モラハラ・DV夫からの付きまとい等を防止する9個の手段
2021.08.23更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
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1.無事に別居に成功しても、その後、つきまとわれることが不安
モラハラ夫・DV夫と別居する場合、事前にそのことを知らせてしまうと、別居そのものを妨害されたり、モラハラ・DV被害が悪化する危険性があるため、そのことを知らせずに別居を開始するというケースも多くあります。
ただ、別居そのものは成功しても、こちらの所在を知られないかという点は大きな心配事の一つだと思います。
そこで、今回は、そもそも、こちらの居場所を知られないためにどのような方法があるのか、また、付きまとい等を防止するためにはどのような方法があるのかといった点について解説していきます。
2.こちらの居場所を知られないようにするための方法
同居中にモラハラ被害・DV被害を受けてきた場合、こちらの転居先を知られないことは非常に重要です。そこで、まずは、こちらの別居先をモラハラ夫側に知られないようにどのような工夫等をしているのかについて、以下の通り、解説します。
(1)別居先選び
まず一番大事になってくるのは別居先選びということになります。
経済的な理由から実家を別居先にせざるを得ないという場合、その別居先を先方に隠し通すということは難しいことが多いです(一般的には、旦那側は、別居先として奥様の実家を最初に思い浮かべるため)。
先方に絶対に別居先を知られたくない、しかし、経済的な理由から一般のアパートを借りたりもできないという場合には、区役所等経由でシェルターに避難するという方法もあります。シェルターは基本的に所在そのものが秘密にされていますので、こちらの居場所を知られないためには一番安心とも言えます。
ただ、シェルターでは、携帯電話の使用が禁止されていたり、外部の親族との連絡も禁止されていたりと規律がやや厳しいのが難点です。また、ある程度年齢の大きなお子様と一緒にシェルターに避難することはできないことが多いです。
そのため、消去法的に、あなたの名義でアパートを賃借せざるを得ないというケースもあります。
その場合も、あなたがモラハラ・DV夫と直接連絡を取り合っている状況が続くと、夫側は執拗にあなたの居場所を聞き出そうとしてくることが非常に多いので、別居と同時に弁護士を雇って、弁護士を連絡窓口にするケースが多いです。
(2)住民票をどうするか
住民票については、あなたの勤め先やお子様の学校との関係で、特に移動しなくても支障がないということでしたら、移動しないままにしておくのが一番安全です。
他方で、あなたの勤め先との兼ね合い、お子様の学校との兼ね合いで住民票を移動せざるを得ないという場合には、同時にDV支援措置をかけなければいけません。要するに、夫も含め第三者があなたの住民票等を見られなくするのです。
DV支援措置を取る場合には、事前に警察やDV相談センターへ相談して証明を得る必要があります。
DV支援措置については、区役所で相談すると詳しく教えてくれることが多いので、そのようにご対応下さい。
(3)健康保険についての注意
一般的には、夫側の方があなたよりも収入が高いので、お子様の健康保険は夫側の保険に加入していることが多いと思います。また、あなたのお勤め先との関係では、あなた自身も夫側の保険に加入していることもあると思います。
そのような場合、数か月に1回程度の頻度で、あなたやお子様の受診歴が夫側に送られてしまいます。
そのため、あなたの今のお住まいの近くの病院にかかってしまいますと、その病院の名前から夫側がある程度あなたの居住圏を把握してしまうリスクがあります。
従って、あなたやお子様が医療機関を受診する場合には、元々の自宅近くの病院を受診するか、その健康保険組合が対応してくれるのであれば、夫側に受診歴を送らないように申請しておく必要があります。
なお、健康保険組合に詳しい事情を伝えると、夫の健康保険から強制的に脱退することも可能なのですが、この手段を取りますと、あなたが直接健康保険組合宛てにDVの相談をしていることが夫側に知られてしまいます。具体的には、健康保険組合から夫に対して直接「奥様からこのような申告がなされていますので、脱退届を提出して下さい。届を提出しなければ強制的に脱退することになります」といった連絡がなされてしまうのです。当然ながら、夫は、「うちの健康保険組合に余計な話をした」ということで激怒することが多いので、この手段は最終手段だとお考え下さい。
(4)裁判所の書類は、旧住所を用いることが多い
離婚調停を起こす場合など、調停申立書にあなたの住所を記載する欄があるのですが、その欄には、旧住所(モラハラ・DV夫と一緒に住んでいた住所)を記載することが多いです。
それ以外にも、陳述書など、あなたの住所やお子様の小学校名等を記載する欄があるのですが、いずれも「秘匿」と記載するなどして対応します。
裁判所の書類は、裁判所側だけではなく、夫側も見ることができる書類が多いので、注意しながら対応する必要があります。
3.付きまといを防止するための方法
別居先としてあなたの実家を選んだ場合や、あなたの勤め先を変更できないため、夫側に勤め先は知られているというような場合には、夫が実家を急に訪れたり、あなたの勤め先にやってくるというケースもあります。
