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【なんとか夫婦のヨリを戻したい(25)】相手からの離婚調停(3)―調停申立書の読み方

2024.07.15更新

弁護士秦

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1.まずは、調停申立書を取り出す。


 

 裁判所から送られてきた書類は何枚もの紙が入っており理解しにくいかと思います。そこの中からまずは、調停申立書を取り出す必要があります。

 右上の方に「夫婦関係等調整調停申立書 事件名(離婚)」と書いてある書類が入っていると思いますが、それがいわゆる離婚調停申立書になります。申立人本人か、申立人が雇った弁護士の(赤い)判子が押されている書類が離婚調停申立書です。

参考までに、最高裁判所ホームページ上の調停申立書記載例はこちらになりますので、必要に応じてご参照下さい(なお、こちらの最高裁のサイトは、離婚調停を申し立てる側からの記載方法の解説になりますので、ご留意下さい)。

 【裁判所書式】離婚調停申立書記載例

 

 

2.離婚調停申立書を読み解く


 離婚調停申立書に記載されている情報は限られているのですが、そこから読み取ることができる情報はありますので、読み取れる情報は全て読み取っておく必要があります。以下では、離婚調停申立書を読み解く上でのチェックポイントについて解説します。

 

(1)申立人が弁護士を雇っているかどうかのチェック

 調停申立書を見れば、申立人が現時点で弁護士を雇っているのか雇っていないのかを知ることができます。

 調停申立書1頁目の右上の方に(赤い)判子が押されている箇所があると思うのですが、①その判子が本人のものであれば、現時点で弁護士を雇っていない、②その判子が弁護士のものであれば、既に弁護士を雇っているということが分かります。

 相手が弁護士を雇っているという場合、こちらも弁護士を雇うことを考えた方が良いので、まず最初に確認しておきたい項目になります。

 

(2)申立人の住所欄

 配偶者が自身の居場所をこちらに秘密にしているケースですと、調停申立書の申立人の住所欄を見れば、その居場所を探ることができると考える方も多いのですが、残念ながらほとんどの場合、現在の居場所を書いていることはありません(もちろん、こちらにその居場所を明かしているケースでは、現住所を住所欄に記載することの方が多いです)。

 そのため、申立人住所欄を見ても、その住所は分からないことが多いです。

 

 実際上の記載方法としては、夫婦が一緒に住んでいたときの自宅住所(住民票上の住所)が記載されていることが多く、「虚偽記載」ではないかと思われる方もいると思いますが、裁判所の実務ではこのような便法が認められておりますので、この点を追求してもあまり効果がないのが実情と言えます。

 なお、申立人が希望すれば、申立書に現住所を記載しないという手法について、裁判所は特に綿密な審査等はせずに認める扱いですので、「妻の住所欄に現住所が書かれていない」イコール「裁判所が、妻の言い分をそのまま認めた」ということはありませんので、この点はご安心下さい。

 

(3)2頁目の「申立の趣旨」

 調停申立書の2頁目を開きますと、上から中央あたりまで縦線が一本伸びており、その右側に何箇所かチェックが入っていると思います。このチェック部分に書かれている項目が、申立人が調停の「議題」にしたいと考えている項目になります。合わせて、申立人のご意見もそこに書かれていますので、これを見れば、申立人の要望の概要をつかむことができます。

 

 以下詳しく各項目に対して解説していきます。

①離婚について

相手は今回の調停で離婚を求めていますので、その項目にチェックがついています。

 

なお、あなたが調停の席で一度でも「離婚も仕方ないと思います」と発言してしまうと、離婚することが前提で話がドンドン進んでいってしまいますので、この点の発言は慎重さが求められます。

また、あなたとして離婚に断固反対ということでしたら、調停の場では親権や養育費・財産分与の議論はしないというスタンスになります。親権や養育費・財産分与は、離婚する場合に決定すべき事項なのであって、離婚しない場合には決める必要がない項目になるからです。

 

