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【絶対に離婚したくない(1)】修復のために「すべきこと」・「やってはいけないこと」21選

2023.07.17更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。まだあきらめるのは早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から解説していきます。※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※
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1.大まかに場合分けが必要


一口に離婚回避のために「すべきこと」「やってはいけないこと」と言いましても、あなたが置かれている状況によって、対応方法も異なってきますので、⑴別居前・⑵別居後・⑶相手が弁護士を立ててきたという3つに分けて、解説していきます。

 

 

2.【ケース1】まだ相手が別居を開始する前の段階


 「まだ相手が別居を開始する前の段階」というのは、実際のケースとしては、まだ相手が別居をスタートしてはいないけれども、別居や離婚の希望を直接伝えてきたとか、様子を見ていると別居の準備をしている様子があるといったケースです。
 この場合に「すべきこと」「やってはいけないこと」を8個に絞って解説します。

(1)【心得1】反発しないこと
 私が夫婦修復のケースを担当していて、まず注意して欲しいと考える点が「反発しないこと」です。
 相手が別居希望や離婚希望をこちらに伝えて来る際には、当然ながら、あなたに対する不満をぶつけてくることが多いと思いますが、あなたの認識と異なる事実、誤解している事実が含まれることも多いと思います。
 そのため、相手の言い分をさえぎって、あなたの言い分や認識を伝えたくなるのも当然のことだと思います。

 もちろん、あなたの考えを伝えることで夫婦の誤解が解けて関係が修復するということもあるので、あなたの考えを伝えてはいけないということではありません。
 気を付けて欲しいのは、「売られた喧嘩を買う」ということにならないようにして欲しいということです。
 これでは、夫婦喧嘩にしかなりませんので、関係修復が遠のいてしまいます。
 相手の口から離婚や別居というワードが出たということは、真剣に悩んでいる可能性が高いと思いますので、反発しないで冷静に話し合いができた方が良いと思います。

(2)【心得2】相手の話を軽視しないこと
 これは、妻が別居希望や離婚希望を伝えてくるケースで多いのですが、夫側が「そんなこと言ったって、妻の収入だけでは生活できないに決まっているから、言わせておけばよい」とか「どうせ本気じゃないでしょ」といった形で、妻の話をまともに取り合わないという方もいます。
 しかし、私が夫婦修復の件でお話を聞いておりますと、「同居中に妻がそんなことを言ってたんですが、本気だとは思わなかったから、簡単にあしらったんですが、そうしたら急に何も言わずに出て行ってしまったんです。どうすればいいですか?」とご相談を受けることも多いです。
 そのため、「今回は本気かもしれない」と思って話を聞いた方が良いと思います。

(3)【心得3】理解できるところ、すべきところは、理解・共感する
 前述のように、相手は、あなたに対する不満をぶつけてくると思います。その中でも、理解できるところや、相手がこだわっていて、そこを妥協しないと夫婦修復の糸口がつかめないような部分については、理解・共感するという姿勢が大切なことが多いです。
 ただ、このような話をすると「要するに、相手の話に相槌だけ打っておけばいいんですよね?」とおっしゃる方もいますが、このような姿勢ですと、相手に見透かされてしまうことが多いので、実際にあなた自身理解・共感できる範囲で妥協するということの方が良いと思います。

(4)【心得4】謝るべきところは謝る
 前述の理解・共感に加え、あなた自身が悪かったという点については、謝罪するということも重要なことです。
 もちろん、相手の話の中で、相手が誤解しているというものについては、冷静に説明をして、誤解を解く必要がありますが、実際に、あなた自身の行動や言動で行き過ぎたと感じるものがあった場合には、(そのことだけは)素直に謝罪することも重要なのです。

 なお、このようなお話をすると、「自分はお互い様だと思うんですが、こっちだけ謝らないといけないなんておかしくないですか?」とか「この件は、自分よりも相手の方が絶対に悪いと思うんですが、それなのになんでこっちが謝るんですか?」とおっしゃる方もいます。
 ただ、「お互い様」「相手の方が悪い」という姿勢が続きますと、夫婦修復の道は閉ざされてしまうと思います。
 そのため、一旦は謝って「ただ、そっちの言い方も良く無かったよね」といった形で指摘することも考えてみてください。

(5)【心得5】気持ちを切り替えるイベントのセッティング
 相手から別居や離婚の話が出ているので、この険悪な状況が続くことは避けた方が良いと思います。
 そのため、家族の絆を深められるようなイベント(旅行や外食、記念日のお祝い等)をセッティングできるようであればセッティングして、それが、夫婦修復の試金石になることもあります。
 家族行事だと、険悪ムードを引きずりそうだという場合には、友人等を招いたパーティーのようにするとか、お互いの親族も読んで旅行に行くなど、バリエーションを工夫してみても良いかもしれません。

(6)【心得6】状況を客観視する
 これは、夫婦修復の糸口をつかむために、場合によってはやってみても良いかもしれないという方法なのですが、親しい友人等に相談して、その意見を聞くこともあります。
 と言いますのは、あなた自身が一人で抱え込んでいても、なかなか解決の糸口がつかめないという場合でも、親友等に相談すると、客観的に状況を把握できるとともに、解決の糸口をつかむことができることもあります。
 なお、この場合に注意して欲しいのは、あまり沢山の人に相談しない方が良いということです。相談相手が複数に上りますと、様々な意見が出て意見集約が難しくなりますし、情報が拡散するリスクが高まるからです。職場の先輩何人かに相談したら、いつの間にか職場の同僚等全員が知るところとなってしまったというケースもありますので、情報管理には気をつけたいところです。

(7)【心得7】極力別居は回避する
 相手が別居を始めてしまいますと、より一層夫婦修復が難しくなるのは事実なので、極力別居は回避した方が良いです。
 最悪、離婚裁判になることも視野に入れますと、別居開始が早いほどこちらに不利に働くことも事実です。
 他方で、①相手が精神的に不調を抱えていて、一定期間冷却期間を置いた方が望ましいと言えるケースで、かつ、②別居先も相手の実家とし、実家が夫婦修復を強く希望しているという場合には、別居回避にこだわり過ぎないことが、結果的に良い方向に結び付くこともあります。
 そのため、別居回避を基本としつつ、状況に応じて、ある程度柔軟に対応することも検討してみてください。

(8)【心得8】離婚届不受理申請
 私がご相談を受けておりますと、相手がこちらの署名と押印を偽造してまで離婚届けを提出するケースは少ないという印象ですが、少なからず勝手に離婚届を提出しようとする人もいます。
 特に同居しておりますと、相手もこちらの印鑑の在処を知っているケースも多いので、勝手に押印されるリスクは捨てきれません。
 そのため、相手が勝手に離婚届を提出しそうであれば、予めこちらから離婚届不受理申請を出しておいた方が安全です。

 

 

3.【ケース2】相手が別居を開始してしまった後の段階


 一口に、相手が別居を開始してしまった後のケースと言っても、①こちらも同意した上で別居しているケース、②こちらは同意していないけれども、強く反対したわけではないケース、③反対している中で別居されたケース、④反対以前に何も相談がなく勝手に出て行かれたケースなど複数のケースが想定されるのですが、これらのケースをひとまとめにして、別居後のケースとして以下解説していきます。

(1)【心得1】相手の姿勢に合わせた対応を心がける
 私が相談を受けていて一番感じる点なのですが、別居後により険悪になってしまっているケースをよく見かけます。
 それは、別居後も、相手が自身の悩みなどを真剣に相談等しているのに、こちらが、寄り添おうとせず、自ら夫婦修復の糸口をなくしてしまっているといったケースです。
 そのため、私が良くお勧めしますのは、「相手の姿勢に合わせた対応」というところです。

 例えば、別居したものの相手がこちらと接点を持ちたいがために必要なものを持ってきて欲しいといった形でサインを送ってきた場合には、それを送り届け、その際に少し顔を見て冷静に話をするといった対応が望ましいと言えます。他方で、一旦は話もしたくないという場合には、しばらく敢えて連絡を取らないという対応が望ましい時もあります。
 このように相手の姿勢に合わせて対応するのです。
 くれぐれも、「別居なんて勝手なことをして、断じて許せない」という姿勢は避けた方が良いかと思います。

(2)【心得2】相手を見守ってくれる人の言うことを真摯に受け止める
 相手の別居が一時的な場合には、実家に身を寄せるというケース、社員寮で寝泊まりする、友人のところに居候するなどいくつかのケースがあると思いますが、誰かしら身近な同居者、つながりのある人物がいることが多いと思います。
 このように相手のことを見守ってくれる人物が言うことは、客観的に相手の様子や心境を言い表していることが多いと思いますので、その話は真摯に受け止めた方が、夫婦修復につながるケースが多いです。

