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【絶対に離婚したくない(29)】相手からの離婚調停(4)―答弁書等の書き方

2024.07.22更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.まず何を裁判所に提出すればよいかを把握する


 裁判所から送られた書類には色々な書類が入っているため、整理する必要があるのですが、あなたが提出しなければいけないのは、①答弁書(夫婦関係調整)、②子についての事情説明書(お子さんがいる場合限定)、③進行に関する照会回答書(相手方用)、④連絡先等の届出書の3つになります。なお、東京家庭裁判所ですと、この4つの書類なのですが、他の家庭裁判所の場合、書式の種類や形式が違うことがあります。そのため、あなたが調停を起こされた家庭裁判所が東京家庭裁判所ではない場合、書式が異なる場合がありますので、以下の解説は、「あくまで参考」としてお読みください。

 

 それぞれの書類の意味合いについて概説しますと以下の通りになります。

 まず、答弁書は、申立人からの離婚調停申立に対してどのように考えるかを記載する書類になりまして、あなたが提出する書類の中で一番重要な書類になります。

   次に、「子についての事情説明書」は、今回の夫婦の紛争との兼ね合いで、お子様の現状に関する概要を記載する書類です。答弁書の次に重要な書類になります。

 「進行に関する照会回答書」は、今後の調停事件の進め方について、あなたの意見を記載する書面になります。裁判所としては、あなたに裁判所に出席してもらわないことには調停を進められないわけですから、あなたが調停に出席できるか、出席できない場合、いつなら出席できるのか等について、あなたの意見を求めているのです。

 

 最後に「連絡先等の届出書」は、裁判所からの今後のあなたへの連絡方法を記入する書類になります。

 このように「進行に関する照会回答書」と「連絡先等の届出書」は、事務連絡文書ですので、そこまで重要な書類ではありません。ただ、裁判所としても事件の整理にあたって必要な書類ですので、必ず調停期日の1週間前までには提出するようにして下さい。

 

 

2.答弁書等の書き方


 

(1)そもそも答弁書は出した方が良いのか

 たまに私が質問を受ける中には「調停の日に裁判所に行って話をすればいいから、こんなもの出す必要ありますか?」とか「相手は弁護士を付けているから素人が書面を書くと揚げ足を取られそうだから、出さない方が良いんじゃないですか?」といった意見を聴くことがあります。

 

 ただ、弁護士としては「答弁書は提出すべきです」という返答になります。と言いますのは、答弁書を提出しないと、調停委員は、あなたがどのように考えているのかがさっぱり分からないということになってしまいますし、裁判所としては、1週間前までに答弁書を提出して欲しいと要請しているわけですから、答弁書を提出しないという行動は、「裁判所の要請には従えない」という誤ったメッセージを送ることになりかねません。当然調停委員の印象も悪くなってしまいます。

 

 なお、調停手続に一切欠席すると言う人もいるようですが、調停の席に着かないと、相手の言い分が分からなくなってしまいますし、相手は蔑ろにされたと感じてしまいますので、得策とは思えません。

 いずれにせよ、答弁書を提出しないと言うことにはデメリットしかないので、必ず事前に裁判所に提出するようにして下さい。

 

(2)答弁書を書き始める前に

 あなたの人生にとって裁判所から書類が届くという事態は稀な経験だと思いますので、調停申立書を受け取った瞬間に、焦ってしまう、何も考えられなくなってしまうだとか、逆に申立人に対する怒りの感情を抑えられないと感じてしまうなど、冷静でいられなくなってしまうことは普通のことです。

 ただ、だからといって、そのときの感情にまかせて答弁書を記載しては絶対にいけません。

 答弁書は裁判所に提出する書類で、申立人側も目にする可能性が高い書類ですので、慎重に記載する必要があるのです。

  なお、どうしても答弁書にどのように記載して良いのか判断ができないといった場合には、答弁書の書き方だけでも弁護士に相談してみる、ということも検討してみてください。

 

