ブログ

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(9)―子の心情調査は避けられないのか?

2026.10.19更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

①離婚そのものは暫く前に成立している

②離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている

③その後もあなたがお子さんを育てている

④元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.今回の親権者変更手続きの中で子の心情調査は避けられないのか?


 詳しくは後述しますが、親権者変更手続きの中での「子の心情調査」というのは、家庭裁判所調査官が、お子さんと一対一で話をする調査のことを意味します。

 それでは、今回の親権者変更手続きの中で「子の心情調査」は実施されるのでしょうか?

 心情調査を実施するかどうかは、この事件を担当する裁判官が決めますので、結局、「裁判官が心情調査を実施した方が良いと思うような事情があるかどうか」によって決まることになります。

 このような必要性の有無は、以下の点が重要な考慮ポイントになると思われます。

 ①あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の心情調査が実施されたか

 ②その後の年月の長さ・お子さんの成長具合

 ③以前の家庭訪問から現在の生活環境の変化の有無・程度

 ④モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容

 

 

5.【ポイント①】あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の心情調査が実施されたかどうか


 あなたの単独親権に決める際に、離婚裁判の本格審理が実施された場合には、その際に家庭裁判所調査官の調査が実施されたものと思われます。ただ、当時のお子さんの年齢が幼いような場合には、家庭訪問等は実施しても、「心情調査は実施していない」という場合もあります。

 いずれにしましても、そのように一度家庭裁判所調査官の心情調査を実施した場合には、今回改めて心情調査をする必要はないと判断される可能性があります(但し、その後かなり年数が経過しているような場合には、心情調査を実施する可能性もあります)。

 他方で、協議離婚や調停離婚している場合、そのような本格的な調査を行わずにあなたの単独親権に決まっていることも多いと思います。

 そのような場合、これまでに一度も心情調査を実施していないということになりますので、今回は心情調査を実施するという方向に傾きやすくなると思います(但し、その様にあなたの単独親権と決めてからほとんど期間が経っていないような場合には、わざわざ心情調査は行わないというパターンもあると思います)

 

 

6.【ポイント②】その後の年月の長さ・お子さんの成長具合


 一度あなたの単独親権と決まってからまだ1年も経っていないなど、短期間しか経っていないような場合には、心情調査等は実施しない可能性が高まります。

 他方で、一度あなたの単独親権と決まってからもう5年以上が経過したというような場合、既に長期間が経過していますので、心情調査等を実施する可能性が高まります。

 また、それほど期間が経過していなくても、お子さんの成長の具合が著しいような場合、例えば、お子さんが3歳から6歳まで上がったような場合には、心情調査を実施する可能性は高まると見込まれます。

 

 

7.【ポイント③】以前の調査時から現在の生活環境の変化の有無


 以前の調査時と現在の生活環境に変化が大きい場合には、改めてお子さんの認識と意向を確認する必要があるという方向に傾きやすくなると思います。例えば、転居して、地方から都心部での生活に変わったとか、以前は実家で暮らしていたが、今はあなたとお子さんの二人暮らしに変わっているといったようなケースです。

 逆に、以前の家庭訪問時と現在とで家庭環境に全く変化がないという場合には、心情調査は実施しない方向に傾きやすいと一応言うことができます。ただ、この場合でも、お子さんの成長によって生活の様子は変化することが多いと思いますので、以前の家庭訪問からかなり年数が経っているような場合には、住居が変化していなくても、心情調査を実施することも多いと思います。

 

 

8.【ポイント④】モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容


 モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容は、裁判官も心情調査を行うべきかの重要な検討要素になると思います。

 特に共同親権に変更される場合には、モラハラ元夫がお子さんの今後の①住居、②進路に影響する進学、③重大な医療行為に関わっていくことになりますので、これらの①から③について、お子さん自身が元夫の関わりを強く希望しているような事情がある場合には、裁判官も、お子さんの希望を確認する必要があるとの判断に傾きやすくなります。

 そして、これらの事情は、元夫側が親子交流中に「子どもの希望を聞いた」といった形で手続きに反映されることが多いと思います。

 その意味で、モラハラ元夫の疑義内容が、心情調査の実施要否に影響してくるのです。

 

 

9.子の心情調査って何だ?


 子の心情調査とは、お子様の意向を家庭裁判所調査官が直接顔を合わせて確認する手続きのことを言います。
 「心情調査」と堅苦しい言い方をしますと、何かの脳波検査等をするのかとか、うそ発見器をつけられて話をするのか、とか色々と心配になってしまうかもしれませんが、要するに、お子様と調査官が面接をして、その内容を調査官が聞き取る・書き取るという手続きになります。

 私もこのような事件の担当をしておりますと、ご依頼者の方からいろいろとご質問を受けるものですから、その中から特によく質問を受ける内容等について、解説していきます。

 

(1)何歳くらいから心情調査を行うのか?
 実務の様子を見ておりますと、手続きが調停中と裁判中とでは、心情調査を行う年齢に開きがある印象です。
 東京家庭裁判所の調停事件での運用を見ておりますと、就学年齢(既に小学校に通っている年齢)に達した後ですと、一般的に心情調査を行っていると思います。
 これに対して、東京家庭裁判所の訴訟事件での運用を見ておりますと、8歳以上に達した後ですと心情調査を実施することが多くなっているという印象です。
 なお、お子様が15歳以上の場合には、必ず、そのお子様の意思を確認することが法律上義務付けられています。

 

(2)どのように行うのか?
 一般的には、お母様とお子様とで裁判所に来てもらい、家庭裁判所調査官とお子様の二人だけで話をして確認するケースが多いです(つまり、お母様はその場に立ち会えず、お母様だけ裁判所の待合室等で待っているという形をとる)。なお、お子様の様子の確認等の目的で調査官補が一緒に立ち会うこともあります。
 お子様がお二人、三人というケースでも、心情調査は、個別面接で行うことが多く、兄弟姉妹全員が一緒に調査官と面談するということは基本的にしません。

 

(3)どんなことを聞かれるのか?
 一般的には現在の生活状況のこと、離婚の経緯とそのことについてのお子様の認識、別居前の生活状況、今後のこと等を尋ねられることが多いです。
 調査官はご夫婦のお互いの言い分を踏まえたうえで、お子様に確認したい事項をその場で全て確認することになりますので、所要時間は1時間程度になることが多いです(但し、心情調査の直前に交流場面調査を行っている場合や別居経緯等について夫婦の意見対立が少ないなどの事情がある場合には、30分程度ということもあります。一般的にはお子様の年齢が幼いほど調査時間を短めにしようと努める調査官が多い印象です)。

 

(4)学校を休まなくてはいけないのか?
 一般的には、①長期休暇(夏休みとか)が近い時期に心情調査を実施する場合には、長期休暇中に心情調査するという形が多いですし、②夕方の時間に心情調査を行うという形にして、極力通学に影響しない形で日程調整することが多いです。なお、裁判所は土日祝日は開いていませんので、平日での日程調整ということになります。

 

(5)事前にレクチャーしておいたほうが良いのか
 たまに、どのようなことを聞かれるのかを事細かに想定して、「こう聞かれたらこう答えて」というようにきめ細かく準備しようという方もいらっしゃいます。
 ただ、このようにきめ細かい準備をすると、お子様は調査官に対して「事前に決まっていること、覚えていることを話そう」と必死に考えてしまいますので、そのことを調査官に見破られてしまうことの方が多いです。
 心情調査は、お子様の面接試験ではありませんので、①今お父さんがあなたの進学や医療等大事なお話に関わっていきたいということで裁判所の手続きになっている、②そのことで調査官という人があなたの気持ちを聞きたいと言っているので、思っていることを話してね、という程度の伝え方のほうが良いと思います。

 

(6)家庭訪問の時に一緒にやるのか?
 一般的には家庭訪問とは別日に、裁判所の一室で実施するケースの方が多いです。
 お子様もいきなり初対面の家庭裁判所調査官に対して、率直な意見を述べることは難しいと思いますので、家庭訪問の時に、いわゆる「顔合わせ」をし、その後に「別日」で改めて詳しい事情を確認するという形を取るということです。

 

 

10.まとめ


・心情調査の必要性の有無は、以下の点が重要な考慮ポイントになると思われます。

 ①あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の心情調査が実施されたか

 ②その後の年月の長さ・お子さんの成長具合

 ③以前の家庭訪問から現在の生活環境の変化の有無・程度

 ④モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容

・お子様が就学年齢に達していると、通常心情調査が実施される。
・心情調査は、お子様の面接試験というのとは性格が異なる。
・心情調査は、裁判所内の一室で調査官とお子様の二人が面接して行う形がオーソドックスである。
・心情調査の所要時間は1時間程度のことが多い。
・心情調査の日程は学校の予定等にも極力配慮してくれる。
・心情調査はお子様の面接試験ではないので、細かいレクチャーはしない方が良い。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(8)―家庭訪問は避けられないのか?