(3)【心得3】別居解消を急かさない
 法律的な戦略という観点からは、別居期間を短期間に収めたほうが望ましいです。
 ただ、焦って対応すると、相手は、一層態度を頑なにしてしまうリスクが高いので、既に別居がスタートしてしまっているという現状を踏まえ、焦らない方が結果的に夫婦修復につながることが多いような気がします。
 もちろん、相手が別居を始めたものの、内心では、早く迎えに来て欲しいと思っているような場合には、早く迎えに行った方が良いのですが、慎重な対応を心掛けた方が良いと思います。

(4)【心得4】長期間の断絶にはしないこと
 前述の通り、相手の姿勢に合わせて対応することが肝要なのですが、あまり期間が空き過ぎてしまいますと、逆に夫婦修復のきっかけがなくなってしまうということもあります。
 そのため、少なくとも1か月に一度も連絡しないままになってしまうとか、あまり相手との連絡不通が長期間になり過ぎないよう配慮した方が良いと思います。もちろん、相手と直接連絡を取ることが憚られる場合には、前述のように相手のことを見守っている相手の両親等とコンタクトを取るなど、連絡の相手についても慎重な検討が必要です。

(5)【心得5】お子さんのことばかりにならないこと
 相手の別居に納得していないため、相手に積極的に連絡したいとは思わない、けれども、子供のことは溺愛していたので子供のことは積極的に話をしたい、という方も多いと思います。
 ただ、相手との連絡がお子さん一色ということになりますと、相手は、自分のことを軽視されていると誤解してしまいます。
 そのため、①相手との連絡が、お子さんの様子の確認ばかりにならないこと、②相手との接点が、お子さんとの面会交流の「ついで」のようにならない等の配慮が必要です。

(6)【心得6】相手の隠し録音には要注意
 既に相手が別居を開始していますので、本格的に離婚に向けて動き出す予兆という場合も多いです。
 その場合、自身に有利な言質を取るために、あなたとの会話の内容を隠し録音してくるケースも多いです。
 そのため、別居後、相手と直接会話する際などには、相手に録音されているリスクも考慮しながら話をする必要があります。

(7)【心得7】記念日対策等
 あなたが別居に納得していないような場合には、相手の誕生日や結婚記念日を祝いたい気持ちにはなれないかもしれません。
 ただ、私が見ておりますと、記念日のプレゼント等が夫婦修復の後押しになったケースもあります。
 もちろん、状況によっては、このようなプレゼントが逆効果になることもありますので、慎重に検討した方が良いと思いますが、相手が受け取りそうな雰囲気があるのでしたら、プレゼント等を提案してみることも一考に値します。

(8)【心得8】離婚届不受理申請
 別居後は、相手もこちらの印鑑を勝手に押印するリスクは減りますが、①別居前に勝手に離婚届にあなたの判子を押してしまっているケース(その離婚届を持ち出しているケースです)や②別居後に判子を購入して、あなたの判子と偽って離婚届を提出するケースもあります。
 そのため、まだ離婚届不受理申請をしていない場合には、早めに申請しておいた方が良いと思います。

 

 

4.【ケース3】相手が弁護士を立てた後の段階


 相手が弁護士を雇ってしまった場合、通常は、相手の離婚意思は固いことが多いと思いますので、そのような前提で対応する必要があります。
 以下では、相手が弁護士を立てた後の段階というシチュエーションでの心得を5個に絞って解説します。

(1)【心得1】相手との直接の連絡は控えること
 相手が弁護士を立てた場合には、その弁護士が窓口になりますので、相手との直接の連絡は控えた方が良いです。
 なお、このような説明をしますと、「相手の弁護士に連絡を取れなきゃいけない法律はあるんですか?」と質問されることも多いです。結論から言いますと、相手の弁護士に連絡することを直接義務付ける法律はありません。
 ただ、相手は、あなたと直接やり取りをしたくなくて、弁護士を立てていることが多いので、相手と直接連絡を取ることが逆効果になることが多いということは認識しておいた方が良いと思います。
 また、あまり相手に執拗に連絡してしまいますと、夫婦であってもストーカー規制法違反の問題が生じてしまうこともありますので、この点は注意する必要があります。

(2)【心得2】(禁止されていないのであれば)相手の両親等への連絡を試みる
 相手の弁護士の対応によるのですが、相手本人への連絡は禁止しても、相手の両親への連絡は、これまでのあなたとの関係性等から禁止等しないケースもあります。
 もちろん、相手の弁護士から禁止された場合には、相手の両親等への連絡も控えた方が良いのですが、禁止されていないのでしたら、夫婦修復のために、相手の両親等に連絡を取ることも一考に値します。

(3)【心得3】面会交流の場の活用
 特にお子様が幼い年齢の場合、面会交流時に夫婦が顔を合わせるというケースも多くあります。
 もちろん、そのような場合に、あからさまに今後の夫婦関係のこと等を話すことは避けるべきですが、面会交流についての感謝の気持ちを伝えるなど、多少でも夫婦修復につながる対応ができるケースもあります。

(4)【心得4】手紙の活用
 相手が弁護士を立てた場合、あなたの気持ちを相手に伝える手段としては手紙が最も有力な手段となります。
 相手の弁護士の方針によっては、手紙を渡してくれないとか、弁護士が受け取っても相手本人が読んでくれないというケースもあるのですが、手紙の存在が相手に一定の影響を与えることもありますので、極力手紙を書くことをおススメすることが多いです。

(5)【心得5】こちらも弁護士を立てることを検討する
 相手が弁護士を立てた場合、こちらも、不備なく対応するには、弁護士を立てた方が望ましいケースも多いです。
 そのため、弁護士を立てること、その場合、どの弁護士に依頼するのかといったことは検討し始めても良いかもしれません。

 

 

5.まとめ


(1)まだ別居前の場合の8個の心得
①相手に反発しない
②相手の話を軽視しない
③相手の話に理解・共感する
④謝るべきところは謝る
⑤気持ちを切り替えるイベントのセッティング等をする
⑥身近な人に相談して客観的意見をもらう
⑦極力別居を回避する
⑧離婚届不受理申請をする

(2)別居開始後の8個の心得
①相手の姿勢に合わせた対応を心がける
②相手を見守ってくれる人の言うことを真摯に受け止める
③極力別居解消を急かさない
④長期間の断絶にはならないよう配慮する
⑤お子さんのことばかりにならないよう注意する
⑥相手が隠し録音している可能性を考慮して会話する
⑦記念日対策等をする
⑧離婚届不受理申請をする

(3)相手が弁護士を立てた後の5個の心得
①相手への直接の連絡は控える
②(禁止されていないのであれば)相手両親等へのコンタクトを試みる
③面会交流の場の活用を考える
④手紙を書く
⑤こちらも弁護士に相談してみる

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ・DV妻との別居準備(8)―置き手紙の活用法

2022.07.25更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

1.なぜ置き手紙なのか?


(1)モラハラ・DV妻と別居する際、事前にモラハラ・DV妻と話ができていて、〇月〇日に家を出るということの確認が取れているようでしたら、別に置き手紙を準備する必要はないかと思います。
 他方で、①モラハラ・DV妻に多少別居話をしたが、議論が進展していないとか、②モラハラ・DV妻に事前に伝えないほうが良いケースの場合には、別居時に置き手紙を活用することをオススメしています。

 

(2)何も残さずに別居することは混乱のもとである。
まず、置き手紙も何も残さずに別居を開始してしまいますと、モラハラ・DV妻は、あなたの職場や実家、親族、果ては警察など様々なところに電話をかけまくったり、直接訪問してくることもありますので、混乱を避けるためには、少なくとも置き手紙くらいは残したほうが良いと思います。

(3)なぜメールやLINEだとダメなのか?
 私は、メールやLINEではなく、置き手紙をおススメしています。それは主に以下の理由からです。
① 手紙の方がこちらの真剣度が伝わりやすい
② 別居後のやり取りを回避しやすい
③ 送信間違い等がほぼ発生しない

 詳しく説明していきますと、①につきましては、これだけメール等の通信機能が発展しておりますと、夫婦でやり取りをする際に手紙を利用することはかなり稀だと思います。そのため、置手紙の方が、「普段やらないことをやっている」という印象を深めることができると思います。
 次に、②につきましては、別居の旨等をメールやLINEで送ると、モラハラ・DV妻側から即座に返事がなされたり、頻繁に連絡が来るなどして対応に苦慮するケースが多いです。何より、こちらからメールやLINEをすると、自分から「メール(またはLINE)を連絡手段として利用する」と言っているようなものなので、相手の誤解を強めてしまうと思います。
 LINE等ですと、可能性は低いのでしょうが、メール等ですと、特に、慌ただしく別居準備をしたケースなどでは、誤って他の人に送信してしまうといったこともあります。自宅の目立つところに置き手紙を残しておけば、それを他人が見ることはほとんどないかと思います。

 

2.置き手紙には何を書くか?