 (3)答弁書の書き方

 1)まずは、離婚するかどうかにチェックを入れる。

  あなたとしては相手とのヨリを戻したいと考えているのですから、「円満に調整してほしい」のチェックボックスにチェックを入れる必要があります。

  なお、調停の場で相手の離婚意思が固いようなら改めて考えてみようと思っている、という場合でも、現時点でヨリを戻したいと考えているのでしたら、「円満に調整してほしい」のチェックボックスにチェックを入れて下さい。 

 2)意見覧の記載

 「円満に調整してほしい」「離婚したい」「検討中」のチェックボックスのすぐ下に「意見」の覧があります。1行だけしか記載できない仕様になっていますが、あなたの意見があれば記載して下さい。

 例えば、円満に調整してほしい場合「妻に対する愛情もありますのでヨリを戻したいと考えています」とか「子どものためにもしっかりと円満な家庭を築いていきたいと思っています」や「先日の夫婦喧嘩では乱暴な言葉を使ってしまいましたが反省しているのでやり直すチャンスをもらいたいです」といった形で簡潔に記載します。

 

 なお、調停委員に伝えたい項目が沢山ある場合には、答弁書に「別紙」を設けて、円満調整に向けての意見等を記載する方法や、答弁書とは別に陳述書を作成するといった方法もあります。ただ、あまり詳しい事情を記載してしまいますと、逆に相手を刺激するという危険性もありますので、極力「意見」の覧に収まる範囲で記載した方が良いと思います。

 

 3)他の条件に関する部分

  あなたは夫婦のヨリを戻したいと考えているのですから、「(付随申立について)」と書かれている以降の(1)から(7)については特に記載せず、大きく斜線を引いて下さい。

  親権や養育費等は、離婚することが決まった場合に決定する事項ですので、あなたが離婚を希望しないのに親権等について意見を述べるというのは行動として矛盾してしまいます。ですので、(1)から(7)の箇所には斜線を引いておくのです(なお、空欄で提出してしまうと、裁判所の方から「書き漏れですか?」という問い合わせが来てしまうことがありますので、斜線を引いておいた方が良いでしょう)

 

 4)「2 申立書の『申立ての理由』について」の覧

  まず、同居日と別居日は、離婚原因も絡む重要な日付ですので、申立人が記載してきた同居日と別居日の記載に誤りがないかしっかりと確認して下さい。

  皆さん離婚するかどうかや離婚の付随条件にばかり頭がいってしまい同居日と別居日については「だいたいこんなもんでしょ」と簡単に回答してしまうこともあるのですが、重要な日付ですのでしっかりと確認する必要があります。

 

  次に「申立の動機」に対する意見については、申立人側の主張が事実無根だという場合には、簡潔にあなたの意見を記載して下さい。例えば、暴力を振るったことがないのに調停申立書に「暴力を振るう」とチェックされている場合には、そのような事実がないことを記載することになります。

  なお、あなたの希望として夫婦円満を希望する以上、あまり申立人側の申立動機に対して詳しい反論をしてしまいますと、そのことが夫婦不和の原因にもなりかねませんので、欄に収まる程度に簡潔に記載するようにして下さい。

 

 5)「3 その他」の覧について

  ここには、これまで記載した中で記載しきれなかった事項について記載することになります。

  よくありますのは、夫婦として円満を希望しているけれども、お子様と面会できていないことだけは不満があるので、お子様との面会について協議させてほしい、といった要望を記載することになります。

 

(4)「子についての事情説明書」の書き方

 1)「1 現在、お子さんを主に監護している人は誰ですか。」

  ここには、今現在お子さんを育てているのが、申立人なのか相手方(あなた)なのかをチェックして下さい。

 

 2)「2 お子さんと別居している父または母との関係について、記入してください」

  ここには、これまでの面会交流の様子を記載することになります。実際に実施されているのかどうか、及び、実施内容に鑑みて、チェックボックスにチェックを入れて下さい。

  なお、現状面会交流が実施できていない場合には、その理由など(「こちらから会わせて欲しいと希望しても妻側が同意してくれない状況です」とか、逆に「こっちから会って欲しいと伝えているのに、いつまでも夫側からの回答がありません」)を空欄部分に記入して下さい。

 