2026.10.05更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.今回の親権者変更手続きの中で家庭訪問は避けられないのか?


 詳しくは後述しますが、親権者変更手続きの中での「家庭訪問」というのは、家庭裁判所調査官が、あなたのご自宅を訪問する調査のことを意味します。

 それでは、今回の親権者変更手続きの中で家庭訪問は実施されるのでしょうか?

 家庭訪問を実施するかどうかは、この事件を担当する裁判官が決めますので、結局、「裁判官が家庭訪問を実施した方が良いと思うような事情があるかどうか」によって決まることになります。

 このような必要性の有無は、以下の点が重要な考慮ポイントになると思われます。

  ①あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の調査が実施されたか

 ②その後の年月の長さ・お子さんの成長具合

 ③以前の家庭訪問から現在の生活環境の変化の有無・程度

 ④モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容

 

 

5.【ポイント①】あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の調査が実施されたかどうか


 あなたの単独親権に決める際に、離婚裁判の本格審理が実施された場合には、その際に家庭裁判所調査官の調査が実施されたものと思われます。

 そのように一度家庭裁判所調査官の調査(家庭訪問を含む)を実施した場合には、今回改めて家庭訪問をする必要はないと判断される可能性があります(但し、その後かなり年数が経過しているような場合には、家庭訪問を実施する可能性もあります)。

 他方で、協議離婚や調停離婚している場合、そのような本格的な調査を行わずにあなたの単独親権に決まっていることも多いと思います。

 そのような場合、これまでに一度も家庭訪問等の調査を実施していないということになりますので、今回は家庭訪問を実施するという方向に傾きやすくなると思います(但し、その様にあなたの単独親権と決めてからほとんど期間が経っていないような場合には、わざわざ家庭訪問等は行わないというパターンもあると思います)

 

 

6.【ポイント②】その後の年月の長さ・お子さんの成長具合


 一度あなたの単独親権と決まってからまだ1年も経っていないなど、短期間しか経っていないような場合には、家庭訪問等は実施しない可能性が高まります。

 他方で、一度あなたの単独親権と決まってからもう5年以上が経過したというような場合、既に長期間が経過していますので、家庭訪問等を実施する可能性が高まります。

 また、それほど期間が経過していなくても、お子さんの成長の具合が著しいような場合、例えば、お子さんが2歳から5歳まで上がったような場合には、家庭訪問等を実施する可能性は高まると見込まれます。

 

 

7.【ポイント③】以前の家庭訪問から現在の生活環境の変化の有無


 以前家庭訪問を受けた時と現在の家庭環境に変化が大きい場合には、家庭訪問を実施する方向に傾きやすくなると思います。例えば、転居して、地方から都心部での生活に変わったとか、以前は実家で暮らしていたが、今はあなたとお子さんの二人暮らしに変わっているといったようなケースです。

 逆に、以前の家庭訪問時と現在とで家庭環境に全く変化がないという場合には、家庭訪問は実施しない方向に傾きやすいと一応言うことができます。ただ、この場合でも、お子さんの成長によって生活の様子は変化することが多いと思いますので、以前の家庭訪問からかなり年数が経っているような場合には、住居が変化していなくても、家庭訪問を実施することも多いと思います。

 

 

8.【ポイント④】モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容


 モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容は、裁判官も家庭訪問を行うべきかの重要な検討要素になると思います。

 元夫側は通常親子交流を通じてお子さんと関わっていると思いますが、その際のお子さんの様子に異変等があり、そのことが今回の親権者変更手続きに結びついている場合があります。例えば、お子さんが元夫に対して、あなたからの暴力を訴えていたり、ネグレクトを受けている恐れがあるというようなことを、元夫が言い始めるケースがあり、そのような場合には、裁判官も「念のため家庭訪問を実施した方が良い」と判断する可能性があるのです。

 逆に、元夫がお子さんの今後の進学面に熱心に関わりたいとか、あなたの普段のお子さんの監護に疑問や関心を抱いていない場合には、家庭訪問までは実施しなくて良いという方向に傾きやすくなる可能性があります。

 

 

9.実際の家庭訪問は?


 それでは、家庭訪問を実施することになった場合、実際の家庭訪問はどのように行われるのでしょうか。

(1)誰が来るのか?
 家庭訪問と聞くと、「実際誰が来るの?」というのが一番の疑問かと思います。
 家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問します。この家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所の手続きで必要な調査を行うことを主な業務とする裁判所職員のことを言います。
 家庭裁判所調査官は、心理学といった人間科学の知見を持っていますので、そのような知見を活かした調査を実施していくことになるのですが、その調査の一環として家庭訪問も実施するのです。

 通常は、家庭訪問の前に、調査官面接を実施するのですが、その調査官面接を担当した調査官が家庭訪問するケースが多いです。

 

(2)何をしに来るのか?
 イメージとしては、お子様の生活環境や普段の生活ぶりを確認しに来るということになります。
 いわゆる小学校の先生が自宅訪問に来た際には、母親であるあなたやお子様と話をして帰るというイメージだと思いますが、家庭裁判所調査官の調査は、現在の生活環境がお子様の福祉にかなうものかという観点から行いますので、より分かりやすく言いますと、より突っ込んだ調査になります。

 このように言いますと、「いろいろと根掘り葉掘り質問されるのか?」と身構えてしまいそうですが、たくさん質問されるというよりは、家庭訪問の際のお子さまの様子やあなたとお子様との接し方等について細かくチェックしているというイメージになります。
 実際の家庭訪問にはチェック項目があり、事前に対策を行っておく必要がありますので、詳しくご確認になりたい方は弁護士秦(はた)までお気軽にご相談ください。

 

 

10.家庭訪問の回数は1回だけ?


 通常、一つの親権者変更手続きについては、家庭訪問は1回というケースが多いです。
 複数回家庭訪問をすると、対応するあなたやお子さんにとっても負担になることが多いからです。

 

 

11.家庭訪問が行われてしまうとこちらの所在がバレてしまう?


 あなたが旦那様に対して現住所を秘密にしている場合、家庭訪問を行うことで現住所がバレてしまうことを心配すると思います。
 ただ、実際こちらの住所を秘密にしている場合、家庭裁判所調査官も、調査報告書に盛り込む内容等をこちらに相談してくれることが多いので、家庭訪問をしたからと言って、こちらの住所がバレる可能性は非常に低いとお考え下さい。

 

 

12.まとめ


・家庭訪問を実施するかは、以下の点が重要な考慮ポイントになると思われる。

 ①あなたの単独親権に決める際に家庭裁判所調査官の調査が実施されたか

 ②その後の年月の長さ・お子さんの成長具合

 ③以前の家庭訪問から現在の生活環境の変化の有無・程度

 ④モラハラ元夫側から投げかけられている疑義の内容

・家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問してくる。
・家庭訪問は、お子様の生活環境や生活ぶりを調査しに来る。
・一つの親権者変更手続きの中で行う家庭訪問は1回きりのことが多い。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(7)―かなり昔の虐待は影響しないのか?

2026.09.28更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.そもそも「児童虐待」って何だ?


児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義しています。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV

 親権の判断にあたっても、これらの5つが判断要素になりますが、特に上記の①の直接暴力と②の性的虐待が、重要性が高いです。

 

 

5.かなり昔の虐待は考慮されないのか?


 かなり昔の虐待ということは、通常は同居中の虐待だと思いますが、①判決で離婚した場合と②判決以外で離婚した場合とで検討要素が異なりますので、分けて解説します。

 なお、「①判決で離婚した場合」というのは、離婚裁判になり、判決の結論が出ているケースを意味します(要するに、離婚裁判になったけれども、判決ではなく和解で離婚した場合などは除外します)。

 これに対して「②判決以外で離婚した場合」というのは、前述のように離婚裁判になったけれども、和解で離婚したケースや、それ以外でも協議離婚や調停離婚した場合を指します。

 

 

6.【場合分け①】判決で離婚した場合


(1)以前の離婚判決でどのように認定されたか?

 判決で離婚した場合、モラハラ元夫の児童虐待について、裁判所がどのように事実認定したのかが重要なポイントになります。

 あなたが離婚裁判で児童虐待を主張したにもかかわらず、残念ながら、判決で児童虐待が認められなかったという場合には、改めて同居中の児童虐待を主張することは難しくなってくると思います(この場合には、別居後にモラハラ元夫から問題行動がなかったかという点に重点を置いて検討すべきことになります)。

 他方で、以前の離婚判決で児童虐待が認められた場合には、今後共同親権を争うにあたって非常に強い武器になります。

 

(2)以前の離婚判決で児童虐待が認められている場合、確実に共同親権を避けられるか?