 置き手紙のボリュームをどの程度にするかは、あなた自身の考え方にもよるのですが、大きく分けると以下のようなことを盛り込むことが多いと思います。以下、詳しく解説していきます。

① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達と一緒に家を出なかったが、子供達を大切に思っている旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先(担当弁護士の電話番号等)

 詳しく説明していきますと、①については、離婚を前提としていることはしっかりと伝えることが多いです。一旦冷却期間を置くための別居だと誤解されては困りますので、この点を明記するのです。
 次に、②につきましては、どこまで細かく記載するかはあなた次第です。ただ、あまり細かい事情を書いても、モラハラ・DV妻がそのことを理解するとはとても思えませんので、簡潔に記載することが多いと思います(短い場合には、2,3行で済ませるケースも多いですが、しっかりと気持ちを伝えておきたいということで何十行も書く人もいます)。

 

上記の③については、モラハラ・DV妻が、子供達に間違ったことを伝えたりしないよう、あなたがお子様達に対する愛情は持ち合わせている旨を記載するものです。
 また、④については、前述の通り、納得いかないとモラハラ・DV妻はあなたを探し回る人もいるため、くれぐれも探さないよう伝える文言です。
 なお、実際にはあなたは浮気などしていないのに、同居中から、妻があなたの浮気を執拗に疑っていたケースとか、あなたの居場所を伝えないと職場に迷惑がかかりそうだといったケースですと、④の箇所で「今後は実家で暮らします」というように、あなたの居場所を伝えてしまうケースもあります。
 ただ、このように書いてしまうと、モラハラ・DV妻が実家に乗り込んでくることも多いので、どこまで書くかは慎重に検討したほうが良いと思います。

 

 最後の⑤については、あなたの別居先住所を伝えるという意味ではありません(ケースによっては、あなたの住所は絶対に伝えないほうが良いというケースも多いかと思います)。担当の弁護士が決まっているようでしたら、弁護士の連絡先を書いたり、「追って近日中に弁護士から手紙が届きます」と書いたりします。また、あなたのご実家のお父様に間に入ってもらう場合には「今後は父の携帯電話までご連絡下さい。私宛の直接の連絡はお控えください」と書いたりします。

 

3.置き手紙のボリュームは?


 置き手紙を作成する際、この際だからということで、かなり長い文章を考える方もいます。
 ただ、モラハラ・DV妻は基本的に自分がしてきたことは間違っていないという発想の人が多いため、あなたが書いている内容を読めば読むほど怒りが湧いてくるという人が多いです(非常に残念な話ですが)。
 そのため、あまり長文にしてしまいますと、モラハラ・DV妻が怒りを強めてしまうだけということにもなりかねませんし、また、あまり文章が長いと、あなたの伝えたいことが伝わりにくくなるという面があることも否定できません。
 そこで、置き手紙はあまり長くしないケースが多く、私がかかわったケースですと、A4の用紙に1枚か、どんなに長くても2枚までというケースが多いと思います(A4用紙1枚と言っても、半分か3分の1くらいは空白で、文章がぎっしり埋まっているというケースは少ないことが多いと思います)。

 

4.置き手紙は手書きが良いのか?


 私は、あまり長文でないようなら手書きをおススメしています。
 手書きの方があなた自身の気持ちとして別居・離婚を決意したというところをモラハラ・DV妻にしっかりと伝えられると考えるからです(ただ、残念ながら、モラハラ・DV妻は、こちらの真剣な気持ちをほとんど理解してくれないことの方が多いです)

 

5.まとめ


・別居の知らせは、メールやLINEではなく、置き手紙の方がオススメである。
・置き手紙には以下のようなことを書くことが多い。
① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達を愛している旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先
・置き手紙はA4用紙1枚くらいに収めてしまうことが多い。
・置き手紙は極力手書きの方がオススメである。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ・DV妻との別居準備(7)―子供のことはどうすれば良いか

2022.07.25更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.子供と一緒に自宅を出ることはアリなのか?


 モラハラ・DV妻との生活が限界だとしても、子どもを置いて別居することには強い抵抗があるという方も多いと思います。
 それでは、お子様と一緒に別居することは法律上問題ないのでしょうか。
 もちろん、奥様と冷静な話し合いができて、奥様のしっかりとした同意を得られるようでしたら、お子様と一緒に別居することは問題ありません。
 ただ、相手がモラハラ・DV妻のため、簡単に同意することは期待できないと思いますので、その場合にどうするのかが大きな問題になります。

 

 

2.非常に残念なことに男性側は非常に不利


もちろんモラハラ・DV妻側の了解を得ていなかったとしても、そのことだけで、違法な連れ去りになるということではありません。
しかし、女性側では比較的容易に許容されるのに、男性側と言うだけで、連れ去りの違法性の審査が厳格になっているというのが日本の裁判所の実務の実態と言えます(非常に残念なことですが)。

そのため、モラハラ・DV妻の同意を得ずにお子様と別居したことが「違法な連れ去り」に該当しないためには、厳しい条件を満たす必要があります。

 具体的には以下の視点で検討が行われることが多いです。

1)【違法な連れ去りと言われないためのポイント1】モラハラ・DV妻の子供への攻撃の内容
 私のところにご相談に来られる方は、「妻は、子供の前で私のことを馬鹿にしたり、私の悪口を子供に聞かせているので、これは心理的虐待だと思います」とか「子どもの前で、私は妻から殴る蹴るの暴力を振るわれました。これって面前DVですよね?」といったお話をされる方も多いです。
 確かに、これらの行為は、児童虐待防止法上は「児童虐待」に該当し得る行為なのですが、「違法な連れ去り」と言われないためには、あなた自身への攻撃というよりも、お子様へどのような攻撃が加えられてきたのかという視点の方が非常に重要です。

 もちろん、モラハラ・DV妻がお子様に強い暴力を振るって大怪我をしたといったケースですと、お子様の身を守るためにも別居しなければならないということになると思いますが、妻から子供に対する攻撃が言葉の暴力で、そこまで極端なものではないといったケースですと、その点だけで「適法な連れ去り」と認めてもらうことは難しいこともあると思います。

 
2)【違法な連れ去りと言われないためのポイント2】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。
 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

3)【違法な連れ去りと言われないためのポイント3】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃のお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。
 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います。

4)【違法な連れ去りと言われないためのポイント4】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも大きな影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が10歳以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。
 そのため、同居中、ご夫婦のうちどちらがどの程度お子様に関わってきたのか、育児をどの程度分担してきたのかという点が重視されるのです(「継続性の原則」と呼ばれることもありますが、これまで育児を担ってきた親が引き続き育児に携わることが子供の健全な成長にとっては良いという考え方です)。

5)結局は様々な要素の総合判断になる。
 前述のモラハラ・DV妻からお子様への攻撃のように、お子様が大怪我をさせられたような極端な例であればともかく、一般的には、「妻からの攻撃内容だけからは適法な連れ去りという捉え方は難しいとしても、お子様の意思やこれまでの監護実績なども総合して、結果的にあなたがお子様の一緒に別居したことは正当なものだと評価できる」というように、上記のような要素を総合的に考慮して結論が導かれることが多いです。
 そして、「違法な連れ去り」か「適法な連れ去り」なのかについては夫婦の間で激しい対立になることも多く、その場合には、お互いの言い分というよりも、言い分の裏付けがどの程度あるのかという点が勝負の鍵になります(要するに「お子様が大怪我させられたことがある」という言い分のみでは効果が薄く、その時お子様が病院を受診した際の診断書などを裏付けとして提出する必要があるという意味です)

 

4.できる限り「事前に」弁護士に相談してみた方が良い


非常に残念なお話なのですが、妻側が勝手に子供を連れ去る分には、「違法な連れ去りではない」と言われてしまうケースが多いのに、同じことを夫側が実行すると「違法な連れ去り」と言われてしまうことは多いです。
また、前述のように、お子様と一緒に別居することが可能かどうかは様々な要素の総合判断となるケースが多く、インターネット等で得た知識だけでは見極めが難しいことが多いです。
そのため、無料相談でも良いので、特にお子様の監護権等について詳しい弁護士に「事前に」相談をして、あなたがお子様と一緒に別居することにどのくらいのリスクがあるのか、ある程度の見込みを事前に立てておいた方が良いと思います。なお、その際には、女性側で離婚問題を取り扱う件数が多い弁護士ではなく、男性側での取り扱いも多い弁護士に相談した方が良いと思います。