このような付きまといを防止するためにはどのような手段があるかについて解説します。
(1)夫がDV夫で、その客観的証拠もあるなら保護命令が一番安心
同居中の夫の問題行動がモラハラだけではなく、直接的な暴力等の場合で、あなたが怪我をした診断書や打撲の写真等がある場合、DV防止法上の保護命令を申し立てる方法が一番効果的です。
この保護命令というのは、6か月間あなたに近付くこと等を禁止する命令(接近禁止命令)になります。
6か月間という期間限定にはなりますが、この命令の内容は警察にも共有されますので、格段に警察に相談しやすくなりますし、警察も厳格に対応してくれます。
このように安心な反面、裁判所も安易に保護命令は出してくれませんので、あなたが怪我をした診断書や打撲の写真等の客観的証拠を要求されることが多く、これがないと認められにくいという点が難点と言えます。
また、保護命令は6か月という期間に限定されますので、この6か月間の間に夫側が特段大きな問題を起こさない場合には延長が認められないというのも短所の一つと言えます。
(2)警察への相談
前述のようなDV防止法の保護命令は認められないとしても、あなたが夫と一緒に生活していた際によく怒鳴られていたり、脅迫されていたというような場合には、警察に相談すると、親身に相談に乗ってくれます。
警察署によって対応は異なるのですが、どうしても、夫の付きまといに不安があるというような場合には、別居の前に事前に警察に相談に行き、警察の方から夫に電話をしてもらうということもあります。
ただ、夫からあなたへの暴言等をお子様の前でも発しているとか、直接お子様への暴言等があると、警察は児童相談所に相談しなくてはならないということになって、状況がこちらの予期せぬ方向に進むこともあります。
児童相談所が介入してくると、職員がお子様と直接話をしたいといった話になり、別居したばかりで不安定なお子さまが傷つくということもありますので、児童相談所の介入を避けたいというときには、児童虐待に絡む話はあまり警察に申告しないほうが良いかもしれません(もちろん、夫からの悪質な児童虐待等があった場合には積極的に相談すべきですが)
(3)ストーカー規制法に基づく警告
前述のように事前に警察に相談に行き、警察から夫に対して「奥さんが探さないで欲しいと言っているので探したり付きまとったりしないように」と注意していても、あなたの勤め先を夫側が訪れて来たり、あなたに頻繁にメール等を送り続けるというような場合には、警察に相談して、ストーカー規制法に基づく警告を発してもらうという方法もあります。
ただ、ストーカー規制法に基づく警告については、警察署によってはあまり積極的ではないこともあります。
なお、モラハラ・DV夫側は、あなたではなく、「子供に会いたくて連絡を取っている」といった形で言い訳をするケースもあります。この場合、ストーカー規制法違反とすることは難しく、迷惑防止条例違反で警察に対応してもらうことになります(残念ながら、迷惑防止条例違反ですと、ストーカー規制法違反よりも、一層警察の動きが鈍いケースが多いです)
(4)弁護士を経由した警告
あなたが既に弁護士に依頼している場合には、相手の問題行動が認められた次第すぐに弁護士から警告を発するという方法もあります。
警察からの注意等ですと、旦那側を刺激し過ぎてしまうおそれがありますし、ことが大きくなりすぎる危険性もありますので、弁護士からの警告だけで、夫側が付きまとい等を中止するようであれば、あまり警察に頼り過ぎないほうが良いかもしれません。
(5)その都度裁判所と情報共有する
残念ながら、モラハラ・DV夫の付きまとい行為を直接防止する裁判手続きを取ることは難しいケースが多いです。
ここでお話したいのは、調停手続き中といった場合に、調停の席や調停の合間の場合には、書面で裁判所側にも情報共有するということです。
当然ながら、調停委員としても、冷静に話し合いをする環境を整えたいと考えますので、それに反するような行動については注意してくれることが多いです。
モラハラ・DV夫側も、付きまとい行為をしていることで、調停委員の印象を悪くすると不利に働くことから、今後の付きまとい等を控えることが多いです。
4.基本的には粘り強く対応するしかない
付きまとい行為を繰り返すモラハラ・DV夫は、一旦は収まっても、(残念ながら)ほとぼりが冷めたところで再発するというケースもあります。
そのため、その都度、弁護士経由で警告書を送るなどして、粘り強く対応せざるを得ないこともあります。
ただ、毅然とした対応を続けていくと、いつまでも付きまとい行為が続くというケースは非常に少ないので、毅然とした対応を取り続けることになります。
5.まとめ
・こちらの居場所を知られないためには以下のような方法・注意点がある
① シェルター等別居先の慎重な選定
② 住民票を移動しないという選択
③ あなたやお子さんの病院の受診先には注意が必要
④裁判所に提出する書類には旧住所を記載することが多い。
・付きまといを防止するためには以下のような方法・注意点がある
① DV防止法に基づく保護命令(接近禁止命令)
② 警察への相談
③ 警察からのストーカー規制法に基づく警告
④ 弁護士からの警告
⑤(調停中の場合など)裁判所に情報共有して牽制する
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