 以前の離婚判決で児童虐待が認められた場合、そのことは共同親権を争っていくにあたって非常に強い武器になります。

 しかし、別居してから数年経過し、お子様とモラハラ元夫との関係が良好になっているような場合、直ちに必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければならない事情)があるとはされないと思います。このように一度判決が下っても、その後のお子様と元夫との関係性の変化の有無・程度が重要なポイントになります。

 

 

7.【場合分け②】判決以外で離婚した場合


 判決以外で離婚した場合、過去の児童虐待について、判決といった明確な児童虐待の証拠が残っていないということを意味します。

 そのような前提で、重要なポイントを整理すると以下のようになります。

 ①過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるかどうか

 ②証拠によって証明できる児童虐待の内容・悪質性等

 ③当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 ④当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 ⑤「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 ⑥単独親権決定以降の父子交流の内容

 ⑦単独親権決定以降の父子関係

以下詳しく解説していきます。

(1)【ポイント①】過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるか

 過去に児童虐待があったとしても、あなたの方としては、もう離婚が決着したということで過去の証拠を廃棄してしまっているという場合があるかもしれません。

 また、あまり年数が経過していると、今から警察への相談記録等を入手することは難しいことが多いです。

 このように、かなり古い虐待の話になると、「もうほとんど証拠が残っていない」という場合も多いと思いますが、虐待の証拠の有無は非常に重要なポイントになりますので、できる限り証拠はしっかりと探すように努力して下さい。

 くまなく証拠を探しても、ほとんど見つからないという場合には、虐待の証明が難しいという前提で、共同親権を阻止する作戦を練る必要があります。

 以下では、一定の児童虐待の証拠が残っていたという場合を想定して、解説していきます。

 

(2)【ポイント②】(証拠によって証明できる)児童虐待の内容・悪質性等

 次のポイントは、証拠によって証明した児童虐待の内容と悪質性になります。

 前述の通り、児童虐待とは、①お子様への直接暴力、②お子様への性的虐待、③ネグレクト、 ④お子様への著しい暴言等、⑤面前DVを意味しますが、中でも①と②は、一般的に、重大な児童虐待とされやすいです。

 そして、その虐待の頻度やしつこさ、攻撃性の強さなどから、より悪質なものかどうかが区分けされることになります。

 

(3)【ポイント③】当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 同居時の虐待がお子さんの心身に与えた悪影響の度合いも重要なポイントになります。当然ながら虐待によってお子さんがトラウマを抱えており、今もそれに苦しんでいるというような場合には、必要的単独親権事由があるものとして、共同親権にはならないものと思われます。

 逆に、お子さんが虐待を受けていた当時幼くて、当時の記憶がほとんど残っていないとか、または、かなりの年数を経て今はほとんど記憶に残っていないという場合には、必ずしも必要的単独親権事由があるとはされないケースもあり得ると思います。

 

(4)【ポイント④】当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方も重要なポイントになります。なお、ここでの「受け止め方」は虐待を受けていた当時の受け止め方と、今の受け止め方両方を検討すべき場合もありますが、より重要なのは「今の受け止め方」の方になります。

 モラハラ元夫が親権者としてかかわることがお子さんの福祉にかなうかどうかは、今のお子さんにとって有益なのかどうかという視点で検討すべきでしょうし、今の、成長したお子様なりの受け止め方が、より重要なポイントになるからです。

 

(5)【ポイント⑤】「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 離婚調停や離婚協議等単独親権だと決まってから現在までの年月の長さは、今後の調査の進め方等に影響する重要なポイントになります。

 一度単独親権と決まって1年以内とか早い段階での親権者変更の申立ての場合、お子さんの成長や考え方が大きく変わることはないと思いますので、本格的な調査等は行わないケースの方が多いかと思います。

 逆に単独親権と決まって5年以上が経過しているような場合には、当時よりお子さんは成長しておりますし、考え方もしっかりとしてきているでしょうから、本格的な調査を行うケースも多くなってくると思います。

 

(6)【ポイント⑥】単独親権決定以降の父子交流の内容

 単独親権決定後の父子関係は、基本的に親子交流でどのように接点を持ってきたのかで形成されていくことになりますので、この点も重要なポイントになります。

 当然ながら、お子さんの心情から、まだ直接交流に踏み出せていないような場合には、親権者変更にあたって元夫側に不利になります。

 

(7)【ポイント⑦】単独親権決定以降の父子関係

 単独親権決定以降の父子関係も親権者変更の判断にあたって重要なポイントになります。

 結局、親権者変更を認めるかどうかは、変更することがお子さんの福祉・利益にかなうかどうかという観点で判断されることになりますので、これまでに形成されてきた父子関係がどのようなものなのかが重要なポイントになるのです。

 

 

8.まとめ


・かなり昔の虐待が重視されるかどうかは、①判決で離婚した場合と②判決以外で離婚した場合の2通りに分けて検討する必要がある。

・判決で離婚した場合、その判決文に過去の虐待のことがどのように書かれているのかが非常に重要なポイントになる。

・判決以外で離婚した場合、以下の要素が重要な考慮要素になる。

 ①過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるかどうか

 ②証拠によって証明できる児童虐待の内容・悪質性等

 ③当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 ④当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 ⑤「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 ⑥単独親権決定以降の父子交流の内容

 ⑦単独親権決定以降の父子関係

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(6)―夫の児童虐待をどのように証明すればいいのか?

2026.09.14更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて考える必要がある


 一口に「児童虐待」と言っても、モラハラ元夫と①同居していた時と②別居した後で分けて考える必要があります。

 その虐待が、同居中のものであれば、別居して年数がかなり経過して、父子関係がかなり改善したというケースもあり得るため、単純に虐待があれば、一切共同親権にはできない、とは言いにくくなるということです。

 逆に、別居後親子交流をしている中で「最近も児童虐待があった」ということになると、そのことは深刻な問題と捉えられることになります。

 それでは、どのような資料等が「児童虐待」の証拠になるのでしょうか?

 

 

5.離婚判決で虐待が認められていれば、それが最も「強力」


 離婚には、①協議離婚、②調停離婚と③裁判離婚(判決での離婚)がありますが、あなたがモラハラ元夫と離婚する際に、「③裁判離婚(判決での離婚)」した場合で、その判決の中で元夫の虐待を認めてくれている場合、「最も強力な証明」になります。

 離婚裁判の中では、あなたが虐待の証拠を提出し、モラハラ元夫側が反論などをした中で、それでも、裁判官が虐待を認めているわけですから、「最も強力な証拠」と評価できるのです。

 逆に、あなたがモラハラ元夫と離婚する際に、離婚裁判をしたけれども、「虐待があったと認めてくれなかった」という場合には、残念ながらあなたにとって不利な要素となってしまいます。

 また、裁判離婚した場合には、上記のように言えますが、あなたが離婚した手続きが、協議離婚であったり、調停離婚だった場合には、判決のように児童虐待があったかなかったかが明記されていないことが通常かと思います。

 このように協議や調停で離婚した場合には、当時どのような虐待の証拠があったのかを検討し直す必要が出てきます。

 

6.その次に強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。

そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、親権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

 

 

7.その次に確実なのは録音データ


夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

8.LINEやメール


 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

9.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。
例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

10.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 また、警察の記録等は保存期間が限られていますので、今から改めて記録開示を要求しても、警察の方に記録が残っていないというケースもありますので、ご注意ください。

 

11.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

12.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。
 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で親権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

13.まとめ


・一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて検討する必要がある。

・判決で離婚した場合で、かつ、判決文で虐待を認めてくれている場合、それが最も強力な証拠になる。

・逆に、協議離婚や調停離婚の場合、判決文のように虐待の有無を明記していないことが多いので、当時の証拠資料の検討し直しが必要になる。

・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。

・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。

・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(5)―親権紛争で重視される児童虐待って?

2026.09.07更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

今回は、児童虐待に焦点を当てて解説していきます。

 

 

4.一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて考える必要がある


 一口に「児童虐待」と言っても、モラハラ元夫と①同居していた時と②別居した後で分けて考える必要があります。

 その虐待が、同居中のものであれば、別居して年数がかなり経過して、父子関係がかなり改善したというケースもあり得るため、単純に虐待があれば、一切共同親権にはできない、とは言いにくくなるということです。

 逆に、別居後親子交流をしている中で「最近も児童虐待があった」ということになると、そのことは深刻な問題と捉えられることになります。

 それでは、「児童虐待」とはどのような行動を指すのでしょうか?

