますが、夫婦双方が調査官が示す方向性には従うと事前に決めた上で、家庭訪問等を実施する場合もあります。
このようなケースですと、家庭訪問の際に、調査官から「問題ありませんね」といわれると安心してしまうと思います。
しかし、調停はあくまで話し合いの手続ですので、調査官の調査手法や調査範囲について夫側が納得しないと、後から「やっぱり調査官の調査報告には納得できないので、親権をイチから争う」と言われてしまいますと、調停手続きの中で親権者を決定することはできなくなります。
もちろん調査報告書が出来上がりますと、その内容には一定の重みがありますが、あくまで夫側が反対した場合には、早期に親権者を決定することは難しくなります。
(2)離婚裁判の中で家庭訪問が実施された場合
離婚裁判の中で家庭訪問が実施され、その際に調査官が特に問題がなさそうだという意見を述べていた場合、基本的には、非常に重要な意味を持つことが多いです。
ただ、このような場合でも、他の手続との関係では油断禁物の場合もありますので、注意が必要です。具体的には、以下のような場合には、特に注意が必要です。
1)その後に夫側の家庭訪問を予定している場合
あなたの家庭訪問が終わった後に、夫側の家庭訪問を予定している場合には、要注意と言えます。
と言いますのは、裁判所が既にあなたに親権を委ねる意向が強い場合には、あなたの家の家庭訪問は実施しますが、夫側の家庭訪問は最初から実施しないというケースも多いです。
もちろん、夫側の家庭訪問を実施するから敗訴の可能性が高いとまでは言えないのですが、夫側の家庭訪問なしのケースよりは慎重に臨む必要があります。
また、あなたの家庭訪問時に家庭裁判所調査官が「特に問題なさそうですね」と発言しつつ、夫側の家庭訪問時にも同様に「特に問題なさそうですね」と発言するケースもあります。
そうすると、あなたの家庭訪問時の調査官の発言だけをもって、あなたが大きく有利になったと考えるのは危険かもしれません。
(2)他にも大きな争点がある場合
例えば、お子様に対する不適切なかかわり方(特に虐待の有無・程度など)などが争点になっていて、その問題の方がお子様の生活状況よりも重要性が高いケースもあります。
そのような場合には、家庭訪問で大きな問題がなかったからと言って、安心するのは早いかもしれません。
(3)その後のお子様の発言等
前述のように家庭訪問を実施しても、その後に、調査官がお子様と直接会って話をする機会が設けられるケースが多いです(お子様の年齢によりますが)。
家庭訪問の際にも、あなたとお子様とが触れ合っている様子などは確認するのですが、お子様があなたと一緒ですと、あなたに遠慮して話をする可能性もあります。その確認の意味もあって調査官はお子様と1対1で話をしたいと言ってくるのが通常です(お子様があまり小さい年齢の場合には、1対1での話しは家庭訪問時に行うケースもありますが)。
そのような1対1の話し合いでのお子様の様子や発言も、親権紛争では重要な意味を持つことが多いです。
3.「現在の監護状況」も総合的な考慮要素の一つであるということ
家庭訪問は、親権紛争の中でも重要なイベントであることは間違いありません。
ただ、家庭訪問では、現在のお子様の養育環境等が分かるだけで、別居前の様子までは分かりません。
親権を決めるにあたって、家庭訪問の中で調査官が把握した「現在の監護状況」はとても大事なのですが、その一点だけで親権者が決まるわけではなく、過去の監護実績や、過去の虐待の有無など、色々な事情を総合して親権者は決定されますので、家庭訪問の結果だけに目を引かれないよう注意が必要です。
4.まとめ
・離婚調停の際の家庭訪問は、親権との関係では、あまり大きな意味を持たないことの方が多い。
・離婚裁判の家庭訪問時に特に問題がないとの発言があったとしても、その後の以下の調査の内容によっては安心できない。
①その後の夫側の家庭訪問
②他にも大きな争点がある場合
③その後のお子様の意向調査結果
・親権の判断は色々な要素の総合判断だということを忘れてはならない。
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