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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(57)―夫側から「妻はひどい叱り方」をすると指摘されたが? | 雨宮眞也法律事務所

離婚問題

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(57)―夫側から「妻はひどい叱り方」をすると指摘されたが?

2023.07.18更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫はどのように主張してくるのか?


 「ひどい叱り方」といっても、やや抽象的ですので、実際に私が担当した事件で、夫側がどのように言ってきたのかを、具体例として、ご紹介します。

(1)妻自身の機嫌が悪いと、昨日までは良かったことでも今日はダメと言うように叱りつけてくるので、子供も困り果てていた。

(2)妻は短気なので、何かがあると頭ごなしに叱りつけるので子供がかわいそう

(3)妻は怒り始めると止まらないので、30分近く延々と叱りつけるため、子供も疲れ果ててしまうことが多かった。

(4)妻は叱るだけで、何がダメでどのようにダメなのかを何も伝えないから、子供はダメな理由も分からないままのことが多かった。

(5)妻は大声で叱りつけるので、子供も怖がってしまっていた。

(6)妻は叱る際に子供が傷つくようなことを言うことが多く、子供が泣き出してしまうことが多かった。

(7)突如として子供に罰を与えることが多く(おやつを与えないとか、ゲーム機を突如取り上げるとか)子供が気の毒だった。

(8)他の兄弟と差別的に叱ることが多かった(例えば、次男には甘く、長男には異常に厳しいので、同じことをしても長男だけが叱られることが多かったなど)

(9)妻は叱る際に手をあげることが多かった。

 

 

3.監護者指定審判の中で問題となるような「ひどい叱りつけ」とは?


 お子様も時にはふざけてしまったり、悪戯をしてしまったりということもあって、その際には、ついこちらも「叱り方」が好ましくない形になってしまうということもあると思います。

 もちろん、お子様が何か悪いことをしたからと言って、①そのことに対して暴力を振るってしまったり、②お子様を閉じ込めるなどして恐怖を与えてしまうこと、③お子様の物を壊してしまうこと、④お子様の人格を否定するような発言をすること(例えば、「こんな子だったら産まなきゃよかった」とか)はNGです。これらは、お子様に対する健全な発達のための「叱りつけ」ではなく、もはや児童虐待になってしまっているため、許容できません。
 このように叱りつけが、あまりにも度を越してしまいますと、監護者指定審判の手続においても不利に扱われてしまいます。
 逆に、これらの①から④に当てはまるような度を越したものでなければ、そのことでこちらが大きく不利になることはほとんどないと思います。

 

 

4.逆に「良い叱り方」とは?


 このようなお話をしますと、逆にどのような叱り方が「理想なんですか?」とか「良い叱り方って何なんですかね?」とご質問を受けることがあります。
 そんな時には「お子さんに、叱られている理由がしっかりと伝わる叱り方が良いみたいですよ」とか「お子さんの目を見て正面から向き合って叱ると効果があるみたいですよ」などと回答することがあります。
 ただ、これらは一例でして、お子様がしてしまったことの内容、お子様の年齢、これまでのお子様との関係性、ご家庭の事情、地域の風習等によって、対応の仕方は様々だと思います。お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱るのが良いと思います。

 

 

5.夫側の主張に対する対応方法


 それでは、夫側の主張(詳しくは「2.夫はどのように主張してくるのか?」をご覧下さい)に対してはどのように対応すべきなのでしょうか。

(1)夫の言い分は虚偽・過剰であることが多い
 夫の言い分は、自分が有利に立ちたいがために、虚偽や過剰反応とも言える主張だということが多いです。
 そのため、虚偽や過剰なものに対しては、しっかりと「そのような事実はない」と指摘することが大事です。

(2)多少の叱り過ぎがあった場合は?
 多少の叱り過ぎがあったという場合でも、前述のような児童虐待という程度のものではない場合には、それほど恐れる必要はありません。
 この場合には、当時の経緯をしっかりと説明し、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。また、このような場合でも、夫側は実際の事実よりも過剰に演出してくることが多いので、過剰な部分が誤りであることもしっかりと指摘する必要があります。

(3)多少虐待的行為に及んでしまった場合は?
 前述のような虐待と称されるような行動に出てしまった場合にも、しっかりと経緯を説明して、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。
 ただ、その際に気をつけなくてはいけないのは、このような説明が「言い訳」と映らないようにすることです。折角詳しく説明している内容が、裁判官の目から見て「言い逃れの弁解を並べているだけ」と捉えられてしまいますと、逆に不利になってしまう虞があります。
 そのため、詳しい説明に加えて、自分としても反省していて今後二度と同じ行動に出ないことも明記することが大事です(こうすることで、「言い逃れ」ではなく、しっかり「反省」したうえで、事情を説明しているということが裁判官にも伝わりやすくなります)。

 

6.「お互い様だから問題ない」という言い分はどうなのか?


 たまに、奥様の方から「夫の方は、もっとひどい叱り方をしていた。こんな夫に言われる義理はない」といったことを指摘されることもあります。
 もちろん、夫側の不適切な育児等についてはしっかりと指摘しなくてはいけないのですが、「夫も悪いから、こちらのことも許される」という言い分は通りにくいです。
 そのため、前述のように、こちらの叱り方に実際に大きな問題があったという場合には、反省すべきは反省しているという姿勢を裁判所に見せたほうが効果的なことが多いです。

 

7.まとめ


・夫側は監護者として指定されたいがために、こちらの叱り方について様々な主張をしてくることも多い。
・虐待といえるような度を越した叱りつけでなければ、そこまで心配することはない。
・お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱ることが「良い叱り方」と言われることが多い。
・夫の言い分に対する対応方法は、指摘されている内容に応じて異なってくる。
・「お互い様だからこちらのことも許される」という言い分は通りにくい。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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