5.苦渋の決断を迫られるケースも多い


 前述のように弁護士からの意見ももらった場合には、その意見も考慮に入れた上で今後の動き方を検討していくことになります。
 ただ、残念ですが、男性側の壁は高いことが多いので、お子様と一緒に別居するリスクが高いというケースでは、「妻とは一緒に暮らしたくありませんが、子供のことは溺愛しているので、子供と離れ離れになるくらいなら、別居を一旦取りやめます。」とおっしゃる方もいます。
 もちろん、妻からのモラハラやDVが激しい場合、自分を犠牲にして別居を断念するということは、弁護士としておススメできる話ではないのですが、他方で、お子様に対する思い入れも強い場合には、苦渋の決断を迫られるケースも多いのが事実です。

 

6.まとめ


・お子様と一緒に別居する場合、非常に残念なことに男性側の方が不利である。
・違法な連れ去りに該当するかは以下のような要素を総合して判断することが多い
① モラハラ・DV妻のお子様への攻撃内容
②連れ去りの態様
③お子様の意思
④それまでの監護状況
・別居前に事前に弁護士に相談してリスクを検討しておいた方が望ましい。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ・DV妻との別居準備(6)―【持ち物リスト】別居の時に何を持って出れば良いか?

2022.07.25更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.別居時の持ち物を点検する理由


 

 モラハラ・DV妻側が離婚に同意してくれなくとも、夫婦間の冷却期間として別居については同意しているという場合には、別居時の持ち物についてあまり神経を使う必要がないかもしれません(後日取りに行くことが比較的容易なので)。

 他方で、モラハラ・DV妻側に事前に話をせずに別居する場合には、予め必要なものを持ち出しておいた方が無難と言えます。

 私が担当した事件では、別居後直ぐに奥様が旦那様の持ち物を全て勝手に処分してしまったといったケースや、別居後ほどなくして奥様が自宅の鍵を交換してしまって自由に入れなくなってしまったケースなどもあります。

 このようなことも想定されますので、別居時の持ち物についてはできる限り漏れがないように注意する必要があります。
 他方で、余りあからさまに準備をしてしまいますと、折角モラハラ・DV妻に事前に別居話をせずに準備していたのに、別居を妻に察知されて、色々と追及されたり、妨害されるリスクもありますので、この点にも注意が必要です。

 以下では、持ち物リスト的な観点も含めて詳しく解説していきます。

 

 

2.別居時の持ち物        


 

 別居の際には、以下を参考に、詳しく荷物の整理をしてみると良いと思います。

(1)貴重品や普段の生活に必要なもの
・今後の生活にあてる当座資金
・あなた名義の預貯金通帳 ※繰越済みのものもあった方が良いです。
・キャッシュカード、クレジットカードその他のカード類
・あなた名義の保険証券(生命保険、学資保険等)
・銀行届出印
・あなたの実印、印鑑登録カード
・運転免許証、パスポート
・健康保険証
・年金手帳、母子手帳
・(余裕がある様ならば)あなたの高価品(宝飾品や骨董品)や婚姻前の記念品
・常備薬・処方薬
・普段利用している手帳
・ある程度の衣類
※どうしても処分されたくないもの等は別居時に持ち出したほうが良いですが、難しい場合には、その物の写真を撮っておく場合もあります(そうすると、後でモラハラ・DV妻から勝手に処分された場合でも、処分されたことの証明になるため)
※事情があって、お子様も一緒に別居せざるを得ないというケースの場合には、お子様の貴重品や教材類等もお持ちください。

 

(2)モラハラ・DVの証拠となるような資料
・ボイスレコーダー(妻のモラハラ発言についてボイスレコーダーで録音を取ったことがあるようなケース)
・以前使用していた携帯電話及び充電器(以前の携帯電話にデータを保存していた場合)
・自宅PCに保管していたデータ類
・写真(モラハラ・DV妻が物を投げて壁や家電を破損した場合に、破損部位を撮影した写真や、モラハラ・DV妻からの暴力であなたが怪我をした時の怪我の写真等)
・子育て支援センターや警察からの開示資料(保存期間が経過してしまうと今後開示申請をしても入手できないこともあるため、既にお持ちであれば持って出た方が無難です)
・あなたがつけていた日記等

 

(3)財産に関する資料
・(あなたの)直近の源泉徴収票
・(あなたの)直近3か月分の給料明細書
・妻側の収入が分かる資料のコピー等がこちらの手元にあるようなら、その資料
・妻側の資産のありかが分かる資料コピー等がこちらの手元にあるようなら、その資料
・その他財産に関する資料のコピー(不動産権利証のコピー等)

 上記は一例ですので、事件によっては、ほかにも持ち運んでおいた方がよい荷物があるケースもあります。また、今回の解説では、大がかりなものを持ち運ぶ余裕がないということを前提にしていますので、家具や家電類は含んでおりません。

 

3.荷物を持ち出すタイミング


 私がご相談を受け取りますと、「モラハラ・DV妻は専業主婦で基本的に自宅にいるため、別居日がなかなか決めずらい」とか「別居日は休みを取りたいが、平日休むと妻に怪しまれそうだ」というご相談を受けることも多いです。
 そのような場合でも、夏期休暇や冬期休暇中、モラハラ・DV妻は子供と実家に帰るということで、そのようなタイミングで別居をスタートされる方も多いようです。また、早朝5時とか始発が走り始めるタイミングで家を出てしまう(後述の通り、必要な荷物の大半は前日までに郵送等で送ってしまっておく)という進め方をすることもあります。

 なお、大掛かりな引っ越し業者に頼むことが難しいという場合には、事前に何回か小分けにして段ボールを一つ一つコンビニ等から宅急便で送るとか、実家が近所なので、小分けした段ボールを何回かに分けて実家に一時保管しておくという進め方をする方もいます。

 

4.まとめ


・別居後妻が勝手に処分等してしまうリスクもあるので、別居の際には極力漏れなく荷物を搬出したほうが良い。
・搬出すべき荷物のカテゴリーとしては以下を意識して整理するとよい。
①貴重品や生活必需品等
②モラハラの証拠となるような資料等
③財産に関する資料等
・妻が専業主婦で基本自宅にいるというような場合には、皆様工夫しながら荷物を整理しているようである

 

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モラハラ・DV妻との別居準備(5)―別れ話をした時のモラハラ・DV妻の反応は?

2022.07.25更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.別れ話をした時のモラハラ・DV妻の反応は?


 あなたの方からモラハラ・DV妻に別れ話をした時、どのような反応をするのか、ある程度想定して準備しておけると、あなた自身混乱することも少なくなるでしょうし、今後の離婚に向けての対策につながるケースもあります。
 そのため、以下では、私が直接担当した事件で、モラハラ・DV妻がどのような反応を示すのか、その反応を予測した上で、どのような伝え方が良いのかといったことを詳しく解説していきたいと思います。

 

2.【ケース1】モラハラ・DV妻が全く真剣に受け取ってくれない


 私が事件を担当していて、モラハラ・DV妻の反応として一番多いと思われるのが、真剣に受け取らないという反応です。
 モラハラ・DV妻が良く言うセリフですが「あなたにとってはもったいないくらいの妻だ」とか「よくできた妻だ」と本気で思っていることが多いので、そんな「よくできた妻」と離婚したいと思うはずがないという発想を持つ人が多いのです。

 また、これは別れ話のタイミングにもよるのですが、夫婦喧嘩の際などに、別れる旨を話した場合には、モラハラ・DV妻は、こちらが一時的な感情で離婚や別居を口にしたと誤解しているケースも多いです。
 このようにモラハラ・DV妻が真剣に受け取らないという場合には、真剣に受け取るような伝え方をしていくのが良いと思います。例えば、お互いの両親を交えた大家族会議のような形式をとるとか、具体的な別居開始日を決定してしまって話をするとか、もしくは、別居開始後に改めて話をするといった方法が考えられます。

3.【ケース2】モラハラ・DV妻が急に神妙になる・謝ってくる


 モラハラ・DV妻は、家庭内ではモラハラ発言等ばかりであっても、家庭の外では、まるで別人のように社交的にふるまうというような人物も多いです。そのようなモラハラ・DV妻の共通点としては、「自分がどのように行動すると自分に有利になるのか」と言ったことを計算できるということです。
 そのため、あなたが真剣に別居や離婚のことを伝えると、一旦はあなたを落ち着かせたほうが良いと考え、モラハラ・DV妻は神妙になったり、急に謝ってくるのです。

