お子さんのこと

父親が親権を取得したケース

2015.08.05更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.親権とは? 


 

 

 ご夫婦が円満な婚姻生活を送っている間は、「親権」という言葉を意識することは少ないと思います。それが、夫婦生活に亀裂が生じ始め、離婚を意識するようになった時、ご夫婦のお子様をどちらが育てて行くのか、ということで、「親権」というものを意識し始めるのかと思います。

 

 では、このあまり聞き慣れない「親権」とはどのような権利なのでしょうか。

 

 多くの方は、(未成年の)「お子様を育てて行く権利」とお考えですが、親権の内容の半分のみ理解されているということになります。

 

 すなわち、親権とは、(未成年の)お子様を養育し育てて行くという意味の「身上監護権」と、お子様の財産を管理して行くという意味の「財産管理権」の2つの権利から構成されています。

 

 

2.親権をどちらが取得するか。 


 

 

 ご夫婦が離婚する場合には、未成年のお子様の親権者をどちらかに決定したのかを離婚届に書かなければなりませんので、親権者を決定しないまま離婚するということはできません。

 

 そして、親権をご夫婦のどちらが取得されるかは、第1次的には、ご夫婦の話し合いで決めるものとされていますが、話し合いがうまく行かないことも多くあります。

 

 それでは、ご夫婦の言い分が対立した時、最終的にはどちらが親権を取得する可能性が高いのでしょうか。

 もちろん、ご夫婦のお子様へのこれまでの接し方や養育方法、経済的自立性等々様々な要素が絡みますので、個別の事情によりますが、一般的には奥様が親権を取得されるケースの方が多いのが現状です

 

 

3.父親が親権を取得したケース


 

・ご依頼者様 : 40代前半の男性(Gさんと言います)

・ご依頼内容 : 奥様の浮気をきっかけにして夫婦関係がうまく行かなくなり、奥様に対して慰謝料を請求したいというご要望とともに、浮気を繰り返す様な女性に子供達を引き取らせることはできないので、親権を取得したいとのご依頼でした。

 

なお、この事件の相手 : 40代前半の奥様、お子様 : 小学校に通う娘様と保育園に通う娘様の合計お二人、家庭環境 : ご依頼時別居中でした。

 

 

4.私の弁護活動         


 

 このケースでは、Gさんは調停や裁判と言った大がかりな手続きは踏みたくないので、できる限り協議離婚で解決したいと強く希望されていました。そして、弁護士をつけたことはGさんから奥様に直接お話しされたとのことでしたので、私の方から直接奥様にお電話を差し上げてお話をさせていただきました。

 このケースでは、奥様も浮気を全面的に認めていましたので、Gさんの方で浮気の証拠を集めるといった作業は必要なく、離婚についても争いはありませんでした。しかし、慰謝料の金額と、お子様の親権が激しく争われました。

 

5.奥様の言い分         

 


 

 

 このご家庭では、Gさんがお仕事をされており、日中お子様の面倒を見ることができないことから、奥様からは、Gさんが親権を取得するとお子様に目が届かなくなるということをしきりにおっしゃっていました。

 

 ただ、このケースでは、Gさんのお母様がこれまで同居して生活しており、お子様も、このお婆さまに懐いているという事情もあり、旦那様も休日は積極的にお子様の世話をしていたという事情がありましたので、それらの点を丁寧にご説明し、また、今回の離婚の発端が奥様の浮気にあることも強く主張させて頂きました

 

 さらに、旦那様が親権を取得しても、奥様が希望する場合には柔軟にお子様との面会交流を認める意向であることもお伝えしました。

 

 これに対して、奥様は、浮気については申し訳ないことをしたけれども、今後二度と同じ過ちを繰り返さないので、お子様の幸せを第一に考えて親権者を決めてほしいと言ってきました。奥様の話しぶりは、自分の言い分を強く主張してくるというよりも、Gさんに考え直してほしい、お願いしたいという論調でした。

 

 Gさんとも再度お話ししましたが、お子様の幸せを第1に考えるのであれば、簡単に浮気などするはずがない、そのことをきちんと反省しているのであれば、きちんと責任を取って早めに離婚問題を解決させて欲しいとのご意見でした。

