【モラハラ・DV妻との別居準備(2)】そもそもこちらが家を出ないといけないのか?
2022.07.20更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.離婚を前提に「別居」を選択する場合、そもそも、こっちが出ていかないといけないのか?
あなた自身、離婚を前提にして別居の決断ができたとして、①自宅があなたの持ち家であるとか、②持ち家ではないが、あなたの借家名義であるという場合、あなた自身が出ていかなければならないのかについて違和感を覚えることだと思います。
ただ、結論を申しますと、妻側を追い出すということは非常に難しく、現実的には、少なくとも一旦はあなたの方が別居せざるを得ないものと言えます。
2.どうして妻を追い出せないのか?
妻を追い出せない大きな理由としては、①妻側の権利ないしあなたの側の義務の問題と②今後の離婚にあたってこちらが不利にならないための配慮という二つの視点があります。
(1)妻側の権利ないしあなた側の義務の問題
妻側の権利というのは、簡単に言いますと、妻側の移動の自由や生活場所選択の自由を指します。あなたの方から妻を自宅から退去させるということは、妻の側の「行きたい場所に行く自由」や「生活場所選択の自由」と直接衝突してしまいます。
また、民法752条は、夫婦の同居義務を課しています。もちろん、別居の正当な理由がある場合、あなたが自宅を出ること自体は同居義務違反の問題は生じにくいのですが、妻側を追い出す場合には、同居義務に直接衝突することになってしまいます。
このようなご説明を致しますと、「夫側には生活場所選択の自由はないのか?」と疑問に感じてしまうかもしれませんが、もちろんあなたの方にもそのような自由はあります。ただ、それは、自宅に残る(要するに、妻側との同居生活を維持する)のか自宅を出て他の場所で暮らすのかのどちらかを選択する自由であって、結局は、妻側を追い出す根拠にはならないということです。
(2)今後の離婚にあたっての有利・不利の問題
離婚原因の一つとして民法は、悪意の遺棄を規定しているのですが(民法770条1項2号)、これは、あなたが別居して、妻側の生活を顧みないというケースだけではなく、妻を追い出して極端に生活に困らせるといったケースも含みます。
そのため、強引に妻を追い出そうとすると、悪意の遺棄に近くなってしまい、離婚がしにくくなるということも考えられます。
3.自宅についてはどう対処するのか?
あなたの方が自宅を出る場合、あなたとしてはいつまでも自宅の家賃を負担できない、住宅ローンを負担できないというケースも多いと思います。そのような場合の対応方法について、借家と持ち家とに分けて解説します。
(1)借家の場合
この場合には、一定の期間を区切って、妻側に借家名義を変更してもらうか、解約するというケースが多いと思います。
なお、あまり短期間を設定して、実質的に妻を追い出すという方法ですと、前述のように「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いと思います。
(2)持ち家の場合
持ち家の場合には、 一定の期間を区切って売却してしまうというケースが多いと思います。
あなたとしては、自宅購入時には人生に一度の買い物ということで強い思い入れがあるかもしれませんが、妻側を説得して妻に穏便に出て行ってもらったとしても、あなたが戻ると、妻側に居場所を知られることになってしまいますので、モラハラ・DV被害が再燃することになりかねません。
そのため、現実的な選択肢として売却するということになるのです。
ただ、前述のように短期間を設定して、妻側の意見も聞かずに売却してしまうと、「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いです。
4.時間がかかりそうなので一旦同居したまま交渉するという選択をする人もいる
妻からのモラハラやDVが激しい場合には、あまりオススメではないのですが、モラハラ・DV妻を追い出すことができず、他方で、折角の持ち家なのに自分が出ていくのも納得いかないという場合には、お互いに同居したまま離婚に向けた話し合い等を進めるというケースもあります。
私が担当した事件でも、同居したまま離婚協議を行い、離婚協議が難航した際に、離婚調停まで同居したまま手続きを進めた事件もあります。
但し、調停も上手くいかず、裁判をするという場合には、ほぼ別居が必須になってくると思います(同居したまま裁判を起こしても、離婚裁判の真剣度を裁判官から疑われてしまうという意味です)。
5.まとめ
・妻側の権利、今後の有利不利という観点から、妻側を追い出すことは難しい。
・自宅については、借家については、一定期間を区切って名義変更または解約、持ち家の場合には、一定期間を区切って売却するケースが多い。
・ただし、あまり短期間で自宅を処理しようとすると、離婚に向けた道のりが難航する危険性が高いので、慎重に検討する必要がある。
・お互いに同居したまま離婚調停までの手続を進めるというケースもある。
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