相続人がどこに住んでいるのか分からないケース
2015.06.17更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
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1.相続人がどこに住んでいるのか分からない
ひとり暮らしのご兄弟がお亡くなりになったので、自宅を含めた遺産相続をしなければならないけれども、故人の前妻のお子さんの連絡先が分からないなど、相続人がどこに住んでいるのか分からないという問題に直面されている方はいらっしゃらいないでしょうか。このような場合に、相続人が誰なのかをきちんと確定しませんと、相続人同士の話し合いをスタートすることすらできずに困ってしまいます。
また、相続人がいらっしゃることが分かっていればまだ良いのですが、故人と絶縁状態であったため、どのような人が相続人になるのかすら想像もできないとか、音信不通であったため相続人が生存しているのかすら分からないというケースもあると思います。
このような場合には、どのように遺産相続して行けばよいのでしょうか。
2.私が担当した事件
私が担当した事件は、故人が80歳でお亡くなりになり、相続人として少なくともその兄弟姉妹のお子様(故人からすると姪御様や甥御様)がいらっしゃるとのことで、その甥御様からご相談を受けました。甥御様のお話では、故人は、実のご両親の他に養親の方がいらっしゃるため、養親の他のお子様が兄弟の関係に立つという事情がありました。問題は、養親との関係でのご兄弟が30年以上も前に海外渡航して海外に居住しているため、連絡先電話番号はもちろん住まいについてすら全く分からないという事件でした。
3.まずは戸籍の調査
このように依頼者の方から見てあまりご縁がない相続人の方がいらっしゃる事件では、依頼者の方が想定もしていないような相続人の方が出てくる可能性があります。
ですので、私はまずは戸籍を丹念に調査し、相続人の範囲を確定しました。そうしましたところ、当初想定していた海外在住のご兄弟(ここでは「Aさん」と表示致します)の他にも国内在住のご兄弟のお子様(ここでは「Bさん」と表示致します)が相続人として浮上しました。
このようにして新たに浮上しました相続人のBさんとは詳しく事情を説明して、相続権を放棄して頂けましたので、あまり大きな問題とはなりませんでした。
4.ご生存されているかどうかすら分からない相続人への連絡
問題は、海外に渡航された相続人のAさんです。故人のご年齢からすると、Aさんもかなりのご高齢なのでお亡くなりになっている可能性もあったのですが、依頼者の方は全く事情をご存じありませんでしたので、連絡を取ることにかなり腐心致しました。
まずは、Aさんの住民票や戸籍謄本等を入手したのですが、アメリカに渡航したことは分かるものの、住民票及び戸籍の記録が役所によって消除されていたため、その方の生死すら分からない状況でした。
次いで、BさんなどAさんのお身内になると思われる方と連絡を取り、Aさんの現住所を知らないか確認を取るなどして、Aさんの現住所を把握すべく丹念に情報収集を致しました。
しかし、海外渡航したのが30年以上前と言うこともあって、Aさんのお身内の方でも、Aさんの海外での住所をご存じの方はいらっしゃいませんでした。
そこで、弁護士会を通じて外務省に対して照会をし、海外在住日本人の住所という形で把握できないか調査をかけましたが、結局、Aさんの住所や生死についても把握することはできませんでした。
5.最後の手段(失踪宣告)
このように弁護士の調査能力をフル活用しても、相続人の方の所在を確認できないと言うこともあります。しかし、Aさんの生死が分からないままで相続の手続を進めることもできませんので、最後の手段として失踪宣告の申立をしました。
失踪宣告とは、長期間生死が不明の方に対して、法律上は既にお亡くなりになっているとの扱いを認めてもらう制度になります。
失踪宣告が認められますと、Aさんを抜きにして相続手続を進めることができるようになります。
失踪宣告を申し立てますと、裁判所の方からはAさんの住民票、戸籍謄本はもちろん、弁護士としてどのような人物に連絡を取ってどのような回答を得たのか、外務省の回答結果はどのようなものであったのか等について事細かに確認を求められました。
その後、裁判所の方でも関係各所にAさんの所在に関する情報を調査していました。
結果的には、裁判所の調査能力を持ってしてもAさんの所在を確認することができませんでしたので、失踪宣告が認められました。
私が調査を開始してから失踪宣告が認められるまでには2年近くの月日を要しましたが、一人の人間を法律上とは言え「死亡したものとみなす」ことになりますので、丹念で慎重な調査が求められますから、致し方ないとは思います。
6.あとがき
このように行方不明の相続人の方がいらっしゃる場合、個人の力で所在を確認することには限界があります。また、相続人の数が増えますと、意見の調整が難しくなりやすいと言えます。
このような場合には、専門家に相談して頂き対策を十分に練って頂いた上で手続を進めることを強くお勧め致します。
雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
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