【絶対に夫に親権を渡したくない(5)】こちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?
2021.12.13更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.離婚の際に親権のことが一番心配
夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
今回は親権のことで、特に、「こちら側が無職の場合」にスポットライトを当てて解説していきます。
2.こちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?
(1)こちらが専業主婦だと、夫側は「収入がない人間だと、子供の生活費を払えないのだから、子供と暮らしていく権利がない」とか「自分の方がしっかりとした定職と収入があるので、子供の将来のことを考えると、自分が子供を育てたほうが子供の将来にとって絶対にメリットが大きい」と言ってくるケースもあります。
このように言われてしまいますと、あなたとしても親権を取れるのか不安に陥ってしまうと思います。
ただ、結論から申しますと、専業主婦であることは、親権者指定にあたって、そこまで重要な判断要素ではありません。
(2)重要なのは現在の収支が成り立っているかどうかという点
親権紛争では、あなたの収支の状況も一判断要素として検討対象になります。
そのため、最低限あなたの現状の収支バランス(例えば、月次の収支)が成り立っていることは必要になります。
ただ、このような収支バランスを成り立たせる方法としては、一時実家に身を寄せて実家の支援を受けながら生活するとか、生活保護を受けながら生活するということでも構いません(現に、私が担当した事件でも、生活保護でも親権者に指定された事件はあります)
(3)現在あなたがお子様を育てているという状況は大きなアドバンテージになる。
もちろん、親権紛争にはしっかり準備して臨む必要があります。
ただ、あなた自身の勝率といった場合、あなたが現在お子様と一緒に住んでいるということが大きなアドバンテージになっています。
親権紛争においては、「今誰がお子様を育てているのか」という点を最も重視するからです(法律用語的には「現状の監護状況」などと言ったりします)。
そのため、あなたが無職であるという事情よりも、「現状の監護」が重視されて判断されるのです。
3.重要な判断要素で拮抗していると重視されることもある
前述の通り、あなたの経済状況は、本来重要な判断要素ではありません。ただ、「全く考慮されない」というわけでもないことには注意が必要です。
以前、他のブログに書かせて頂きましたが、親権者指定に当たっての重要な7個の判断要素は以下の通りです。
1)監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢
多くの事件では、上記の7個の重要判断要素を総合して検討し、有利な方が勝訴するということになります。
ただ、ケースによっては、この7個の重要判断要素を総合検討しても、裁判官が判断に迷うというケースがあります(例えば、過去の監護実績という点では夫婦同等程度で、別居が奥さん側がかなり強引だった、現在のお子さんの様子を見るとそれほど不安定ではないが、別居がかなり強引だったので、登校面でも多少支障がある、しかも、奥さんは旦那側との面会交流を断固拒否しているというように、お互いに有利不利な点が数多くあるため、裁判官が判断に迷っているといったケースです)。
そのような場合には、裁判官は上記の重要判断要素ではない、他の点で優劣を決する場合があります。その時に経済状況が重視されることもあるのです。
4.あまり弱気にならずに、徐々に準備を進めること
旦那側から、「私が子供を育てれば留学をさせられる」「妻のところで育てさせると、子供が私立校に行くことは不可能なので教育の機会が損なわれる」などいろいろなことを言われてしまいますと、あなたも自信を無くしてしまうかもしれません。
ただ、親権者として適格かどうかは、今日明日のお子様の子育て等を恙なくこなして、しっかりと育てていけるのかという視点で決しますので、経済力の問題は直接親権の優位性に影響しません。また、普段からお子様としっかりと接してきたあなたがお子様を育て続けたほうが、お子様にとっても幸せになることは明らかです。
そのため、旦那側の色々な言い分に対してあまり不安を持ち過ぎず、あなた自身少しずつ仕事を始めていくなど、徐々に準備を進めていくことの方が重要になります。
5.まとめ
・あなたが専業主婦であるということは親権者指定にあたってはそれほど重要な要素ではない。
・むしろあなたの現状の収支バランスがとれていることの方が重要である。
・あなたが現実にお子様を育てているという事情は親権紛争で大きなアドバンテージになる。
・親権者指定の7個の重要判断要素で実力が拮抗している場合には、経済状況がある程度考慮されることもあるので注意が必要である。
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