②調停申立書の「申立の趣旨」「(1)」~「(3)」にはお子様のことが書かれています。

前述の通り、あなたは夫婦のヨリを戻したいと考えていますので、離婚することを前提として、親権や養育費等の議論をする必要はありませんし、するべきでもありません。

ただ、申立書を読むと現状の申立人の考え方が読み取れますので、読み取る際の注意点という観点から解説します。

 

申立人が親権獲得を希望しているのであれば、親権を獲得することを前提として、あなたに養育の支払いを求める内容になっていると思いますので、親権を申立人に渡してよいのか、養育費の金額は、あなたの収入から支払い可能な金額なのかどうか等については考えておいても良いかと思います。

なお、養育費に関しては「相当額」の覧にチェックが入っている場合がありますが、これは、「裁判所の実務で一般的に用いられる算定表の数字で構わない」と言う意味になりますので、あなたの方でもインターネット等にて算定表の数字を確認して、支払い可能な数字なのかを確認してみて下さい。

ちなみに、申立人側が積極的にお子様とあなたとの面会を希望していない場合には「(2)」の項目に何もチェックが入っていません。そのため、逆にあなたの希望としてお子様に会いたいという希望が強い場合には、調停の場などで強く面会交流を求めていくことになります。

 

③財産分与について

 財産分与とは、夫婦として同居生活を送っている間に蓄えた財産を折半するというものです。

 この点の申立人の要望は「申立の趣旨」の「(4)」に記入されます。ただ、この項目には「相当額」にチェックが入っていることが多いです。「相当額」の意味合いについては、通常「別居時の夫婦の財産を半分にして欲しい」という趣旨で用いられることが多いです。

 財産分与はお互いが財産状況を開示しないと正確な数字を算出できないため、「相当額」と記入することが多いのが実態です。

 

④慰謝料について

 慰謝料とは、夫婦として同居生活を送っている間に精神的苦痛を受けた場合、それを慰謝すべき金額として要求するものです。通常は、あなたが不倫をしたり、相手に暴力を振るったような場合にのみ発生するものになります。

 この点の申立人の要望は「申立の趣旨」の「(5)」に記入されます。

 この慰謝料額については、500万円だとか1000万円だとかの高額の金額が記入されていることもありますが、申立人側が感情的に金額を記載しているというケースも多くありますので、そのような場合、こちらとしてすぐに金策に走らなければいけないと言うことはありません。

 

⑤年金分割について

 年金分割とは、離婚するまでの婚姻期間中の年金加入記録を折半するというもので、実務的には0.5で折半することが定着しておりますので、「申立書の趣旨」の「(6)」にも「0.5」の覧にチェックが入っていることが通例かと思います。

 

(4)2頁目の「申立の理由」

①上段について

 「申立の理由」の上段には「同居を始めた日」と「別居をした日」の覧があります。これらの日付は今後の夫婦関係調整にあたっての重要な日付になることもありますので、申立人の記入に間違いがないかしっかりと確認して下さい。

 

②下段について

 ここに「申立ての動機」の動機がチェックされていますが、これらが「申立人が離婚したいと考えている理由」の部分になります。

 普段あまり聞き慣れないものとして「8 精神的に虐待する」という項目がありますが、これは、いわゆるモラハラ行為等を指しており、代表的なものは暴言や物を壊すといった行動になります。

 

 いずれにしましても、このチェック項目だけでは、申立人側の不満の概要は分かっても、いつのどのような行動が問題になっているのかといった具体的内容が何も分かりません。なぜこのような簡単な記入に限定しているのかというと、あまり詳しい内容を記載してしまうと、夫婦間の感情的対立が激化する危険性がありますので、簡略な記載に限定しているのです。

 あなたの方としては、調停期日当日には、各項目について詳しい説明を求められることもありますので、心当たりがある項目については、記憶喚起を図っておく必要があります。

 

 

3.まとめ


・調停申立書の1頁目の赤い判子が押されている箇所を見れば、申立人側が弁護士を雇ったか雇っていないかが分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の趣旨」を見ると、申立人側が希望する離婚条件が分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」上段の同居開始時期と別居日は重要な日にちなのでしっかりと確認する必要がある。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」下段に、申立人側が離婚を希望する理由が書かれているが、抽象的なので、詳しい内容は調停期日まで分からない。

 

 

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