 そのため、その旨を奥様にも直接お伝えしました。

 最終的には、Gさんの意思が固いことが分かったからでしょう、奥様もGさんが娘様お二人の親権を取得することに同意して下さり、協議離婚が成立しました。なお、平行して慰謝料の額についても交渉を続けておりましたが、この点もお互いの同意が得られました。

 

 お互いが合意した内容を離婚協議書にまとめ、双方が署名押印して、協議離婚が成立しました。

 

6.親権の取得が本格的な紛争になりそうな事件はお早めに弁護士にご相談下さい。


 

 

 ご夫婦のいずれが親権を取得するのかについては、色々な要素が絡まって決定しますので、一般の方には理解しにくいものがあります。

 

 また、ご夫婦の間で話し合って決定するのなら良いのですが、裁判に発展する可能性があるような場合には、特に慎重に対応して行く必要があります。

 このような親権紛争の問題になりそうな事件については早めに専門の弁護士にご相談下さい。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

面会交流への立ち会い

2015.07.08更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.面会交流とは? 


 

 

 面会交流(めんかいこうりゅう)という言葉は普段耳にしないと思いますが、ご夫婦(または元夫婦)の一方がお子様を育てている場合に、他方配偶者がそのお子様と会って交流することを意味します。以前は「面接交渉」という用語を用いることが多かったのですが、最近は「面会交流」という用語を用いるのが一般的です。

 

 例えば、夫婦の折り合いが悪くなって、奥様がお子様と一緒にご実家に別居しているときに、旦那様がそのお子様と会って話をしたり、一緒に遊んだりすること等を「面会交流」と呼びます。

 面会交流の問題は、ご夫婦の間で離婚について協議している時にクローズアップされることが多いので、お互いに感情的になり、なかなか話し合いが進まなかったり、条件面で折り合えないと言うことも多々あります。

 

 

2.面会交流への立会い


 

 私は、様々な離婚事件を取扱い、何度か面会交流の現場に立ち会ったこともあります。なお、面会交流の条件について詳しく取り決めをしたケースについては、「面会交流について詳細に定めて和解した離婚事件」のブログでご紹介しました。

 

 弁護士が面会交流に立ち会うのは、依頼者である奥様からご依頼されることが多いです。特に、別居後何か月間か旦那様にお子様を会わせていないケースでは、面会交流時に旦那様がお子様を連れ去る危険もあり、その際、奥様の女手だけでは連れ去り防止に不安があると言うことで面会交流の立会を要望されるのです。

 

 弁護士としても、お子様が父親と接触している様子を見れば、一定程度父親の人柄やお子様の反応を見ることもできますので、その後の親権の主張や、面会交流の条件決めにも参考になると言うメリットがあります。

 

 私が面会交流に立ち会ったケースとしては、公園で父親がお子様と面会交流(一緒に遊具等で遊ぶ)するのを見届けたり、喫茶店で父親とお子様が面会交流(一緒に軽食などを頂く)する席に立ち会ったり、私の弁護士事務所の会議室で面会交流(お子様と一緒にお話しされます)を実施したこともあります。

 

 たまに誤解されている方もいらっしゃって、「秦先生が立ち会って下さるので、私は立ち会わなくても良いのでしょうか?」とご質問を受けることがありますが、奥様にも立ち会っていただく必要があります。

 

 奥様からしますと、旦那様に対する恐怖感をお持ちの方もいらっしゃいますので、面会交流に立ち会うイコール旦那様とも一定の時間顔を合わせなければならないと言うことを強く不安に思われるのはよく分かります。

ただ、面会交流中、お子様の体調が急変するといった事態もゼロとはいえませんので、そのような場合に、私だけで対応することは困難です。また、奥様にも旦那様とお子様との面会交流の様子は直接見ていただくことは、お子様の意外な一面を見ることができることもあって、有益なことが多いです。

そのようなことから奥様の立ち会いも必要になります。

 

 

3.面会交流に立ち会って思うこと


 

 私が面会交流に立ち会ったケースでは、特に旦那様がお子様を連れ去ろうとしたことはなく、その意味では大きなトラブルもなく経過しています。

 

 また、事前に奥様から得ていた情報では、旦那様がお子様ときちんとコミュニケーションが取れるか心配していたケースでも、実際にはきちんとコミュニケーションを取れているケースが大半だと思います。その意味では、お子様の成長にとってはプラスになったことが多いようにも思えます。

 

