決定版!これがDVの証拠だ!
2017.10.25更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)真太郎です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>>モラハラ・DV情報盛りだくさんの総合サイトはこちら<<になります。
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1.DVで離婚したいのに、相手が事実を否定する可能性が高い
DV加害者は自己中心的な人物が多いため、奥様の方から離婚を切り出すと、そのこと自体に「生意気だ」「絶対にお前の思い通りにさせない」といった形で強く反発してくることが多いです。
また、DV加害者の特徴の一つですが、DV加害者は自分の暴力を「正しいこと」だと考えていることが多いので、「原因を作ったのは嫁の方だ」といった言い方をしてくることが多いのと、「DVというほどの暴力をふるっていない」と対抗してくることも多いです。
そのため、これから相手と調停や裁判で離婚を争っていくという場合、DVの証拠がどの程度あるのか、どのようなものがあるのかというのは十分に検討していく必要があります。
2.やっぱり最も確実なのは診断書と写真
法律用語で言いますと「客観的証拠」などと表現しますが、あなたが怪我をさせられた診断書や怪我の部位を撮影した写真は、DVの証拠として最も確実な証拠といえます。
(1)ただ、診断書につきましては、その内容にも注意が必要になります。
まず、複数怪我を負った場合に、病院によっては、大きな怪我だけを記載し、小さな怪我は一切記録を残していないと言うことがありますので、診察を受ける際には小さな怪我を含めて全ての怪我を病院に申告することが重要です。
次に、診断書の発行を受ける際には、治療期間も記載してもらうようにして下さい。例えば「左上腕打撲で当院通院中」だけだと、どの程度の怪我で、どの程度の期間通院すれば完治するのかが分かりません。そのため「左上腕打撲で加療2週間の見込み、現在当院通院中」といった形で、治療期間が分かると望ましいです。
もう一つの注意点としては、病院に本当の怪我の原因を話すと言うことです。なかなか医者に対して「旦那に殴られた」といった話はしづらいのですが、「階段で転んだ」とか、「他人の喧嘩に巻き込まれた」と嘘の申告をしてしまいますと、カルテにその様に記載されてしまいます。相手が裁判で争い、病院にカルテの開示を求めると、カルテが裁判所に提出されることになりますので、裁判官は「本当は旦那の暴力ではなく、階段で転んだだけなのではないか?」と疑問に感じてしまう虞があります。
(2)次に写真ですが、怪我の部位のみの写真にしないよう注意が必要です。
より分かりやすく言いますと、その写真にあなたの顔も写るようにして欲しいということです。よくありがちなのが、怪我を下手の甲の部分だけの写真や足の膝の部分だけの写真を撮っている人がいらっしゃいますが、これでは、その手や足があなたの手足なのか、実は他人の手足なのかが写真だけでは分かりません。裁判になると、相手は、「それは友人の写真で本人の写真じゃない」といった形で争われる原因になりかねません。
そのため、写真は必ず複数撮影し、あなたの顔と怪我両方が写った写真と、怪我の部位をより拡大した写真を撮るようにして下さい。
3.警察への通報記録や女性センター等への相談記録
先ほどお話ししましたとおり、診断書や写真が確実性の高い証拠と言えるのですが、次いで確実性が高い証拠としては、警察への通報記録や女性センター等への相談記録があります。
旦那の暴力に対して警察に110番通報したことがある場合、その通報記録が警察の方に残りますので、申請をすれば、その開示を受けることができます。女性センター等への相談記録も同様です。
なお、DVの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、110番通報簿については、警察の方で大して詳しい記載をしてくれていないという場合があり得るのと、プライバシー保護等の観点から開示資料に黒塗り部分が多いというケースもあります。そのため、どの程度DVの証明に役立つかという点に関しては、資料の内容を精査する必要があります。
たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ110番通報なんてするはずないんだから、警察が来てくれただけで、DVの証拠になるでしょう?」とおっしゃる方もいますが、安易にその様に考えるのは危険です。
例えば、旦那が酔っぱらって騒ぎ始めたのですぐ110番通報したが、警察が来たときには旦那は外出してしまっていたと言ったケースですと、記録としては「旦那不在」としか書かれませんのでDVの証拠にすることは難しいと思います。
現状の裁判実務を見ますと、「警察を呼んだ」イコール「大変なことが起こった」とは考えないことが多く、結局は通報記録簿に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。
4.録音データ
録音データを記録している場合、通常は、診断書または写真の準備も調っていることが多いのですが、診断書・写真を補強するものとして、録音データも重要性が高い証拠と言えます。
スマートフォン等で録音しておくと暴力時の打撃音等を録音することができる場合がありますし、DV旦那がどのように発言しながら暴力をふるったのかと言う点や暴力前の言葉のやり取りを拾うことができます。何より当時の雰囲気を、臨場感を持って伝えることができますので、当時の雰囲気を伝える証拠としては有力な証拠になり得ます。
また、DV旦那が「嫁が挑発してきたから殴ったんだ」といった言い訳をする場合がありますので、録音データがあれば、暴力に至る経緯を詳しく証明できることもあると思います。
5.ラインやメール
例えば、暴力をふるった翌日に旦那が暴力を詫びるメールを送ってきたとか、あなたの方から旦那に対して「昨日蹴られたところが痛むから、今日は保育園のお迎えに行けない」と言ったメールを送っている場合、それもDVの一つの証拠になります。
ただ、このようなメールやラインのやり取りですと、暴力の程度が分かりにくいことが多いということには注意が必要です。
また、ラインやメールの評価については、旦那から来たライン・メールの方が、あなたが送ったライン・メールよりも証拠の価値は高いです。と言いますのは、旦那が自分の暴力を認めるメールは、いわば自白の様なものですから、他の方が書いたライン・メール以上に価値が高いと言えるのです。
これらの点を踏まえると、ライン・メールそのものを直接のDVの証拠にするというよりは、診断書や写真を第1の証拠とし、ライン・メールは補強として使うというイメージかと思います。なお、その場合、旦那が暴言を書き連ねているようなケースですと、そのライン・メールは、普段の旦那の横暴な態度を示す証拠になると思います。
6.物の被害
DV旦那が投げつけてきたために大破したスマートフォン、旦那が殴りつけて空いた壁の穴、旦那が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。
ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。
6.証言
証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。
例えば、熟年離婚のケースで、既に成人しているお子様が、当時のDVの様子を証言してくれるという場合、お子様はDVの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、DVに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。
一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の暴力を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。
いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては診断書や写真の方が格段に評価が高いのが実情です。
7.DVの証拠が少ない、ほとんどないという場合
もちろん、上記の様な診断書や写真があれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった旦那が豹変して暴力をふるってきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、旦那の暴力を受け入れられず、また元の優しい旦那に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。
その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。
私の経験上、今ある証拠をもとにDV旦那を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。
ただ、そのような場合、どのようにDV旦那と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
8.まとめ
・DVの証拠としては、診断書や写真が確実性が高いが、その内容については注意点もある。
・警察への通報記録や女性センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・録音データも当時の雰囲気を知るための有力な証拠になる。
・ラインやメールは書き込みの内容次第である。
・物の被害を写した写真は、直接DVの証明にすることは難しい。
・証言は、診断書等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・DVの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。
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