 

 

5.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的には以下の通りです。

【児童虐待防止法より引用】

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

6.それぞれの詳しい解説


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。今回は、特に、親権紛争で重視されるような「児童虐待」について解説していきます。

(1)お子様への暴力
 前述の通り、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
 もちろん、このようにお子様に対して直接暴力を振るい、お子様に現実に怪我ができたり、怪我ができる可能性がある場合には、親権者として即不適格ということになろうかと思います。

 ここでの「怪我ができる可能性がある」というのは、それだけの強い威力の暴力ということですので、例えば、①DV夫がお子様を殴ったケースなどで、お子様がよけたので怪我をしなかったけれども、拳が壁に当たって壁が大きくへこんでしまったとか、②お子様が咄嗟に逃げたので怪我をしなかったけれども、DV夫が凶器を振り回したケースなどがこれに該当します。
 ただ、このようにお子様が怪我をする危険性があるような暴力でなくとも、お子様自身がDV夫からの暴力被害を記憶していて、そのことが理由でDV夫のことを怖がっているといった事情がある場合には、親権紛争においても、夫側に大きく不利な事情になります。

 

(2)お子様へのわいせつ行為

 夫側がお子様に対してわいせつ行為に及んだことがあったり、お子様自身にわいせつな行為をさせたことがあるような場合には、直接の児童虐待に該当しますので、親権者として即不適格ということになろうかと思います。
 親権紛争で争われる場合には、上記のような直接的な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。

 このようなケースでは、このような性的虐待についてどこまで客観的に証明できるのか、それがお子様にどこまでの悪影響を及ぼしているのかがキーポイントになってくるかと思います。なお、お子様の年齢によっては、性的虐待の意味合い等をお子様自身が十分認識できず、そのことについて自ら口に出して表現できないことも多いと思いますが、実際にはお子様の心の奥底に傷跡を残していることも多いので、小児心理の専門医に相談してケアをしていったほうが良いケースもあろうかと思います(当該医師から、性的虐待の後遺症が残っているような診断がなされた場合、その診断結果も重要な証拠になります)。

(3)ネグレクト
 上記の通り、児童虐待防止法にて「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」と規定されているものですが、いわゆるネグレクトのことを意味します。
 親権紛争では、同居中の言動や行動を問題にすることが多いので、ネグレクトは取り上げにくいというのが実際のところではないかと思います。

 例えば、あなたが週末出かけた場合で、夫が自宅でお子様の面倒を見ていた際、ネグレクトをしていたというようなケースですと、夫がそのようなことを繰り返していた場合、残念ながら、あなた自身に対しても、裁判所は「どうしてそんな夫にお子さんを任せて出かけたのか」ということで責められる危険性が高いのです。
 このように同居中の夫側のネグレクトは、あまり極端なものであった場合には、どうしてあなたが防止できなかったのか、ケースによっては、防止する意識が薄かったのではないか?とか、黙認していたのではないか?と裁判所から言われてしまい、あなた自身の育児の問題点とされてしまう危険性もあるのです。

(4)お子様への暴言・面前DV
 児童虐待防止法2条4号は、DV夫からお子様への直接の暴言と面前DVを児童虐待と定めています。以下では暴言と面前DVに分けて解説していきます。

ア 暴言
 児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義しています。要するに単なる暴言ではなく「著しい」暴言のみを対象にしているのです。
 ただ、その暴言が「著しい」ものなのかの区別は非常に難しく、こと親権紛争では、著しいものかどうかを問わず、暴言を受けることでお子様にどのような悪影響が生じてしまっているのかという観点を重視する傾向が強いです。実際のところ、DV夫が発した口頭の言動を細かく確定することは不可能に近いので、お子様自身がどう受け取ったのか、どう感じているのかといった観点から検討していく他ないのです。
 特に、お子様が①DV夫からの言動が怖かったとか、そのことで夜なかなか寝付けなかったといった話をしているとか、②DV夫の言動を真似て他の友人にそのような発言をしてしまったといった場合には、DV夫側は親権紛争で大きく不利になるケースが多いと思います。

イ 面前DV
 面前DVは、児童虐待防止法上、児童虐待と位置付けられているのですが、親権紛争では、あまり重視されない傾向が強いです。裁判所は、妻側に対する暴力は、夫婦間の問題と考える傾向が強く、そのことがストレートに監護者としての適格性に大きな影響を与えないと考える傾向が強いのです。
 もちろん、面前DVでお子様の心身に具体的な悪影響が生じてしまっているといったケースでは、そのような事情も親権紛争にあたって重視されますが、そうでない場合には、残念ながら、あまり重視されないとお考え下さい。

 

 

 7.児童虐待の有害性が残っているようであれば、必要的単独親権事由になる。


 虐待その他お子様の心身に害悪を及ぼす虞がある場合には、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければならない事情)があると評価されます。

 仮に、その虐待が同居時のものであったとしても、虐待からかなり年数が経っていたとしても、お子様がトラウマになっているといった事情がある場合には、お子様の心身に害悪を及ぼす虞があるものとして、共同親権に変更することは認められないことになると思います。

 

 

8.まとめ


・一口に「児童虐待」と言っても、同居中のものと別居後のものとは分けて考える必要がある。

・児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義している。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV
・親権紛争の中での児童虐待の重要性は、児童虐待防止法の定めとずれる部分もあるので注意が必要である。

・同居中の虐待であっても、お子様のトラウマになっているといった事情があれば、必要的単独親権事由があるものと評価される。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(4)―当初約束した面会交流の内容を守れていないが、どれほど不利になるか?

2026.08.24更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.共同親権への親権者変更ではどのような点が重要視されるのか?


共同親権への親権者変更においては、以下の9個の要素が重要な考慮要素になるものと思われます。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 

5.当初の約束を守れていないという点はあなたにとって不利な要素になってしまう。


 離婚当初あなたがモラハラ元夫と約束した面会交流の内容を守れていないということになりますと、残念ながら、一定の不利な要素になってしまうことは事実です。

 具体的には、①モラハラ元夫からすると、その様な面会交流条件が守られるからこそあなたの単独親権に合意したという場合には、単独親権にする経緯の部分で問題になり得ますし、②その後の父子関係や父母の関係性という観点からも、あなたの方から父子の信頼関係や父母の信頼関係に一定の悪影響を及ぼしているとも評価できるからです。

 ただ、このことがどの程度不利になるかは、以下のような要素を考慮して検討する必要があります。

 ①どのような形で当初の約束がなされたか

 ②その約束の内容

 ③その様な約束をするに至る経緯

 ④その約束を守れなくなった経緯

 ⑤約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応 

 ⑥その後の約束違反の内容

 ⑦お子さんの希望

 ⑧今後の対応方針

以下でそれぞれについて解説していきます。

 

6.【ポイント①】どのような形で当初の約束がなされたか


 「どのような形で当初の約束がなされたか」というのは、それが①夫婦の話し合いの中で約束されたものなのか、②裁判所の調停手続きの中で約束されたものなのか、③裁判所の審判手続きの中で決まったものなのかという点と、④その約束内容について書面などがあるのか?ということです。

 上記の①から③で比較しますと、審判で決まった内容を守れていないという方が、責任が重いとみなされやすく、次に、調停、その次に、協議と責任が軽くなっていくイメージです。

 また、裁判所の手続きを利用していない場合には、面会交流の約束について当初から書面が作成されていなかったり、書面が作成されていても、不完全な内容の場合もあります。口頭約束であったり、不備のある書面の場合、「約束違反」とはならない可能性もあります。

 

 

7.【ポイント②】その約束の内容


 その約束の内容も、考慮要素の一つになります。

 調停や審判で面会交流の条件が定められた場合、その内容に不備があることは考えにくいのですが、元夫婦の話し合いで約束した内容には不備が含まれることもあると思います。

 例えば、毎週面会交流を実施するとか、モラハラ元夫側がお子さんといつでも自由にコンタクトをとって良いといった内容は、離婚後のお子様の生活などを考慮した時に、お子様にとって過剰なものと評価する余地があります。

 

 

8.【ポイント③】その様な約束をするに至る経緯


 そのような約束をするにあたって元夫婦でどのような話し合いがあったのか(経緯)は重要な考慮要素になります。

 例えば、モラハラ元夫側が当初単独親権を主張していたものの、あなたが毎月1回必ず合わせると約束するので、あなたに単独親権を譲ったというような事情がある場合、その内容を遵守していないというのは、それなりに大きな問題と評価されてしまう余地があります。

 逆に、モラハラ元夫は離婚のときには今後の面会交流についてほとんど関心を持っていなかったというような場合、形式的に約束に違反しているからと言って、そのことをあまり重大視すべきではないということになろうかと思います。

 

 

9.【ポイント④】その約束を守れなくなった経緯


 あなたが当初の約束を守れなくなったことには何か理由があると思いますので、そのような理由や経緯は重要な考慮要素になります。

 例えば、約束した交流日にお子さんが体調を崩して参加できなかったとか、習い事の都合でどうしても面会交流出来ない月が出てきてしまったといった場合には、やむを得ない事情で約束を守れなかったという評価になろうかと思います。