 

 このような場合によく質問を受けるのが「今は神妙にしているけれども、演技なので長続きしませんよね?」といったご質問です。
 私は実際にあなたの奥様に直接会ったことも直接話したこともないため確証をもってお話しできないのですが、「これまでのモラハラ行為の重症度に応じて推測するしかありません」とお答えすることが多いです。これまでのモラハラの重症度が重い場合には、残念ながら、今は神妙にしていても長続きしなかったり、モラハラ行為が再燃する確率が高いと言えますし、逆に、これまでのモラハラの重症度がそこまで重くない場合には、モラハラ行為が再燃する確率は高くはないかもしれません。

 

 なお、モラハラ・DV妻がこれまで一度も謝ったことがなかったような場合には、今回初めてモラハラ・DV妻が謝ってきたことであなたも嬉しくなってしまい、安心してしまうかもしれませんが、残念ながらそれが演技の可能性や、演技ではないとしても長続きしないことも多いので、今後も多少なりとも用心しながら生活したほうが良いと思います。

4.【ケース3】モラハラ・DV妻が猛反発してくる


 重症のモラハラ・DV妻でよくあるケースですが、あなたが真剣に別れ話をしたことで、猛反発してくるケースです。
 そもそも、モラハラ行為をする人間は、自分が悪いことをしていないと考えている人が多いです。「あなたが私を怒らせるのが悪い」「怒らせる原因を作ったのはあなただ」「出来の悪いあなたを支えてきたのは私だ」といった発想です。
 このようにモラハラ・DV妻としては何も悪いことをしていないと考えていますので、突如あなたから離婚や別居を突き付けられて、信じられない思いや、もっと家族円満にできるようあなたの方が努力すべきだなどと強く反発してくるのです。

 

 このような場合、あなた一人でこれ以上別れ話を進展させていくことは難しいですし、あなたのモラハラ被害が拡大していくだけなので、他の親族の協力を得るなど話の持って行き方や、離婚に向けての手順等をしっかりと検討していったほうが良いと思います。

 

5.【ケース4】表面的に波風を立てないようにしつつ離婚準備を始める


 こちらから別れ話をしたのに、妻側の反応が薄いというケースでして、妻側が表面的には、これまで以上に「良き妻」を演じつつ、裏で離婚に備えて準備を始めるというケースです(より簡単に言いますと、言葉が悪いですが「そっちがその気なら、むしろこっちの方から出て行ってやる」というケースです)
 表面的にモラハラ・DV妻側の動きが見えにくくなるので、一番油断できないケースです。
ただ、私が実際に担当した事件において、このように対応するモラハラ・DV妻は非常に少数です。モラハラ・DV妻は感情的になりやすく、あなたからの別れ話等に対して平静を保つことができないケースがほとんどだからです。

 

6.上記のケースはあくまで代表例であること


 上記で詳しく解説したケースはこれまで私が直接担当した事件での実際の事例なのですが、あくまで代表的なものに過ぎません。
 そのため、前述のケースの枠に入らない反応を示すケースもあると思います。
 また、前述のケースは、必ずしも、どれか一つのみが当てはまるということではありません。複数が当てはまるというケースも往々にしてありますので、この点も留意が必要です(例えば、別れ話をした当日は、猛反発していたのに翌日以降急に神妙になるといったケースも往々にしてあります)。

 

7.まとめ


・私が担当した実際のケースにてモラハラ・DV妻の反応としては以下のようなものがある。
 ①全く真剣に受け止めない
 ②急に神妙になる・謝罪してくる
 ③猛反発してくる
 ④表面的には波風を立てないようにしつつ離婚準備を進める
・これらはあくまで代表例なので、違うケースもあり得るし、複合的なケースもあり得る。

 

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モラハラ・DV妻との別居準備(4)―別居前にモラハラ・DV妻にどこまで話をしておいた方が良いか

2022.07.25更新

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 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.事前にモラハラ・DV妻に相談した方が良いか?


 

モラハラ離婚のケースで悩ましいのは、離婚することや別居することを事前に相手に伝えるべきかという問題だと思います。
 何も言わずに別居してしまうと、後から何を言われるか分からないし、他方で、事前に話してしまうとその際にどのような暴言・態度を受けるか分からないと言うことで、悩まれている方が多いです。

 基本的に、モラハラの内容がDVの一歩手前といえる様な深刻な内容の場合には、事前に離婚や別居を切り出さずに別居を開始した方が良いことが多いと思います。事前に話をすると重大な被害につながりかねないため、自分の身の安全を守るためにも、事前に話をしないのです。また、度重なるモラハラで精神的に不調を来しているというような場合にも、無理に事前に話をしない方がよいと思います。

 他方で、モラハラ被害がそこまで大きくはないという場合には、事前に離婚や別居を切り出した方が良いケースの方が多いかと思います。ただ、この場合にも、相手がどのような行動に出るか予測できないという場合には、事前に別居話や離婚話をするか慎重に検討する必要があります。

 事前に何も相談せずに別居を開始してしまうと「悪意の遺棄」になってしまい、後から離婚しづらくなるのではないかと考えている方もいます。しかし、モラハラ被害防止というきちんとした理由がある場合、事前に相談せず別居したからと言って離婚にあたって不利になることはほとんどありません。
 ただ、事前に何も伝えておかないと、①こちらの真意がいつまでもモラハラ・DV妻に伝わらない、②離婚協議を始めても、先方の反発が強くて手続が大きく遅延していってしまうというリスクもありますので、事前に話ができるようなら、極力話はしたほうが良いと思います。

 以下では、基本的な注意点について詳しく解説していきます。

2.モラハラ・DV妻から猛反発される危険性が高いなら、事前に話さないほうが良いかもしれない


 前述の通り、モラハラ被害がどの程度のものなのか、あなた自身の体調面を考慮して、事前に話をするかどうかは決めたほうが良いと思いますが、モラハラ・DV妻がどのような反応を示すのかということも考慮要素にしておいたほうが良いと思います。

 と言いますのは、こちらから別居話をした際に、モラハラ・DV妻が猛反発してくることが強く予測される場合には、「話をしたことで余計に別居しづらくなる」という事態に陥りかねませんので、そのような場合には、事前に話をしない方が良いかもしれません。
 モラハラ・DV妻が猛反発し始めた場合、そんな中で別居を開始すると、「こちらが大反対している中で勝手に出ていった」と言われるリスクが高まってしまうと思います。

 

3.何も伝えないというのも気が引けるので嘘をつくのはどうか?


 これもよくご相談を受けるのですが、以下のようなご質問を受けることも多いです。
① 本当は別居を開始するつもりだが、モラハラ・DV妻が反発しないように「お盆休みは実家で過ごすから」などと伝えて家を出るのはどうか?(結局は、そのまま実家から自宅に帰らない)
② 本当は離婚したいのだが、「今後家族が仲良く生活していけるよう前向きな別居をしたい」と伝えて家を出るのはどうか?

結論から申しますと、積極的に虚偽を述べることは混乱のもとになりますので、オススメしません。
なお、上記の②のケースの場合、敢えて「前向き」と伝える必要もありませんので「あなたとの結婚生活がしんどい。今すぐ離婚したいと言えるかは少し考えたいので、少し距離を置いて考えさせてほしい」といった伝え方の方が良いかと思います。

特にモラハラ・DV妻は、こちらの話を自分にとって都合が良いように誤解しやすい人が多いので、普段の連休中のただの帰省だとか、復縁を予定した別居というように話してしまいますと、モラハラ・DV妻が変な期待をしてしまい、今後余計に混乱する気がします。

 

4.仮に伝える場合、どう伝えるか?