 このようなことも、現実に私自身が面会交流に立会い、短くとも30分、長い時には2時間程度同席してお子様の表情や会話を直接見聞きしているからこそ分かることでもあると思っております。

 

 なかなか弁護士も多忙なものですから、このような面会交流には一切立ち会わないという弁護士もいると思いますが、私は、その様な方針はとっていません。

 

 ただ、依頼者様の強い要望があり、私が立ち会った方が望ましいというケースかどうかは良く見極めるようにしております。お子様にとって、私は全くの他人になりますので、私が立ち会うことでお子様が強く緊張してしまうということも多いからです(なお、面会交流に立ち会う際には、奥様のお友達と言った形で立ち会わせて頂くことが多いです)。

 

 

4.児童養護施設でのお子様との面会


 

 なお、面会交流時の立会とは異なりますが、依頼者様のお子様が児童養護施設に保護されており、同施設内でお子様と面会したこともあります。その際には担当の児童福祉士、児童心理士も立会って面会を実施しました。

 このように通常の環境とは異なる環境にいるお子様と面会することは、依頼者様に親権を取得させる動力源にもなり、極めて有意義な機会であったと思いました。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

面会交流について詳細に条件を定めて和解した離婚事件

2015.07.06更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.面会交流とは?


 

 面会交流(めんかいこうりゅう)という言葉は普段耳にしないと思いますが、ご夫婦(または元夫婦)の一方がお子様を育てている場合に、他方配偶者がそのお子様と会って交流することを意味します。以前は「面接交渉」という用語を用いることが多かったのですが、最近は「面会交流」という用語を用いるのが一般的です。

 

 例えば、夫婦の折り合いが悪くなって、奥様がお子様と一緒にご実家に別居しているときに、旦那様がそのお子様と会って話をしたり、一緒に遊んだりすること等を「面会交流」と呼びます。

 面会交流は、ご夫婦が別居されている時にも問題になりますが、離婚した後にも問題になります。

 

 

2.私が担当した事件 


 

・ご依頼者様 : 30代前半の女性(Iさんと言います)

・ご依頼内容 : 旦那様からの暴言に耐えられず離婚したい、旦那様も離婚には応じる姿勢だけれども、娘様の親権を譲る意思はないとのことでしたので、親権を獲得して欲しい、親権獲得時には、面会交流についてもきっちりと約束したいとのご依頼内容でした。

 この事件は、離婚協議、離婚調停がいずれもまとまらず、離婚裁判に発展して争われました。

 

なお、この事件の相手方 : 30代前半の男性、お子様 : 保育園に通う娘様お一人、家庭環境 : ご依頼時別居中でした。

 

 この事件は最終的には裁判所が仲介する形で和解が成立し、事件解決したのですが、この事件では和解の際に面会交流の条件をきめ細かく定めた事が特徴的な事件でした。

 

 

3.この事件で面会交流の条件を、きめ細かくした理由


 

 Iさんの旦那様は、結婚生活の中で、Iさんに対してだけではなく、娘様に対しても暴言を発することがあり、また、そのことを誤魔化す傾向がある、嘘をつくことも多いという事情がありました。

 

 このような事情がありましたので、Iさんは、旦那様に対する強い不信感を持っており、面会交流の条件をきめ細かく取り決めて欲しいと強く希望していました。

 

 また、Iさんがおっしゃっていたのは「旦那は、ずる賢いので、口約束だけでも離婚して暫くは約束を守るけれども、期間が経つと、約束を守らなくなるのではなないかと不安です」ということでした。その意味では単なる口約束よりも、裁判所の公的な書類である和解調書に約束事項をきちんと書き込んで欲しいと話していました(裁判中の和解手続きで、当事者間の話し合いがまとまった場合、その内容は、「和解調書」という書類にとりまとめていくことになります。)

 

4.実際の面会交流条項


 

 実際の裁判の和解条項では、以下のような形で面会交流の条項が盛り込まれました。

 

■原告(旦那様)と○○(お子様)との間の面会交流について、以下のとおり定める。

(1)頻度           1ヶ月に1回

(2)時間           1回につき9時間以内、終了時間は午後7時以前とする。

(3)場所           (2)の時間帯でおさまる限度で移動可能な場所

(4)方法       原告(旦那様)が被告(奥様)方に○○(お子様)を迎えに行き、面会交流ができる場所に移動する。面会交流終了時には被告(奥様)が原告方(旦那様)に○○(お子様)を迎えに行き帰宅する方法