 逆に、離婚後元夫とお子さんとであまり接点を持ってほしくないと考えた、というような事情は、約束を守れなくなった合理的理由とは言いにくいと思います。

 なお、たまに、「元夫が養育費を払わなくなったので、子供に会わせないようにした」とおっしゃる方がいますが、養育費の支払いと面会交流は直接関係する内容ではありませんので、養育費が入ってこないからと言って面会交流させなくて良いということにはなりません。

 

 

10.【ポイント⑤】約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応


 その後のモラハラ元夫側の対応も重要な考慮要素になります。

 例えば、モラハラ元夫側がしきりにあなたに電話連絡等をしているのに、あなたが放置してしまったという場合には、あなたにとって不利な要素になってしまいます。

 逆に、その後、モラハラ元夫側からあなたにほとんど連絡がなく、突如今回の共同親権への変更申立がなされたというような場合には、あなたにとってそれほど不利な事情にはならないと思います。

 

 

11.【ポイント⑥】その後の約束違反の内容


 約束を守れなかったとは言っても、毎月2時間の交流の約束が毎月1時間半になってしまっているという程度でしたら、そこまで大きな約束違反ではないと思います。

 他方で、モラハラ元夫からあなたにしきりに電話連絡が来ているのにそれを放置し続けて、2年間一切面会交流させなくした、というような場合には、重大な約束違反に該当してしまうと思います。

 このような約束違反の内容も重要な考慮要素になります。

 

 

12.【ポイント⑦】お子さんの希望


 お子さんの年齢にもよりますが、面会交流は、子の福祉の観点から実行されるものなので、お子さんの希望も重要な考慮要素になります。

 なお、お子さんが希望するのだから、毎日でも交流するなどと言い出すモラハラ元夫もいますが、交流はお子さんの安定した生活があってこそ実施できるものですので、あまり過剰な内容にはすべきでないと思います。

 

 

13.【ポイント⑧】今後の対応方針


 今後あなた自身が考える対応方針も重要な考慮要素になります。

 あなたとしては、モラハラ元夫とお子さんをあまり関わらせたくないと考えるかもしれませんが、少なくともお子さんが元夫と会うことを希望しているような場合に、それを妨げるような対応は望ましくないかと思います。

 

 

14.結局、共同親権にどれほど悪影響になるか?


 当初の面会交流の約束を守れなかったからと言って、直ちに共同親権が認められるといったほどの重大な悪影響は及びにくいと思います。

 ただ、約束を守れていないことは事実ですので、今後の対応方針についてはじっくりと検討して、こちらに不利にならないよう対応する必要が出てくると思います。

 

 

15.まとめ


・当初の面会交流約束を守れていないことがどの程度のインパクトを持つかは、以下のような要素を考慮して検討されることになる。

 ①どのような形で当初の約束がなされたか

 ②その約束の内容

 ③その様な約束をするに至る経緯

 ④その約束を守れなくなった経緯

 ⑤約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応

 ⑥その後の約束違反の内容

 ⑦お子さんの希望

 ⑧今後の対応方針

・当初約束を守れていないからと言って、即共同親権になるわけではないが、今後のことは慎重に検討した方が良い。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(3)―親権者変更が認められるかどうかの9個の重要ポイント

2026.08.17更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.親権者変更が認められるかどうかの9個の重要ポイント


 親権者変更の是非を判断するにあたっては、以下の9個のポイントが重要になってくると見込まれます。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 以下、それぞれについて解説していきます。

 

(1)当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 離婚するときの親権者を夫婦のどちらにするのかという点については、夫婦での話し合い又は調停の場での話し合いが行われていると思います。

 このような話し合いの経緯が一つの重要な要素になります。

 特に、協議離婚している場合には、その話し合いの中で間違った考えで相手の単独親権にしてしまったというようなパターンもあると思いますが、その様に話し合いの経過に重大な問題がある場合には、今後の親権者変更の議論は慎重に扱われることになります(ケースによっては、最初の親権者決めが意思表示の瑕疵ありとして無効なのではないか、という議論もあり得ると思います)。

 

 また、この点に関連して、あなたの単独親権がどのような手続きで決まったのか、という点も重要なポイントになります。

 ここでの「手続き」というのは、①協議、②調停、③裁判の3種類が考えられますが、③の裁判で親権者が決まった場合には、裁判所が慎重に検討した結果「あなたを単独親権者にするのがふさわしい」という結論が出ているわけですから、安易に親権者変更を認めるべきではないという方向の議論になることが多いと思います。

 他方で、①の協議で親権者が決まった場合、裁判所の中立的な検討を経ずに親権者が決まっていますので、その後の変更にあたって、改めて子の福祉という観点からの検討が必要になってくるケースも多くなると思います。

 

(2)そのように決まってからどれほどの年月が経過したか

 前述の通り、離婚の際に親権者を決める手続きとしては、①協議、②調停、③裁判の3種類があるのですが、いずれにせよ一度親権者を決めたのですから、例えば1年とか短期間で親権者を変更することは、子の生活の安定性といった観点からも望ましくありません(前述の通り、離婚協議に瑕疵があった場合は別ですが)。

 逆に、5年以上とか長期間が経過しますと、お子さんも成長し、その後の父子関係や母子関係にも変化が見られる可能性がありますし、生活状況が変化することも考えられます。その場合には、改めて家庭裁判所調査官の調査を実施して慎重に検討するという手順になることも想定されます。

 なお、単独親権者決定からの年月の長さを判断するにあたっては、その当時のお子さんの年齢も加味する必要があります。当時お子さんが2歳だったのが、今は5歳になっているということですと、お子さんの様子も大きく変化しているでしょうが、逆に当時お子さんが11歳だったのが14歳になったという場合、お子さんの様子にあまり劇的な変化は生じないものと思われるからです。

 いずれにしましても、単独親権者を決めてからどれほどの期間が経過しているのかという点は、今後の調査等にあたってどこまでの調査を実施するのかという点にも関わってくる重要な要素になると思います。

 

(3)従前の父子関係

 一口に「従前の父子関係」(モラハラ元夫とお子さんとの関係性)と言いましても、①同居中の父子関係と②別居以降の父子関係に分けて検討する必要があります。

 なお、①の同居中の父子関係において、モラハラ元夫が当時お子さんに対して暴力を振るっていたというような事情がある場合、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければいけない事情)があるということになりますので、共同親権への変更は基本的に認められません。

 いずれにせよ、同居中ですと日常生活の中でお子さんと関わっているのでしょうが、別居後になりますと面会交流等を通じての関わりになると思いますから、父親としての関わり方にも大きな変化が生じていると思います。このような変化がある中で、同居中・別居後ともに、お子さんの育児にどの程度どのように関わってきたのか、お子さんとの関係の良好さ、親密さ、熱心さ等が考慮要素になってくると思います(例えば、同居中はモラハラ元夫が熱心過ぎてお子さんが多少嫌がっている様子があったが、別居後の限られた関わりであれば、お子さんの負担が随分軽減されたというパターンもあれば、逆に、別居後だとモラハラ元夫側に取ってお子さんの普段の様子が分からないため、質問攻めにあってお子さんが疲弊している様子があるなどのパターンもあると思います)。

 また、相手がモラハラ元夫ですから、お子さんとの関わりの中でお子さんに対してもモラハラ行動や言動に及んでいないか、あなたに対する悪口等をお子さんに吹き込んでいないかといった点も考慮要素になってくると思います。

 

(4)従前の母子関係

 一口に「従前の母子関係」(あなたとお子さんとの関係性)と言いましても、①同居中の母子関係と②別居以降の母子関係に分けて検討する必要があります。

 同居中も別居後もあなたがお子さんの育児をメインで担ってきたという状況は変わらないと思いますが、別居後はモラハラ元夫がいない状況での生活になりますから、その後のお子さんとの関わり方にも一定の変化が生じているはずだからです。

 ここでも、同居中・別居後ともに、お子さんの育児にどの程度どのように関わってきたのか、お子さんとの関係の良好さ、親密さ、熱心さ等が考慮要素になってくると思います。

 

(5)父母の関係性

 あなたとモラハラ元夫との関係性も、共同親権の是非を検討するにあたって重要な考慮要素になります。

 そもそも、あなたがモラハラ元夫から身体的暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動の被害を受ける虞がある場合、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければいけない事情)があるということになりますので、共同親権への変更は基本的に認められません。

 前述の通り、離婚後共同親権は、お子さんの重要な事柄について父母で話し合って子の福祉にかなうような結論を導くという制度ですから、そのような父母の話し合いの土台が整っていない場合には、必要的単独親権ということになるのです。

 

 いずれにしましても、父母が共同して親権を行使できるような関係性が構築されているのかという点が重要な考慮要素になります。

 また、このような信頼関係を推し量る要素として、これまでの面会交流についての連絡の様子、モラハラ元夫がしっかりと養育費を支払っているか、といった点も考慮要素になります。