 モラハラ・DV妻を目の前にすると、頭が真っ白になってしまうとか、上手く話せる自信がないという方も多いと思います。
 そのため、夫婦2人だけの話し合いではなく、あなたのご両親や親族等も間に入れて話をするというケースも相当数あります。
 また、夫婦二人きりで話すことは良いとしても、自宅内だと怖いので、喫茶店とか他の人の目があるところで話をするというケースもあります。

 

5.仮に伝える場合、どこまで伝えるか。


 一番シンプルなのは、一緒に生活していることが精神的につらいので一旦別居したいという伝え方かと思いますが、モラハラ・DV妻は自分が悪いことをしてきたという自覚がない人が多いため、「どうしてそのように言われるのかが分からない」とか「思い当たるところがない」という反応を受けることもあります。
 そのため、どうして別居したいのか、どうしてモラハラ・DV妻と一緒にいることが精神的につらいのかの理由についてもある程度説明していく必要があろうかと思います。
 詳しい内容を口頭で伝えることが難しいという場合には、手紙等の形で渡すという方法もあろうかと思います。

 いずれにせよ、どこまで伝えるのかは別にして、あなたの中で離婚したい理由・事情を詳しくまとめておいた方が良いと思います(あなたにとっては、つらいことを思い出す作業にはなりますが、まとめておくと、話をするときに、言いそびれてしまうというリスクを軽減できると思います)

 

6.伝える前の準備


 あなたの方から別れ話を切り出すと決意した場合、どのように話を持って行ったほうが良いか、どこまで話をするのかという点についてはしっかりと準備することが多いと思いますが、その前に別の準備が必要になります。
 と言いますのは、こちらが別れ話をすると、先方は、最悪離婚になっても良いように自分名義の資産を隠し始めるといったケースがあるのです。
 そのため、別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラ・DVの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要になります。

 

7.まとめ


・モラハラの被害が深刻な場合には、事前に別居のことを伝えないほうが良いことが多く、逆に、深刻とまでは言えない場合には、伝えたほうが良いことの方が多い。
・モラハラ・DV妻が猛反発しそうなら、事前に話をしないほうが良いかもしれない。
・嘘を伝えることはあまり望ましくない。
・仮に伝える場合でも、夫婦二人だけの席で伝えづらいというときには親族等の協力を得ることも多い。
・仮に伝える場合、別居したい理由の説明も必要になると考えておいた方が良い
・別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラ・DVの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要

 

 

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【モラハラ・DV妻との別居準備(2)】そもそもこちらが家を出ないといけないのか?

2022.07.20更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.離婚を前提に「別居」を選択する場合、そもそも、こっちが出ていかないといけないのか?


 あなた自身、離婚を前提にして別居の決断ができたとして、①自宅があなたの持ち家であるとか、②持ち家ではないが、あなたの借家名義であるという場合、あなた自身が出ていかなければならないのかについて違和感を覚えることだと思います。

 ただ、結論を申しますと、妻側を追い出すということは非常に難しく、現実的には、少なくとも一旦はあなたの方が別居せざるを得ないものと言えます。

 

 

2.どうして妻を追い出せないのか?


 妻を追い出せない大きな理由としては、①妻側の権利ないしあなたの側の義務の問題と②今後の離婚にあたってこちらが不利にならないための配慮という二つの視点があります。 

(1)妻側の権利ないしあなた側の義務の問題

 妻側の権利というのは、簡単に言いますと、妻側の移動の自由や生活場所選択の自由を指します。あなたの方から妻を自宅から退去させるということは、妻の側の「行きたい場所に行く自由」や「生活場所選択の自由」と直接衝突してしまいます。 

 また、民法752条は、夫婦の同居義務を課しています。もちろん、別居の正当な理由がある場合、あなたが自宅を出ること自体は同居義務違反の問題は生じにくいのですが、妻側を追い出す場合には、同居義務に直接衝突することになってしまいます。

 

 このようなご説明を致しますと、「夫側には生活場所選択の自由はないのか?」と疑問に感じてしまうかもしれませんが、もちろんあなたの方にもそのような自由はあります。ただ、それは、自宅に残る(要するに、妻側との同居生活を維持する)のか自宅を出て他の場所で暮らすのかのどちらかを選択する自由であって、結局は、妻側を追い出す根拠にはならないということです。

 

(2)今後の離婚にあたっての有利・不利の問題

 離婚原因の一つとして民法は、悪意の遺棄を規定しているのですが(民法770条1項2号)、これは、あなたが別居して、妻側の生活を顧みないというケースだけではなく、妻を追い出して極端に生活に困らせるといったケースも含みます。

 そのため、強引に妻を追い出そうとすると、悪意の遺棄に近くなってしまい、離婚がしにくくなるということも考えられます。

 

 

3.自宅についてはどう対処するのか?


 あなたの方が自宅を出る場合、あなたとしてはいつまでも自宅の家賃を負担できない、住宅ローンを負担できないというケースも多いと思います。そのような場合の対応方法について、借家と持ち家とに分けて解説します。

(1)借家の場合

 この場合には、一定の期間を区切って、妻側に借家名義を変更してもらうか、解約するというケースが多いと思います。

 なお、あまり短期間を設定して、実質的に妻を追い出すという方法ですと、前述のように「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いと思います。

 

(2)持ち家の場合

 持ち家の場合には、 一定の期間を区切って売却してしまうというケースが多いと思います。

 あなたとしては、自宅購入時には人生に一度の買い物ということで強い思い入れがあるかもしれませんが、妻側を説得して妻に穏便に出て行ってもらったとしても、あなたが戻ると、妻側に居場所を知られることになってしまいますので、モラハラ・DV被害が再燃することになりかねません。

 そのため、現実的な選択肢として売却するということになるのです。

 ただ、前述のように短期間を設定して、妻側の意見も聞かずに売却してしまうと、「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いです。

 

4.時間がかかりそうなので一旦同居したまま交渉するという選択をする人もいる


 妻からのモラハラやDVが激しい場合には、あまりオススメではないのですが、モラハラ・DV妻を追い出すことができず、他方で、折角の持ち家なのに自分が出ていくのも納得いかないという場合には、お互いに同居したまま離婚に向けた話し合い等を進めるというケースもあります。

 私が担当した事件でも、同居したまま離婚協議を行い、離婚協議が難航した際に、離婚調停まで同居したまま手続きを進めた事件もあります。

 但し、調停も上手くいかず、裁判をするという場合には、ほぼ別居が必須になってくると思います(同居したまま裁判を起こしても、離婚裁判の真剣度を裁判官から疑われてしまうという意味です)。

 

 

5.まとめ


・妻側の権利、今後の有利不利という観点から、妻側を追い出すことは難しい。
・自宅については、借家については、一定期間を区切って名義変更または解約、持ち家の場合には、一定期間を区切って売却するケースが多い。
・ただし、あまり短期間で自宅を処理しようとすると、離婚に向けた道のりが難航する危険性が高いので、慎重に検討する必要がある。
・お互いに同居したまま離婚調停までの手続を進めるというケースもある。 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【モラハラ・DV妻との別居準備(1)】そもそも、別居という選択をすべきか

2022.07.18更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.「別居」と言っても大まかに二通りの「別居」がある 


「別居」と一口に言いましても、大まかには、以下の二通りがあります。
  ①離婚を決意して、もう自宅には戻らないという意味での別居
  ②まだ離婚を決意しきれておらず、冷却期間としての別居
 以下では、この二通りについて、それぞれ詳しく解説していきます。

 

 

2.離婚前提での別居


 私のところにご相談に来られる方は、既に離婚の決意を固めてご相談に来られる方がかなり多いですが、まだ悩んでいるという方も相当数います。
 そして、「秦弁護士はモラハラに詳しいと聞いていますので、私が離婚したほうが良いか教えて下さい」とか「このような状況だと離婚したほうが良いと思いますよね?」と質問を受けることも多いです。
 ただ、離婚するかどうかはあなた自身の人生に関わるお話ですので、私が決めることはできません。
 そうはいっても、モラハラ・DV妻と離婚したほうが良いのかどうかは、大きく以下のような検討事項がありますので、参考になさって下さい。

 

 

3.モラハラの重症度?


 離婚するかどうかはあなた自身が決める事であって、私で決められる話ではないとお話しますと、「皆さんどうなさっているんですか?」とか「私のケースって皆さんのケースと比べてどうなんでしょうかね?」といった再質問を受けることも多いです。
 そのため、私のご相談に来られた方には、おおよそのモラハラ被害の重症度をお話することもあります。ただ、初回の無料相談ですと、時間が限られているというところもありますし、正確な数値化が難しいというところもありますので、「100点満点の中での○○点です」といった点数化まではしていません。
 要するに、深刻なものだと感じたときには、私の方からも、「それなりに深刻なものだと感じます」とお伝えしますし、逆に、そこまで重くはないと感じたときには「残念ですが、当事務所にいらっしゃる方はもっと重い方の方が多い印象です」といったご回答をすることもあります。

 あくまで重症度の目安をお伝えするというイメージになります。

 

4.「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」というわけではない!