(5)連絡方法 日程の連絡は、原告(旦那様)が被告(奥様)に対して、実行日の2週間前までに連絡する。その上で、面会交流の日時や面接場所等について、協議を行う。

                             なお、協議については、メールを用いて行なうこととする。

(6)その他      

①原告(旦那様)は面会交流の実施にあたっては、○○(お子様)の年齢、性別、体調、意思、保育園・学校等の行事に配慮しなければならない。

②当事者は、協議により、前記日時、場所、方法等必要な事項を変更することができる。

 

 

5.面会交流の条件は細かい方が良いのか簡単な方が良いのか。


 

 当職の長年の弁護士経験からしますと、上記のように面会交流の条件を事細かに定めることは稀で、もっと簡単な形で合意することの方が多いように思われます。例えば、簡単な面会交流条項とする場合には、「被告(奥様)は、原告(旦那様)に対し、月1回程度○○(お子様)との面会交流を認める。原告(旦那様)は面会交流の実施にあたっては、○○(お子様)の体調、意思、行事等に配慮しなければならない。」といった表現しか盛り込まないということもあります。

 

(1)面会交流の約束を簡単にするメリット

 面会交流の条件を簡単にするメリットは、今後のお子様の成長に応じて面会交流の条件を柔軟に変更することが可能になるというのが最大のメリットといえます。「月1回程度」としておけば、必ず1ヶ月に1回面会交流させなければならないと言うこともないので安心でもあります。

 また、離婚の際には、養育費や財産分与と言った様々な問題を議論していることが多いので、面会交流の条件を細かくしますと、その条件の当否が新たな火種になることがあり、問題を複雑化しないために、面会交流の約束は簡単にすると言うことがメリットになり得ます。

 

(2)面会交流の条件をきめ細かく約束するメリット

 他方、簡単な条件しか決めませんと、実際面会交流させる際に、詳しい条件などについて細かなやり取りをしなければならなくなってしまいます。そのため、あらかじめ面会交流の骨組みを決めておけば、その都度の面会交流で細かいやりとりをする必要がなくなります。

 また、離婚後の面会交流において、面会交流の条件などを電話などで伝えるだけですと、後から「言った」「聞いていない」の論争が起きる可能性があります。そのため、あらかじめ面会交流の条件をきめ細かく決めておきますと、その内容は、和解調書にきちんと書いてありますから、約束に違反したのかしていないのかが明確になります。

 

5.面会交流の条件の決め方


 

 上記は、面会交流の条件について詳しく定めたケースですが、面会交流の定め方は、そのご夫婦が抱えている問題点等を考慮して、総合的かつ漏れがないように定める必要があります。もちろん、上記のように面会交流の定め方は簡単に定める方法の方が一般的ではあるのですが、簡単な定め方では不安があるという方も多いと思います。

 

 その様な方は、是非、面会交流の条件付けについてノウハウのある弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

 

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重度の記憶障害になりながら親権を獲得したケース

2015.05.25更新

 

 こんにちは、東京・日本橋の弁護士の秦です。

 神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.親権について争われる事件は増加傾向にある?


 

 相手の配偶者に愛想が尽きて離婚を決意したとき、お子さんがいらっしゃる場合には、親権を取得できるかどうかは重要な問題だと思います。弁護士を10年しておりますと、離婚については決心が付いていても、お子さんの親権を先方に渡すのだけは納得が行かないという話を伺うことも多くあります。最近は少子化の影響もあってか、親権について争われるケースが多くなってきている様にも思えます。

 

 私が今回ご紹介する事件も、親権の取得について激しく争われた離婚訴訟のケースになります。このケースでは、訴訟中に依頼者様(奥様)が突発的な記憶障害に襲われてしまい、お子様の養育に支障がないかが大きな問題となりました。

 

 

2.私が取り扱った実際の裁判


 

・ご依頼者様 : 30代後半の女性(Hさんと言います)

・ご依頼内容 : 旦那からのモラハラがひどいため、当人同士の話し合いでは解決できないので、離婚の交渉をお願いしたいというものでした。

 

なお、この事件の相手方:30代後半の旦那様、お子様:小学校低学年の男の子と6歳未満の女の子のお二人、婚姻期間:10年程度、ご依頼時の家庭状況:別居中でした。

 