 相手がモラハラ元夫ですから、父母の冷静な話し合いは期待できないことが多いとは思いますが、モラハラの証明は難しいことも多いので、親権者変更手続きの中でも立ち回り方に工夫が必要になってくると思います。

 

(6)あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 あなたの単独親権と決まった後は、基本的にあなたが単独でお子さんの育児を担っていると思いますので、その中で、親権者として不適切な行動や言動等がなかったのか、お子さんの成長に伴う関係性の変化の中で問題等が生じていないのかといった点が考慮要素になってくると思います。

 おそらく、この部分は、モラハラ元夫側が声高に主張してくる部分になってくると思いますので(俺の見ていないところで元妻が子供に手を上げた、と言ったことを主張してくるという意味)、しっかりと反論していく必要があります。

 

(7)父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 今問題になっているのは、モラハラ元夫の単独親権に変更するのか?という点ではなく、共同親権に変更するのが良いのか?という問題です。

 「親権」というと、どちらが育てるのが良いのか?という視点で考えがちですが、共同親権の場合、前述の重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)を父母が共同して決める方が良いのかの是非を検討する作業になります。

 そのため、このような重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)の決定に父親が関わることがどれほどお子さんにとってメリットのある話なのかという点が重要な考慮要素になります。

 例えばですが、お子さんが医師を目指して猛勉強しているといった場合に、父親である医師の意見を踏まえながら進学先等を決定したいという場合、父親の果たす役割は大きくなってくると思います(もちろん、その事情一つだけで共同親権になるというわけではないですが)。

 

(8)子供の意思

 お子さんの年齢が幼い場合、十分な判断能力も無いと思いますので、その意見を裁判所が考慮することはないと思います。

 調停や審判の場合、お子さんが就学年齢に達している場合(小学校に入学している場合)、お子さんの意思を確認することが多いと思います(15歳以上の場合には、その意思を確認することが必要的です)。

 このようなお子さんの意向・心情調査を実施することになった場合、お子さんの目から見た現状の生活(満足度)、父親・母親との関係性等基本的な事項の確認を行うと思いますが、それらの中に大きな問題がない場合、共同親権特有の事情の確認が重要になってくると思います。

 即ち、共同親権にすることが良いのかどうかについては、前述の重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)について、父親が関与することが子の福祉にかなうかどうかの判断なのですから、意向・心情調査等においても、お子さん自身が上記重要事項に対して父親の関与を望んでいるのか、という点と、その理由が重要な考慮要素になると思います。

 

(9)今回の親権者変更手続きに至る経緯

 前述の通り、お子さんの重要事項について、父母が協力して話し合いができるのかという点が重要なポイントになりますので、今回の親権者変更手続きに至る経緯も、重要な考慮要素になります。

 親権者変更は、父母の同意だけでは実現できません(親権者変更届を提出すれば区役所で受け付けてくれるというシステムになっていません)ので、必ず調停等の手続きを経なければなりません。そのこととの兼ね合いで、事前の話し合いで共同親権にすることの合意ができているという場合、調停の席で、あなたの方で誤解等がないことの確認がとれれば、比較的スムーズに共同親権に変更できると思います(これがおそらく最もスムーズな手続きのやり方だと思います)。

 

 他方で、事前に何らの話し合い等もなく、いきなり調停を起こしてきたという、今回のようなケースの場合、父母が冷静に話し合える土台があるのかという点で疑問が生じると思います。

 このような観点から、今回の手続きに至る経緯も、考慮要素の一つになります。

 

 

5.まとめ


 親権者変更の是非を判断するにあたっては、以下の9個のポイントが重要になってくる。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(2)―元夫はどういうつもりでこのような手続きを取ってきたのか?

2026.08.03更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.夫はどういうつもりで親権者変更手続きを起こしてきたのか?


それでは、モラハラ元夫は、どう言うつもりで共同親権への親権者変更手続きを起こしてきたのでしょうか。

 これを紐解く鍵として、私が担当した監護者指定事件でのモラハラ元夫側の考えが参考になりますので、以下で解説いたします。

(1)お子様の今後にしっかりと関わりたいというケース

 前述の通り、離婚後共同親権の中には、お子様の今後の進学や重大な医療行為などが含まれますので、それらのお子様にとって大事な内容について積極的に関わりたいという気持ちで親権者変更手続きを取っているケースもあると思います。

 ただ、相手はモラハラ元夫ですから、単にお子さんに対して熱心であるというだけではなく、①実際にはお子さんを支配したいという気持ちが強かったり、②元夫婦の関係としてあなたのことを下に見ていて「あなただけに任せられない」という気持ちの場合も考えられますので、注意が必要です。

 

(2)こちらの様子の確認を目的とするケース
 特に、こちらがシェルターに避難したり、そうでなくとも、こちらの所在を秘密にしているような場合、モラハラ元夫側としては、こちらの暮らしぶりやお子様が元気にしているのかを確認したくて手続きを取っているというケースもあります。

 どういうことかと申しますと、親権者変更手続きを進めて行く中で、当然ながら現在のお子様の様子が直接の議題になりますので、こちらもお子様達の様子を裁判所に伝えることが必要になります。その内容は一定限度でモラハラ元夫側に伝わりますから、そこでモラハラ元夫は「情報収集」しているということになるのです。

手続が進んでいく中で、裁判所から「子の監護に関する陳述書」という書面の提出を求められたり、あなたの家に家庭訪問するというパターンも多く(家庭訪問するのは、家庭裁判所調査官であって、モラハラ元夫があなたの家を訪問するわけではありません)、モラハラ元夫は、それらを通じて、お子様達の様子を確認できるという側面があります。

 このようなケースですと、こちらの生活ぶりやお子様の様子が分かった段階で、夫側が申立を取り下げて来たりすることもあります。

 

(3)面会交流実施を目的とするケース

今後の面会交流をどうしていくのかという点は、親権者を決めるにあたっての重要な要素の一つになりますので、親権者変更手続きの中でも、面会交流の件が議題に上ることが多いです。

裁判所の基本的な考え方は、たとえ夫婦が別居や離婚になったとしても、父親と子供との関係は今後も続いていくので、お子様が父親からの愛情を受ける機会として極力面会交流を推奨すべきと考えているからです。

 そのようなこともあって、モラハラ元夫側としては「共同親権者になること」が本命ではなく、「お子様との面会交流実現」を本命にしているケースもあるのです(このような場合、共同親権への親権者変更調停事件と一緒に面会交流調停事件が起こされるケースも多いかと思います)。

 

(4)嫌がらせとしか思えないケース
 例えば、こちらの別居先は実家で、特にこちらの所在を元夫側に秘密にしているわけではないとか、そもそも、元夫側がお子様に会いたいと思っていると感じられないというケース(離婚前から元夫がお子様を可愛がっていなかったとか)もあります。
 むしろ、離婚前、元夫にとって気に入らないことがあると、あの手この手を使って嫌がらせをしてきたという場合には、今回の親権者変更手続き自体が嫌がらせ目的ということもあります。

 

(5)そうは言っても、「寂しい」「孤立したくない」というケースもある

上記の通り、主たる4パターンをご紹介しましたが、いざ離婚して元夫が独身生活を送っていると、寂しさを募らせているとか、孤立したくないという方がいるのも事実です。

あなたやお子様がいると家庭内もある程度活気があるのですが、元夫側一人だけの生活だと「味気ない」とか「寂しい」と感じてしまうというところです。 

 

(6)新しい法律ができたから「ひとまず申し立ててみた」というケースも出てくるか?

 前述の通り、改正民法が施行されたのは令和8年4月1日のことですから、まだ離婚後共同親権のことを十分理解しないままの方もいると思います。

 そのため、モラハラ元夫は、ひとまず新しい制度を利用してみたというようなトーンで申立をしてくることも考えられます。

 

 

5.モラハラ元夫がいきなり「審判」の手続きを申し立ててきた場合


 一口に親権者変更手続きと言っても、①親権者変更調停手続きと②親権者変更審判手続きの2種類があります。

 通常は、①親権者変更調停手続きを取ることが多いと思いますが、いきなり②の親権者変更審判手続きを取ることも不可能なことではありません。

 それでは、モラハラ元夫がいきなり②の親権者変更審判手続きを取ってきたのはどのような理由に基づくのでしょうか。

 簡単に、調停と審判の違いをご説明しますと、調停というのはあくまで話し合いの手続きであるのに対し、審判というのは裁判所の結論(命令)を求める手続きになります。

 そのため、いきなり審判を申し立てたというのは、元妻と話合いをしている時間的余裕がないほどにお子さんが危険な状態にあるといった主張が述べられるケースが多いと思います(例えば、お子さんがあなたから虐待を受けているとか、ネグレクトを受けているといった主張が展開されることが多いように思えます)。

 当然ながら、モラハラ元夫の言い分は誇張であったり虚偽であることも多いと思いますので、しっかりと反論していくことが必要になります。

 

 

6.モラハラ元夫はなぜ「単独親権」への変更申立をしなかったのか?