(1)必ずしも相関関係にはないこと
 ここまで説明をしますと、皆さん、「私の場合重症なのかしら?」ということを気になさると思います。そして、「重症だと言われたら別れなくっちゃ」と考える方も多いと思います。
 ただ、そこまで単純に割り切れる話ではありません。
 弁護士の目から見ても重症と思われるケースですと、率直に言って同居生活を続けていくことはオススメできませんので、私の場合、目の前の相談者の方には「重症と思われますので、同居を続けることはオススメしません」と率直にお伝えすることが多いです。

 

 しかし、それでも離婚まではしたくないという方も相当数いらっしゃるのも事実です。大きな要因としては以下のようなものがあると思います。
①その人の感じ方の問題
②お子様のことを考えての結論
③今後の生活の問題
以下、それぞれについて詳しくご説明します。

 

(2)その人の感じ方の問題
 より分かりやすく言いますと、許容性とか寛容性といったお話になります。
 どんなに言われようと受け流すことができたり、逆に、必要な範囲で言い返すことができるので、離婚という最終決断まではしなくてもやっていけるといったことです。
 このことは逆も然りでして、重症とまでは言えないケースでも、そのことで、気に病んでしまっているとか、心身に不調が生じているというような場合には、今後の同居継続は見直した方が良いかもしれません。

 

 なお、「自分としてはまだ我慢できる」と感じていても、実際には、モラハラ・DV妻との同居環境の中にいることで正確に判断ができていないというケースもありますので、悩んだ時には家庭内の実情をご両親等に相談して、客観的な意見を聞いてみても良いかもしれません。

 

(3)お子様のことを考える

 お子様のことを考える場合、大きく二つの視点が必要になります。一つ目が、妻側が親権者になってしまい、こちらのお子様へのかかわりが薄くなってしまうという懸念、もう一つが、別居後、妻からの暴言や暴力がお子様に向かってしまわないかの危惧です。

 まず一つ目の点ですが、残念ながら、現在の日本の法律ですと、男性側が親権を獲得することは難しいケースが多いです。離婚後、妻が親権者になると、あなたが今後のお子様の養育に意見を言おうとしても、これに従わないというケースが非常に強く懸念されます。

 そして、これも非常に残念なことですが、モラハラ・DV妻は、こちらが別居すると、「もう一生子供には会わせない」といったことを口にすることもあります。そのため、面会交流のスタートまでに時間がかかってしまうというケースも相当数あります。

 次に、別居後の妻の攻撃が子供に向かうという点ですが、そのことを理由としてこちらが親権を獲得できれば一番良いのですが、現時点で妻側の攻撃がお子様に向いていないという場合、それだけを理由に親権を獲得することは難しいです。そうすると、残念ながら、妻側が親権を獲得する可能性が高いという前提で別居しなくてはならないので、その後にモラハラ・DV妻の攻撃が子供に向いて行く危険性を考慮する必要があります(そのような危険性を考慮して、一旦は別居を取りやめるという方もいらっしゃいます)

 

 これらの点を踏まえて、じっくりとモラハラ・DV妻と離婚すべきか、離婚を目指して別居すべきかを検討してみて下さい。

 

 

5.離婚を前提としない別居 


前述のような要素を考慮して、あなた自身モラハラ・DV妻と決別すると固く決意できれば良いですが、決めきれないということもあると思います。
 そのような場合には、無理に離婚を急ぐ必要もないと思いますので、一旦別居という選択をする人もいます。

 離婚するか決めきれていないけれども別居するという選択には以下のような意義等があります。
  ①あなた自身の体調が悪く、一旦離れて体調を回復したい。
  ②モラハラ・DV妻のひどい行動・言動があったので、反省させるために一旦別居する。
  ③夫婦喧嘩が絶えず、自宅にいると冷静に考えをまとめられないので、冷静に考えるために別居する。
  ④自宅という場所から一旦抜け出して、これまでの生活を客観的に見つめ直すために別居する。
  ⑤モラハラ・DV妻の本当の気持ちを確かめるために別居する。(例えば、夫婦喧嘩の時などに、モラハラ・DV妻は「もう離婚だ」ということを口にするが、それが真意なのかを確かめるために一旦別居するといったケースです)

 なお、夫婦としての再生の道を諦めていないのでしたら、別居ではなく、モラハラ・DV妻の両親その他の親族等にも間に入ってもらって話し合いをするとか、夫婦カウンセリングを受けるという選択をする方もいますので、そちらも検討してみて下さい。

 

 

6.まとめ


・「別居」には、大まかに離婚前提の別居と、離婚するか悩みながらの別居の二通りがある。
・「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」という相関関係では必ずしもない。
・離婚前提の別居に踏み切るかは、①妻のモラハラが許容限度内なのか、②お子様のこと等を考慮に入れて検討する必要がある。
・離婚するか悩んでいる時点で、一旦別居するという選択もある。
・ただ、離婚するか悩んでいる場合、「別居」ではなく、親族等に間に入ってもらって話し合いをしたり、夫婦カウンセリングを受けるといった手段もある。

 

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【モラハラ・DV妻との別居準備(3)】別居先は近場が良いか遠くが良いか

2022.07.18更新

弁護士秦

 

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1.別居先選び


 

 モラハラ・DV妻との生活に強い恐怖感・不快感や倦怠感を持つようになった場合、別居や離婚が頭によぎるようになると思います。

 妻側に改善を要求したものの、一時的にしか改善されない、もしくは、改善すらされない、酷いケースですと、改善しないばかりか、こちらを非難してくるというケースすらあります。

 このような状況ですと、あなたは妻との生活を断念し、離婚の前提として別居を真剣に考えていくことになると思います。別居先の検討要素等について、詳しくは以下の通りです。

 

 

2.別居先は近くがよいのか遠くがよいのか?


 

 別居といった場合にまず考えなければならないのは、別居先の問題だと思います。

 より分かりやすく言いますと、今の自宅の近くが良いのか、遠い場所の方が良いのかという問題です。

 

 別居先を近場とするのがよいのか遠隔地にするのがよいのかは、詳しくは、以下のような要素を総合して検討した方が良いと思います。

 

①同居中の妻の行動や言動等

 もちろん、同居中の妻からの暴力が日常的であったような場合には、できる限り遠隔地に転居した方が安全でしょうし、他方、妻のモラハラは無視が主体的であったという場合には、さほど遠隔地にまで転居しなくて良いかもしれません。

 妻の危険性とも言えますが、危険度の高低によって、別居先選択は大きく影響すると思います。

 

②経済的問題

 仮に、自宅の住宅ローンが残っている場合、妻側への婚姻費用の負担も考えると、経済的余力があまり生じないというケースもあると思います。

 また、夫婦は離婚するにしても、そのことで子供に迷惑を掛けたくないので、学費はしっかりと払っていくつもりだという場合も、学費を支払ってしまうと、経済的余裕はあまり生じないかもしれません。

 そのため、あなた自身の現在の収入に不安がある場合には、まずは実家に避難して、経済的な不利をカバーするというケースも多くあります。

 いずれにしましても、経済面は、今後のあなたの生活にとって非常に重要な要素なので、今後のあなたの生活が経済的に立ちゆかなくならないよう慎重に別居先を選ぶ必要があります。

 

③お子様との接点面

 お子様が中学生や高校生といった場合で、モラハラ・DV妻を通さずに直接連絡が取れるとか、良好な関係が築けているという場合には、お子様との接点を考えて、あまり遠くに引っ越さない方が無難だというケースもあると思います。

 一旦別居になっても、お子様の親権をしっかりと獲得したいという場合には、お子様の学校に対する希望も、別居先選びのの検討要素になります。

 

 

3.近場と遠隔地どちらを選ぶかの選択・実例


 

 私が担当している事件を見ておりますと、比較的自宅近くに別居した方もいれば遠隔地に別居した方もいます。別居先をどのように決めたのかについては、色々なご意見がありましたので、以下で説明を交えながら、詳しくご紹介いたします。

 

(1)妻が暴力を振るうので、遠隔地を別居先にした。

  妻が暴力を振るうようなケースでは、相手にこちらの居場所を知られないようにする必要がありますので、妻が居場所を探っても分からない場所に別居するのです。

 妻に居場所を推測されないようにする必要がありますので、あなたの実家や親戚の家の近く等は避けることが多いです。また、妻側に一切察知されないようにと言うことで、例えば自宅は東京にある場合に、東京都内ではなく、敢えて神奈川県にするなど、全く縁もゆかりもない場所を敢えて選んだという方もいらっしゃいました。

 

 特に新型コロナウイルスの流行に伴って、ほぼ在宅勤務の形になった方などもいらっしゃって、そのような場合には、「遠隔地に住んでも、ほとんど仕事に支障が出ない」ということで、遠隔地を選択するという方も増えてきている印象です。

 

(2)妻が暴力を振るうので、遠くの親戚の家に仮住まいさせてもらうことにした。

 これまでの説明同様妻が暴力を振るうため、どこか遠くに別居する必要があるけれども、通常の借家だと家賃が高いという場合などに、遠くの親戚の家に住まわせてもらうということもあります。