 3)「3 お子さんに対して、離婚等について裁判所で話し合いを始めることや、今後の生活について説明したことはありますか」

  別居のことや離婚のことなどについて、あなたの口からお子さんに直接説明したことがあるのかどうか、説明したことがあるようであれば、その内容などを記載することになります。

 

 4)「4 お子さんについて、何か心配していることはありますか」

  お子さんの健康や情緒、登校・登園状況、交友関係(友人とのトラブル等を含む)などについて心配していることがあるようであれば記入して下さい。

 

 5)「5 お子さんに関することで裁判所に要望があれば記入してください」

  面会交流のことやお子様の健康や情緒の関係で注記すべき事項などがあれば記載して下さい。

 

(5)「進行に関する照会回答書」の書き方

 1)「1 別紙期日通知書の期日に出席できますか」

  まず、期日通知書の日時に出席できるか、あなたの日程を確認して記入して下さい。

  なお、「第1回期日には出席した方が良いですか?」という質問をよく受けますが、あなたの方でも弁護士を立てる予定で、弁護士の都合がつかないような場合には、第1回期日は欠席にして下さい(弁護士だけ欠席で、あなた本人のみは出席ということは通常せず、あなたも弁護士も欠席することになります)。

  逆に、あなたの仕事の都合がつき、調停期日にはあなた自身でまずは対応してみたいと考えているような場合、第1回期日は出席するようにして下さい。

 

 2)「2 最初の期日に欠席する場合、その後の期日について希望曜日をお書き下さい」

  あなたが第1回期日に出席できる場合、この「2」は空欄のままで大丈夫です。

  あなたが第1回期日に出席できない場合には、なるべく沢山候補日を記入して下さい。なお、調停の時間は、午前中は午前10時(但し、相手方は10時30分集合の場合あり)から12時頃まで(延長の可能性あり)、午後は午後1時15分(但し、相手方は1時30分や45分集合の場合あり)から3時15分頃まで(延長の可能性あり)になりますので、その時間帯を視野に、出席できる日付を複数記入して下さい。

 

 3)「調停での話合いは円滑に進められると思いますか」

  この覧は参考程度の記載項目ですので、あまり神経質にならずに記載してもらって大丈夫です。

  なお、離婚するかどうかや、その付随条件で意見対立が激しいようであれば「進められないと思う」にチェックして下さい。

  申立人側の言い分の詳細が今一はっきりしない場合には「分からない」にチェックする形で問題ありません。

 

 4)「4 申立人の暴力等がある場合には、記入して下さい」

  あなた自身が申立人側から暴力を受けた経験がある場合には記入して下さい。夫婦喧嘩がヒートアップして多少お互いに手を出し合う形になったというような話であれば、とりたてて記載しなくてよいです。

  この記載項目は、例えば申立人側が凶器を持参してくる危険性等もあるという場合には、調停委員も身の安全を考えなければならないといった問題もありますし、あなた自身に危害が加わらないような配慮も検討しなければならないので、設けられている項目だからです。つまり、調停のときに関係者の身に危険があるかどうかの参考にする記入項目ですので、特に申立人が調停室で暴れるような危険性がなければ、この箇所の記載に神経質になる必要はありません。

 

 5)「5 裁判所に配慮を求めることがあれば、その内容をお書き下さい」

  これは、前述の「4」の延長なのですが、相手からの暴力を受ける危険性等がある場合に、集合時間を相手とずらすなどの配慮を求めるといった記載をします。

 

(6)「連絡先等の届出書」の書き方

 あなたが裁判所からの書類を受け取りたい場所と、電話番号を記載する書類になります。

 通常は「申立書記載の住所のとおり」にチェックを入れ、あなたの携帯電話番号を記入することになると思います。

 

 

3.まとめ


・答弁書は決して感情的に記載してはいけない。

・夫婦円満を希望する場合、答弁書にはあまり書き過ぎない方が良い。

・「同居日」と「別居日」の覧は軽視されがちだが、重要な日付なのでしっかりと確認して記載する必要がある。

・「子についての事情説明書」は答弁書に次いで重要な書類なので慎重に記載する必要がある。

・調停期日の1週間前までに届くように、答弁書、「子についての事情説明書」「進行に関する照会回答書」、「連絡先等の届出書」を提出する必要がある。

 

 

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