 親権者変更という場合、モラハラ元夫とすれば「私が1人で子供を育てたい」ということで「私が単独親権者になりたい」という申立てをすることも可能です。

 しかし、今回、モラハラ元夫が申し立てたのは「共同親権への親権者変更」の手続です。

 モラハラ元夫の思惑としては、①自分一人でお子さんを育てる自信がないというパターンと、②単独親権への変更だと勝ち目がないと考えているパターンの二つが考えられます。特に、離婚してから数年が経過していますと、数年間元妻が1人でお子さんを育てている中で、モラハラ元夫が単独親権を獲得することは非常に難しいといえます。そのため、②の理由のように負け戦にならないよう、最初から、「共同親権」への変更を申し立てているのです。

 

 

7.モラハラ元夫側の思惑は思惑として、こちらは共同親権を回避するためにしっかりと準備を整えること


 前述のように元夫側の思惑は様々ですが、どんな思惑であろうと、こちらとしては、お子様のためにも共同親権になることは避けなければなりません。
 そのため、こちらとしては、しっかりと準備をして、しっかりと勝って行く必要があります。

 

 

8.まとめ


・元夫側の親権者変更申し立ての思惑
① 心底お子様の重要な事項に関わりたいと考えている
② あなたの生活やお子様の生活の様子確認がしたい
③ 本命は面会交流狙いである
④ ただの嫌がらせ目的である

⑤単純に寂しいということで申し立てている
⑥新しい制度が始まったのでひとまず申し立てたといパターンも考えられる

・夫側の思惑がどうであろうと、こちらはしっかりと準備してしっかりと勝って行く必要がある。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(1)―まず何をすべきか?

2026.07.27更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.まず最初に確認すべきなのは、その手続きが「調停」なのか「審判」なのかという点


 元夫側から親権者変更の申立てがあったことについて、あなたの方としては、家庭裁判所からの封書が届いて確認するケースが多いかと思います。

 その封書を開けると、1枚目か2枚目に何月何日に裁判所に来て下さいと言ったことが書かれているとともに、1枚目の一番上に事件番号が表記されていると思います。

 その事件番号に「家イ」と入っていれば調停、「家」とだけ入っていれば審判になります。

 調停というのは、家庭裁判所の中の調停室という部屋を利用するものの、あくまで当事者間の話し合いの手続です。これに対して、審判は、裁判所に一定の結論を求める手続きでして、裁判所が下した結論には一定の強制力が発生します。

 このように調停と審判とでは、手続きの色彩が大きく異なりますので、まずは、元夫が申し立ててきた手続が「調停」なのか、「審判」なのかを確認することが大事です。

 上記のように審判は、裁判所が一定の結論を下してしまう手続きになりますので、審判の方が調停よりも重要度が高いです。

 そのため、「審判」の場合には、「調停」の場合よりも、後述のような弁護士への相談を、より早めに実施した方が良いです。

 

 

5.早めに弁護士に相談する


 前述のように、今開始している手続が「審判」なのか、「調停」なのかの確認がで来ましたら、早めに弁護士に相談することをオススメします。

 裁判所からは様々な書類が届くため、それを自分一人で読み込むことは難しいことが多いと思います。

 もちろん、過去の離婚の件をお願いした弁護士がいるとか、正式な依頼はしていないけれども相談している弁護士がいるということでしたら、その弁護士に相談することでも良いかと思います。

 まずは、弁護士に相談して、今どのような事態が起こっているのか、自分が何をすべきなのかについては、早めに確認するようにして下さい。

 

 

6.弁護士を雇うかどうかのポイント


 前述のように弁護士に相談したからと言って「弁護士を雇わなければいけない」という話ではありません。

 弁護士を雇うと弁護士費用が掛かってしまいますので、正式に依頼するかどうかは慎重に検討したいところです。

 大きなポイントとしては、①現状の手続きが「審判」なのか「調停」なのか、②元夫が弁護士を立ててきているのか、③あなたにとってどの程度不利な事情があるのか、という点が検討要素になると思います。

 それぞれについて解説していきますと、まず、「審判」なのか「調停」なのか、という点は前述で解説した通りでして、「審判」の方が手続きの重要性が高いので、弁護士を雇う必要性が上がってくるかと思います。

 また、元夫が弁護士を立てている場合には、こちらも弁護士を立てるのが望ましいと言えるでしょう。

 最後に、「あなたにとってどの程度不利な事情があるのか」の点は、前述の弁護士への相談の中で分かってくる事情だと思いますので、弁護士と話をしながら見極めるのが良いと思います。当然ながら、あなたにとって不利な事情が相当数ある場合には、弁護士を雇う必要性は上がってくることになります。

 

 

7.元夫がいきなり共同親権への親権者変更の「審判」を申し立ててきた場合


 この点は、今後の実務の運用状況を見極めなければならないと思いますので、これは私の私見ですが、元夫がいきなり審判を申し立てても、裁判所の判断で、調停に戻される比率が高くなるように思えます。

 よほど緊急で、あなたの親権行使に問題があるといった事情があるならともかく、そうでない場合には、まずは慎重に調停の場で話をさせたほうが良いと裁判官が考える可能性が高いからです。

 そのため、いきなり「審判」が申し立てられたからと言って、必要以上に不安になる必要はないと思います。

 

 

8.まとめ


・家庭裁判所から親権者変更手続きの通知が届いた時には、まず、「調停」なのか「審判」なのかを確認した方が良い。

・弁護士に依頼するかどうかはともかく、早めに弁護士に相談した方が良い。

・弁護士を雇うかどうかは、①現状の手続きが「審判」なのか「調停」なのか、②元夫が弁護士を立ててきているのか、③あなたにとってどの程度不利な事情があるのか、という点が大きな検討要素になる。

・元夫がいきなり親権者変更審判を申し立てても、裁判所の判断で、調停に手続きが戻される可能性が高いと見込まれる。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!どうなる!?これからのモラハラ離婚(24)】モラハラ夫が監護分掌(事項分掌)の申立てをしてきたが、その後の手続きは、どうなっていくのか?

2026.07.13更新

※監護分掌は改正民法で初めて明記された事件類型ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、ご注意下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 今回は、このようなモラハラ夫と離婚することを考えている方を対象に、民法改正でどのように制度が変わったのかを解説していきます。

 

 

2.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 以下では、あなたがお子様と一緒に別居を開始した後に、モラハラ夫側が事項分掌等の申立てをしたというケースを前提として、事項分掌の詳細を解説していきます。

 

 

3.監護分掌の申立てって何だ?


 改正民法では、これまで定めがなかった監護の分掌について明文の規定が設けられました(改正民法766条1項)。

 監護の分掌と言うと馴染みがない表現ですが、「育児の分担」と言うと、イメージがつきやすいかもしれません。ただ、既にあなたが別居していますので、あなたが必要な範囲で手助けしてもらうというようなオーソドックスな「育児の分担」ではなく、大まかに言うと①あなたが普段の育児をしながら、モラハラ夫が医療や教育に関してのみお子さんのことを決定する権利を持つパターンと②一定の期間で区切って、あなたが育児をする日とモラハラ夫が育児をする日を決めるパターンとがあります。②については、例えば、月曜から金曜はあなたが育児を全面的に担って、土日はモラハラ夫が育児を全面的に担うというような形が想定されます。

 上記の①のパターンのことを「事項分掌」と呼んだりします。

 

以下では、監護分掌の申立ての中でも事項分掌について詳しく解説していきます。

 

 

4.複数のバリエーションが考えられる


 事項分掌審判の申立ては、大きく分けて以下の3つのパターンが想定されます。

①パターン1

第1希望モラハラ夫の完全な監護権獲得、第2希望として事項分掌

②パターン2

第1希望として事項分掌、第2希望としてモラハラ夫の完全な監護権獲得

③パターン3

単純に事項分掌のみを申し立てる

 

 上記の3つのパターンのうちどちらのパターンで申し立てるかは、モラハラ夫が任意に選択可能です。このうちのどれを選択するかは、モラハラ夫の業務の繁忙さによって分かれると思います。モラハラ夫の業務が非常に繁忙だという場合には、普段の育児はあなたに任せる前提で「パターン3」の事項分掌のみを申し立てることになると思いますし、場合によっては自身が完全な監護者になることも想定し得るという場合には、「パターン1」や「パターン2」の申立てをしてくると思います。

 そもそも、事項分掌は、お子さんの普段の育児に関わりたいというよりも、お子さんの教育だけは関わりたいとか、医療に関してだけは関わりたいという形で申し立ててくることが多いと思いますので、「パターン3」を選択してくるケースが多くなるように思えます。

 

 

5.モラハラ夫の思惑は?