 ただ、親戚の家の所在を妻が知っていては避難の意味がありませんので、例えば、親戚名義の建物だけれども、親戚本人は住んでいないし、妻にも所在が発覚していない場所に避難するケースなどがあります。

 

(3)経済的な問題もあって実家に戻ることにした。

 別居を決断したけれども、住宅ローンの負担や子供の学費の負担なども考えて、ある程度の経済的余力を残しておきたいという観点から、実家へ避難したというケースです。

 

 ただ、実家に避難する場合、モラハラ・DV妻に居場所を把握されるリスクが非常に高いので、以下のような要素を総合的に検討して判断するのがよいと思います。

(メリット1)家賃負担を軽減でき、経済的である。

(メリット2)モラハラ・DV妻も、こちらの実家には頭が上がらないので、実家にいることで安全性が増す。

(メリット3)こちらの居場所が全く分からないと、モラハラ・DV妻が、職場まで来てしまったり、警察に捜索願を出すなど、どのような過激な行動に出るか分からないので、ある程度予測できるところに住んでいた方が、妻の過激な行動を抑止できる。

(メリット4)嫉妬深い妻の場合、こちらの居場所が分からないと浮気だと主張し始める危険性が高いが、実家に住んでいれば、浮気の疑惑を軽減できる。

(デメリット1)居場所がバレやすく、頻繁に訪れてきたり、玄関先で騒がれるケースもある。

(デメリット2)DV妻の暴力が苛酷な場合には、実家内に無理に乗り込んでくるなど身の危険を感じる場面が生じうる。

(デメリット3)子供の親権を本格的に争っていく場合、実家の協力が不可欠であるが、妻が乗り込んでくるなどして迷惑が掛かってしまうと、協力に消極的になってしまうリスクがある。

 

(4)近場への転居?

 お子様との接点といった観点からは、近場に転居するという選択肢も可能性としてはあり得るのですが、当職が担当したケースでは、近場に転居した方はいらっしゃいませんでした 。

 当職が見ておりますと、モラハラ・DV妻の行動や言動については、男性側からは声を上げにくい面があったり(残念ながら「男なんだからバシッと言いなよ」というような感じで真剣に受け止められないケース等が多いということです)、別居といった大きなアクションを起こすと逆上した妻が何をするか分からないと考えて、限界まで我慢してしまうケースが多い印象です。

 そうすると、近場に転居して、居場所が発覚することが怖いと考える方が多いのだと思います。

 

4.まとめ


・別居先選びの検討要素として重要なものは①妻の同居中のDVやモラハラの状況・程度、②あなたの今後の経済面、③お子様との接点・希望といった点になる。

・モラハラ・DVの案件では、別居先として以下のようなところが選ばれている。

 ①遠隔地の借家

 ②遠隔地の親戚の家(妻に居場所が全く判明していない場所)

 ③実家

 

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突如調停の相手方にされてしまった方へー【調停テクニック15】調停委員が言う「中立・公正」って?

2021.08.02更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.調停委員からの最初の説明


 調停委員からは、調停手続きがどのような手続きなのかを説明するにあたり、以下のような説明をすることが多いです。(以下の一部であったり、他の説明等をすることもありますが、一般的には以下の内容が主となることが多いです)

 ①調停は判決のように裁判所が一定の結論を強制するものではなく、あくまで話し合いの手続である。
 

 ②調停委員はあくまで中立・公正な立場で手続きに関与する。
 

 ③今この場に出席しているのは男女1名ずつの調停委員だが、調停委員会としては裁判官も加わっており、3名で構成されている。ただ、裁判官は同時並行で複数の事件を担当しているので、通常はこの2名の 

  調停委員しか出席しないが、随時裁判官とも相談しながら手続を進めている。
 

 ④調停委員は守秘義務を負っており、また、調停手続きは非公開の手続なので、あなたがこの場で話した内容が外で漏れることはないので安心して話をしてもらって構わない。
 

 ⑤調停の手続はお互いに譲歩しないと決着しないことが多いので、協力願いたい。
 

 ⑥手続きの中で分からないことがあれば遠慮なく言って欲しい。
 

 ⑦調停室の中での会話の録音等は禁止されているので協力願いたい。
 

 ⑧調停が成立した場合、その調停の内容は確定判決と同様の効力がある。

 今回は、上記の②について解説していきます。

 

 

2.調停委員はバランスを考えて、お互いに逆のことを言うこともある。


 調停委員が言う「中立・公正」とは、どちらかの言い分だけを信用したり、どちらかだけの肩をもって手続を進めることはないという意味です。
 ただ、だからといって、お互いが述べる言い分を相手にただ伝えるだけでは、ただのメッセンジャーにしかならないので、一向に手続きが終息に向かいません。
 そこで、調停委員は、お互いに対して、逆のことを伝えてくることもあります。

 

 例えば、あなたが復縁を強く希望している場合でも、奥様側の様子を見て、「奥さんの離婚の覚悟はかなり固いですよ」「奥さんの様子を見ると、なかなか夫婦仲良くというのは難しく感じます」といった伝え方をしてくることが多いです(要するにあなたの意見と逆のことを伝えてくるということ)。
 ただ、このような言い方をしてくるから、調停委員が奥様の肩を持っているのかというと、調停委員は逆に奥様に対して「あなたの気持ちは、旦那さんに伝えましたが、旦那さんは復縁を強く希望しているようです」という伝え方をしていることが多いです(要するに奥さんに対しても奥さんの意見と逆のことを伝えるということ)。

 もちろん、この「逆」というのは、こちらが話していないことを相手に伝えるという意味ではなく、互いにとって簡単に受け入れにくいような話をするという意味です。
 このように、お互いに逆のことを伝えていることで、調停委員としてはバランスをとっていることも多いので、あなたの目の前で奥様の意見の話が多いからと言って、安易に「奥様の肩を持っている」とは考えないほうが良いかもしれません。

 

 

3.中立・公正でも、法律の解釈等については意見を述べることもある


 前述の通り、調停委員は中立公正な立場で話をするように努めますが、調停実務の一般的な取扱い等については、意見を述べてくることが多いです。
 例えば、婚姻費用や養育費の金額については、一般に算定表に基づいて算出することが大半なので、調停委員も、「算定表だといくらになりますので、この数字を軸に検討してもらえませんか」といった意見を述べてくることもあります。
 もちろん、調停なので、このような調停委員の意見に従うか従わないかはあなたの自由です。
 ただ、前述の通り、調停委員の役割として、お互いの言い分の伝言役をするだけということでは、手続きは円滑に進みませんので、上記のような意見を述べて来たりするのです。

 

 

4.調停委員は過去の出来事について白黒つけないことが多い


 例えば、妻側が、裏付けの証拠等を提出してきた場合でも、調停委員は過去の出来事があったかなかったかを確定することはできませんので、「実際奥さんが言うような出来事があったかは分かりません」ということも多いです。
 多少裏付けの提出があっても、そのことで奥様側の肩を持つと中立性が損なわれてしまうからです。
 逆も然りでして、こちらの言い分を通そうと色々と証拠を提出しても、調停委員がこちらの言い分をそのまま受け入れてくれることは少ないです。そのため、白黒つける、こちらの言い分を一方的に認めさせるというような姿勢で調停に臨むのは避けたほうが良いです。

 

 

5.中立性に疑問がある場合には、そのことをしっかり伝えてしまってよい


 前述のように大半の調停委員は、中立に手続きを進めようと努めていることが多いのですが、ときに中立性に疑問がある場合もあります。

(1)こちらが弁護士をつけていない場合
 妻側が弁護士をつけて、こちらが弁護士をつけていない場合、どうしても弁護士がついている側(妻側)に配慮して手続きを進めていると感じることもあります。
 私が途中から調停に参加したケースでも、ご依頼者様から「先生が入ってから調停委員の態度がコロッと変わりましたよ」と言われることもあります。
 このような場合には、端的にこちらも弁護士を立てると、調停委員の態度が変わることも多くあります。

(2)中立性に疑問がある場合にははっきり言った方が良い
 弁護士から見ても、調停委員の中立性に疑問を持つ場合もあり、そのような場合には、「今の調停委員のご意見は強制ではないですよね」と発言するなどして牽制するようなこともあります。
 いずれにせよ、調停委員の意見が偏っていると感じるときには、タイミングを見てそのことを伝えたほうが良いです。

 

 

6.まとめ


・調停委員が言う中立公正とは、一方の肩をもって手続を進めないという意味である。
・ただ、調停の進行上、お互いに逆のことを伝えることもある。
・調停委員は法律解釈等については意見を述べることもある。
・調停委員は過去の出来事について白黒つけないことが多い。
・調停委員の中立性に疑問がある場合には、はっきり伝えてしまってよい。

 

 

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