 このケースでは、Hさんの代理人として、離婚の任意交渉、離婚調停の手続をしましたが、折り合いがつかず、離婚裁判にまで発展しました。夫婦間では養育費の額や財産分与についても激しく争われたのですが、最も大きく争われましたのは、お子様の親権でした。

 

 ご長男の親権については、当時より旦那様が養育していたこともあり、あまり大きく争われていませんでしたが、ご長女の親権が大きく争われました。そして、このケースは複雑な事情がありご長女が児童養護施設に入所しているまま離婚訴訟の手続が進みました。

 

 ご長女はHさんが親権者として養育して行くことを強く望んでいましたので、当初はHさんが親権取得に有利な方向で審理が進んでいたのですが、Hさんが突発的に重度の記憶障害に襲われてしまったため、主治医からも奥様の養育には疑問があるとの意見が提出されてしまい、家庭裁判所調査官による調査においても、奥様のご体調を考慮すると、現時点では旦那様を親権者とする他ないとの意見が出されてしまいました。

 

 ところで、家庭裁判所調査官は、お子様の養育状況等に関して調査する専門家に該当しますので、家庭裁判所調査官の意見は、裁判所の判決にそのまま反映されるのが一般的です。ですので、Hさんには、その旨と、家庭裁判所調査官から厳しい意見が出てしまった旨お話しはさせていただいていました。

 

 

3.この事件での勝訴の鍵        


 

 私は、この事件では、以下のような工夫をして、最終的には奥様を親権者とする判決の言い渡しを受けました。この判決に対しては、旦那様が猛反発して、控訴したのですが、控訴審でも第1審判決が維持されました。

 

①奥様の体調回復のため慎重に手続きを進めたこと

 奥様の記憶障害は、奥様の判断能力に影響を及ぼすほどの重度のものでしたので、奥様の保護者(成年後見人)を選任すべきではないかとの議論もありました。

 

 そこで、まずは、奥様の記憶障害の詳細な説明や保護者選任の手続に着手するなどしました。もちろん、むやむに審理を遅延させることは弁護士の活動として許されるものではありませんが、奥様の記憶障害の状況も踏まえ、適切な手続きを取るべく慎重に準備を重ね、平行して奥様のご体調の回復を待ちました

 結局、奥様のご体調が相当程度回復しましたので、保護者の選任には至りませんでした。

 

②調査官の調査報告書の誤りの指摘

 家庭裁判所調査官は確かにお子様の養育状況等について把握する専門家であることは間違いないのですが、調査時間が限定されていることもあり、調査報告書が必ずしも正確ではないことがあります。

 今回のケースでも不正確な記載が何点か見受けられましたので、その点は事細かにご指摘させていただきました。

 

③親族の協力のクローズアップ

 上記の通り、奥様が重度の記憶障害を負ってしまいましたので、奥様のお姉様やお母様といった方の緊密な支援が受けられることを強くクローズアップしました。この点は、どのように主張すればお姉様やお母様による万全の補助を受けられる状況にあるのかを工夫して主張しました。

 

担当児童福祉士とのきめ細かな連携

  ご長女は児童養護施設に入所しておりますので、ご長女の状況は担当児童福祉士が最も良く事情をご存じでしたので、頻繁に担当児童福祉士と連絡を取り、ご長女の状況を把握することに務め、良好な関係を築くようにしました。

 

 上記のような努力も奏功し、奥様の体調もかなり改善傾向に向かいましたので、最終的には奥様の方で親権を取得することができました。

 

 これまで、私は、家庭裁判所調査官による監護状況調査が入る事件を何度も経験したことがありましたので、その経験上、調査官の調査に事前に備えることができたことと、調査報告の内容に適切に対応できたことがこのような結論に結びついたものと思いました。

 

4.後日談              


 

 

 上記の通り、Hさんにとって不利な内容の家庭裁判所調査官報告書でしたので、Hさんは娘様の親権を取得できないのではないかとかなりご不安に思われていたようです。判決でHさんの親権が認められ、大変喜んでいました。

 その後、Hさんの体調は徐々に改善してゆき、娘様は児童養護施設を退所するにまで至りました。体調が回復してきたとはいっても、Hさんが一人で娘様と生活してゆくことには不安がありましたので、Hさんの親御様と同居して、娘様とも一緒に生活されているとのことです。

 

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