(1)モラハラ夫の思惑は?

 前述の通り、事項分掌は、お子さんの教育や医療に特化して包括的な決定権をモラハラ夫に委ねるという申立てであり、普段の身の回りの世話はあなたが担うことを前提とした申立てになります。

 そのため、非常に教育熱心で、お子さんの今後の進学(主として私立校への入学等を想定)や留学のことはモラハラ夫が全て決めたいというパターンや、お子さんが難病にかかっていたり、持病を持っていて、重要な医療での決断が不断に発生する際にモラハラ夫が全て決めたいというようなパターンが想定されます。

 必ずしも、事項分掌とモラハラ夫の職業が合致するわけではないのですが、教師や大学教授等が前述の教育に関する事項分掌の申立てをしてきたり、医師や看護師が医療に関する事項分掌の申立てをしてくることが想定されます。

 

(2)普段の日常行為は事項分掌の対象外

 前述の通り、モラハラ夫が申し立ててきた事項分掌審判申立ては、お子さんの教育や医療に特化して包括的な決定権をモラハラ夫に委ねるという申立てであり、普段の身の回りの世話はあなたが担うことを前提とした申立てになります。

 そのため、お子さんの普段の身の回りの世話に含まれる習い事の決定や予防ワクチン接種、普段の生活の中で体調を崩したときの医療受診等は、妻側の分担になります。なお、習い事の決定とは言っても、私立中学校の受験を目指した受験塾への通塾等は、教育に関する事項分掌に含まれる可能性もあり、この点は、今後の実務の解釈に委ねられることになります。

 

 

6.どのような申立てになるか?


 前述の通り、事項分掌は、「教育」や「医療」という特定の分野に特化して、その包括的な決定権をモラハラ夫に持たせるという申立てになります。

 例えば、お子さんの教育に関する事項の決定権をモラハラ夫が握る場合には、私立小学校への入学や小学校卒業後の他の私立中学校への入学、その後の留学等をモラハラ夫のみの意見で決定できることになります。

 但し、前述の通り、日常生活上の決定は妻側で行うことになります。

 

 

7.事項分掌は2つの事件をセットにすることになるものと想定される。


 事項分掌申立ては、現状のあなたの監護に強い不満があることが前提になりますので、以下の事件を2つセットで申し立てるものと想定されます。

1)事項分掌

2)保全処分

 

 以下それぞれについて概説します。

 1)は、前述で解説しました通り、「教育」や「医療」という特定の分野に特化して、その包括的な決定権をモラハラ夫に持たせるという申立てになります。

 また、モラハラ夫としては至急事項分掌の形を整えたいので、保全処分、要するに緊急措置として暫定的に事項分掌を開始して欲しいという申請も出すことが多いと思います。

 

 

8.監護事項分掌審判事件における手続の特徴は?


 前述の通り、モラハラ夫は保全処分も同時に申し立てて来るとは思いますが、差し迫ってお子様の「教育」や「医療」について急いで決定しなければならない事項がない場合、特段迅速な進行は取られないと思います。

 他方で、例えば、お子さんの私立小学校への受験がかなり近づいてきているとか、お子さんの持病が悪化して重要な医療行為の決断が迫られつつあるような状況の場合には、以下のように迅速な審理が図られるものと見込まれます。

 

(1)調停前置ではない。

 例えば、離婚する際には、いきなり離婚裁判を起こすことはできず、必ず事前に調停を起こしておく必要があります。このようにすぐに裁判と言った手続をすることができず、その前に調停を起こさなければ行かないことを「調停前置主義」と呼びます。

 家庭生活に関わる問題は、裁判官が強制するよりも、夫婦が話し合って解決することが望ましいという考え方から、離婚等には調停前置主義が採用されています。

 

 これに対して、監護事項分掌事件には、調停前置主義が適用されませんので、調停を経ずにいきなり審判を起こすことができます。

 監護事項分掌事件は、「教育」や「医療」に関する決定権を急ぎでモラハラ夫に戻す必要があるという前提で申し立てる事件ですので、調停手続きを経ることが要求されていない(調停前置主義が取られていない)のです。

 

(2)実際の手続の進行は?

 監護事項分掌審判事件の進行の特徴としましては、①迅速性、②第1回期日までにほぼ資料は出し切るべき、③調査官調査主体の手続であること、④調査報告書でほぼ結論が決まるといったことが言えるのではないかと思います。

 以下で詳しく説明していきます。

 

①迅速性

 前述の通り、監護事項分掌審判事件は、保全処分もセットで申立がなされます。

 そして、保全処分は緊急措置としてお子様の事項分掌を開始する手続と言うことになりますので、急ピッチで手続きが進められのが通例です(担当裁判部によっては多少スピード感が異なりますが)。

 即ち、保全事件では、第1回期日に調査命令が発令されることが多く、その後の調査も急ピッチで進められることが多いです。

 

 一般的な審判事件ですと、いきなり調査官を付けるのではなく、調査発令の前までにお互いの資料整理等を何度か行うことが多いのですが、保全事件では、第1回目から早速調査開始とすることが多いです。

 そして、調査を迅速に進めるため、調査官が複数名担当として付けられることもあります。

 調査官が複数名付けられることによって調査官の中でも作業の分担等を行うことができますので、手続の迅速化を図ることができるのです。

 

②第1回期日までにほぼ資料は出し切るべき

 前述の通り手続は急ピッチで進められますので、第1回期日までに資料等はほぼ全て出し切ってしまう必要があります。

 そのため、資料整理と裏付けの整理を急ピッチで進めることが非常に重要になります。

 特に、監護期間分掌事件では、これまでの監護状況が非常に重要なポイントになりますので、その裏付けとして保育園の連絡帳、母子手帳やお子様と撮影した写真等が客観的証拠として重視されやすいと見込まれます

 これらの証拠を準備しつつ、第1回期日までに陳述書も準備しなければなりませんので、忙しなく準備しなければならないことが多くなりそうです。

 

③調査官調査主体の手続である

 監護期間分掌審判事件において、ご夫婦は通常、過去のお子様との関わり方について、自身に有利なように主張を展開することが多いので、これまでの監護の状況については、調査官が裏付け資料等を見ながら慎重に判断していくことになります。

 調査官の調査は通常、①ご夫婦それぞれから提出された資料の検討、②ご夫婦双方との面接、③小学校や児童相談所等関係機関への訪問や問い合わせ、④自宅訪問の4部構成とすることが多いです(但し、通常は、①→②→③→④という順序で進行することが多いですが、事件によっては、順番が変わることも多いです)。

このようなお話しを致しますと、②の調査官との面接でしっかりと親としての活動をアピールしようと考える方も多いのですが、前述の通り、これまでのお子様との関わり方についてはどの程度の資料や証拠があるのかという点が非常に重要なポイントになりますので、上記①の資料提出の準備を怠ってはいけません。

 

④調査報告書でほぼ結論は決まる

 前述のような調査官の調査が完了しますと、調査官は調査報告書というものを作成します。要するに、実施した調査の概要を示すと共に、調査官として適切だと考える結論を報告書という形でまとめ上げるのです。

 この調査報告書は、実際に調査官のみでまとめ上げるのかというと、調査官が作成した叩き台に対して裁判官が意見を言うことの方が多いため、調査報告書には裁判官の意見が実質考慮されていることの方が多いです。

 そのため、調査報告書が出来上がりますと、実質的にそこで審判の結論は出てしまうことが多いです。

 このようなこともあって、裁判官は、審判廷において「裁判所の考え方は調査報告書の通りです」と発言することが多く、大半のケースでは調査報告書の内容通りの審判がおります。

 

 

9.まとめ


・一口に事項分掌と言っても、完全な監護者指定との掛け合わせで、全部で3つのバリエーションが考えられる。

・モラハラ夫が事項分掌を申し立ててきたのは、普段のお子さんの世話は妻側に委ねるという前提で申し立てたことが想定される。

・監護期間分掌審判事件は以下の2つの事件をセットで申し立ててくるものと想定される。

1)監護者指定

2)保全処分

・(保全の必要性が認められるような)監護事項分掌審判事件の特徴としては、①迅速性、②第1回期日までにほぼ資料は出し切るべき、③調査官調査主体の手続であること、④調査報告書でほぼ結論が決まるという点が特徴的である。

 

 

関連記事


>>弁護士秦のモラハラ総合サイトはこちら!!

>

>>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるか?)

>

>>ズバリ!!弁護士から見たモラハラ夫の共通点

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!

(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

弁護士 秦真太郎 -雨宮眞也法律事務所- 受付時間 9:30~18:00 定休日 土日・祝日 住所 東京都中央区日本橋兜町1-10日証館3階

※事前予約があれば平日夜間(22時まで)も対応可能です。