DV特集(5)―保護命令の要件
2015.11.06更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
前回に引き続きDVについてご説明してゆきたいと思いますが、今回は、DVの事件における保護命令の要件についてご説明いたします。
1.保護命令の要件は一般の方が思っているよりは厳しい
DV被害者の方がご相談に来られる際、保護して欲しいので保護命令の申請をして欲しいと要望される方がかなりの数いらっしゃいます。
だいたい、私のところにご相談に来られる方は、警察署やウィメンズプラザなどの配偶者暴力相談支援センターの支援を受けておられる方が大半なので、「保護命令」という言葉についてはご存じの方が多いです。
ただ、保護命令の発動条件は法律で厳しく定められていますので、注意が必要です。
なお、DVの保護命令の要件としてご夫婦もしくは内縁者という要件があるのですが、ここでは、内縁者の意義の説明は割愛させていただき、ご夫婦の問題であることを前提に説明させていただきます。
2.DV加害者からの暴力もしくは脅迫
一方の配偶者から何の暴力も脅迫もなければ、そもそもDVではないので、当たり前の要件のようにも見えますが、そう簡単ではありません。
①客観的証拠の有無が非常に重要
まず、暴力について説明しますと、暴力を受けたことを裁判所に対して証明しなければなりませんので、診断書や傷口部分を撮影した写真といった客観的証拠を求められることが多いです。最近は客観的証拠がなくても、保護命令を発令してくれるケースもありますが、少数ですので、基本的には客観的証拠が必要とお考えになった方がよいと思います。
このことは、脅迫の被害を受けた場合も同様です。特に、これまで暴力を受けたことは一度もなく、脅迫を受けたことがあるのみというケースでは、録音テープなどの客観的証拠が必要不可欠になると思われます。
なお、「客観的証拠」というのは、ご本人の証言や目撃者の証言、ご親族や友人の証言といった「言葉による証拠」(これを「主観的証拠」と言ったりします)と区別される概念で、今回の場合には診断書や写真、録音テープなどが該当します。
②単なる暴言は除かれる
DVの保護命令の要件は「脅迫」にあたる必要があり、この脅迫の内容としては、DV加害者の生命又は身体に危害を加える旨の告知でなければなりません。
つまり、単なる誹謗中傷では足りず、「ぶっ殺してやる」といった形の危害を加える旨の発言がなければなりません。
③今後危害を受ける危険性が必要
また、「今後も暴力によってDV被害者が危害を加えられる危険性がある」ということも要件になっています。
この要件で実務上問題点となるのが、①直近の暴力の時期と②これまでの暴力の継続性だと思います。例えば、大怪我をさせられたことがあったとしても、それが2年も前の話でしたら、今後も暴力被害を受ける危険性が高いということを裁判所に納得してもらうことは難しいように思えます。また、最近暴力を受けたケースであっても、例えば、これまでの数十年にわたる婚姻期間で一度も暴力をふるったことがなかった旦那様が、リストラにあったことを理由に奥様から執拗に責め立てられて、カッとなって一度だけ暴力をふるってしまったという場合では、今後も暴力をふるう可能性は低いと判断される場合もあり得ます。
3.退去命令は一般的に更にハードルが高い
上記のような保護命令の条件を満たした場合、接近禁止命令は発令されても、退去命令までは発令されないということは相当数あります。
退去命令は、DV加害者に対して、2ヶ月間自宅に入るなと命じる内容になりますので、DV加害者にとっては一定期間生活の本拠に戻れないことになりますから、その不利益は大きいものがあります。
そのため、退去命令発令については慎重になる裁判官が多いように感じます。
4.お子様やご親族様への接近禁止命令
まず、お子様への接近禁止命令については、お子様を連れ戻す旨の言動その他DV被害者がDV加害者との面会を余儀なくされるおそれがある時にのみ認められます。
そもそも、DV法は、DVの直接の被害者の保護を目的としていまして、お子様の直接の保護までは目的としていません。
そのため、お子様が連れ去られるなどすれば、DV被害者としては、お子様を帰してもらうためにDV加害者との面会を余儀なくされるでしょうから、そういった場合(DV被害者本人がDV加害者との面会を余儀なくされることで更なる暴力を受ける危険性がある場合)にのみ、お子様への接近禁止命令が認められるのです。
同様にご親族への接近禁止命令についても、その親族の住居に赴き粗野又は乱暴な言動をしており、DV被害者がDV加害者との面会を余儀なくされるような場合にのみ認められます。
つまり、例えば、頻繁にDV加害者が、DV被害者の実家まで押しかけて、大声で叫ぶということを繰り返す場合、DV被害者としては実家にこれ以上迷惑をかけまいと、DV加害者に面会することを余儀なくされることになりますので、これを防止するという限度でご親族への接近禁止命令が認められるのです。
たまにDV被害者ご本人やお子様はシェルターへ避難したけれども、DV被害者のご両親は、シェルターに入っていないという場合、そのご両親について接近禁止命令を申請して欲しいとのご相談を受けることがありますが、これはできません。
あくまでDV被害者を直接の保護対象にしておりますので、DV被害者に対する接近禁止命令の申請とセットでなければ親族への接近禁止命令を申請することはできないのです。
4.そのほかの要件
最後に形式的な要件にはなりますが、DV被害者の方は配偶者暴力相談支援センター又は警察署に一度は相談をしていることが必要であり(これに代えて公証人による宣誓供述書を用意することでも構いません)、また、ご親族の接近禁止命令をも申請する場合には、そのご親族の同意書を用意する必要があります。
5.DVの案件は発動条件も複雑なので専門家に相談するのが安心
以上のように、DVの案件は保護命令の発動条件などが複雑ですので、専門家に相談して手続を進めてゆくのが安心だと思います。
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