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【夫から我が子への虐待(16)】離婚すべきか悩んだ末に「一旦別居」する場合に何を取り決めるべきか?

2024.06.17更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「どこよりも分かりやすい解説」を目指して詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.なかなか離婚を決断できないケースも多い


 お子様が夫から虐待を受けているのに、離婚を決断できないという状況について、残念ながら、外の第三者から見ると、不可思議に見られてしまうこともあります。
 しかし、私のところにご相談に来られる方は、以下のようなことをおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
①私から見ると夫のしていることは虐待だけれども、子供も昨日叱られたことはすっかり忘れている様子で何もなかったかのように夫と接しているので悩んでしまう。
②夫は時折子供を激しく叱りつけるが、普段は子供と優しく接しているので、子供も懐いているから、子供と夫を離れ離れにすることが忍びない。
③夫の叱り方にも問題があるが、子供の側にも叱られる原因がある(お約束を守らなかったなど)ので、一概に夫だけを責められない。
④離婚が頭をよぎるが、夫の収入なしでは生活が立ち行かない。
⑤結婚を機に専業主婦になってかなり年数が経つので、すぐに働き始めるということが難しい(すぐに経済的に自立するということが難しい)。
⑥実家が遠方なので、実家を頼るということが難しい。
⑦子供と夫との仲はかなり険悪化してしまっているが、私と夫との関係がそこまで険悪化していない。

 

2.何を取り決めるべきか


 別居の話をする際に、夫と冷静な話し合いをすることができるようであれば、別居中の約束事を取り決めたほうが望ましいです。何も決めておかないと、混乱等が生じる危険性があるからです。
 具体的には何を取り決めた方が良いのでしょうか。

(1)最低限取り決めておいた方が良い事項
 最低限取り決めておいた方が良い事項としては以下のようなものがあります。
 ①別居期間
 ②別居中の生活費
 ③別居中の面会交流

(2)可能であれば取り決めておいた方が良い事項
 必須とまでは言えないけれども、取り決めておくのが望ましい事項としては以下のようなものがあります。
①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項

 以下、それぞれについて詳しく解説していきます。

 

 

3.【最低限取り決めておいた方がよい事項1】別居期間


(1)別居期間は極力明確に取り決めておくべき
 夫婦の冷却期間としてどの程度の期間を置くのかについては夫婦の共通認識を持っておく必要があります。
 冷静に夫婦関係を見つめ直したいあなたにとっては、相当期間の別居期間を置きたいと考えるでしょうが、夫側は「そんなに長い期間別居するのは許容できない」と考える場合もあります。
 そのため、別居期間が長いと感じるか短いと感じるかは人によって異なりますので、認識の相違がないようにしておいた方が良いと思います。
 今回の別居の発端は、夫のお子様に対する虐待が原因ですから、あまり別居期間を短期間にすることは難しいと思います。現在のお子様の状況にもよりますが、最低、半年や1年程度に設定することが多いかと思います。
 なお、この別居期間は「何月何日まで」というところまでは取り決めず、「1年程度」というように含みを持たせた方が、多少柔軟性を持たせられます。

(2)「当分」とか「しばらく」という取り決め方はあまり望ましくない
 極力夫との話し合いを短く済ませたいということで、「当分の間別居」とか「しばらく別居」というように取り決めてしまうケースもありますが、そうすると、曖昧なので、別居後に夫側から「いつ戻ってくるんだ?」とか「当分というのはいつまでなんだ?」という問い合わせ等が何度もなされ、あなたも落ち着かないという事態に陥りかねません。
 そのため、「当分の間」というような曖昧な定め方は極力避けた方がよいと思います。

(3)「子供の不登校が治るまで」といった決め方は?
 現在、夫からの虐待が原因でお子様が不登校になってしまっている場合、不登校の状況が治るまで別居という約束をするケースも考えられます。
 ただ、このような決め方にしてしまいますと①どのような状況になったら不登校が治ったと言えるのか?という問題が生じますし(要するに、完全に毎日登校できる状況にまで改善したら「治った」と言えるのか、それとも1週間のうち3日間登校できるようになれば「治った」と言えるのかなど、評価があいまいになるという意味です)、②夫側から、不登校が改善したか確認したいから毎週担任教師に電話連絡をするなどと言い始めるなど、夫側から無用な詮索を受けるリスクもあります。
 そのため、お子様の現況を踏まえて、「恐らく今年中に不登校が大きく改善する可能性は低い」とか、ある程度の目処が立っているのであれば、別居期間については「今年の年末頃まで」といった取り決め方をした方がよいかと思います。

 

4.【最低限取り決めておいた方がよい事項2】生活費について


 通常は、夫側の方があなたよりも収入が高額かと思いますので、法律上、あなたは夫に対して生活費(法律用語では「婚姻費用」)を要求する権利があります。
 もちろん、夫との話し合いで「権利がある」という話し方をすると、夫が抵抗する危険性もありますので、「別居中の生活費のことを決めたい」という話し方をした方がよいと思います。
 具体的には、現在夫の口座から差し引かれているあなたやお子様の費用(携帯電話代とか学校の給食費とか)はそのまま支払ってもらい、それ以外に月々いくら払ってもらうということを取り決めることになります。
 なお、夫が賞与をもらう月は多めに貰うという形で調整するケースもありますが、通常は、毎月同じ金額をもらうという形にするケースが多いです(相手がもらった賞与の分はあきらめるということではなく、相手が毎年賞与をもらえるという前提で月々の生活費の金額を多少高めにするという意味です)。

 生活費としていくら請求するのかが分からないという場合には、裁判所の算定表のサイトをご覧になると参考になる数字が分かります(インターネットで「裁判所 婚姻費用算定表」と検索すると出てきますので、試してみて下さい)。
 このような生活費の支払期限は毎月月末とするケースが多いのですが、いずれにせよ支払期限は明確にしておいた方がよいです(月末にしないのであれば、毎月10日までとか、いずれにせよ日にちを確定しておくという意味です)。

 

 

5.【最低限取り決めておいた方がよい事項3】面会交流について


面会交流とは、別居中、夫側がお子様と会うこと(面会交流)について、どの頻度や方法などを定めておくことです。
 今回の別居の発端は、夫からお子様への虐待が原因ですから、当分の間、面会交流はナシにして、お子様が落ち着いてきてから、面会交流のことを話し合う、といった取り決め方の方がオーソドックスかと思います。
 何もお子様の状況が分からないと夫側が納得しないという場合には、お子様の学校の通知表や成績を伝えるとか、お子様が現在カウンセリングなどを受けている場合には、その経過等を共有するといった形で情報共有するという取り決め方をするケースもあります。
 また、今は直接会うことはできないけれども、オンライン通話や電話で話すくらいは構わないというときには、オンライン通話や電話に限定して、1週間に1回認めるといった取り決めをするパターンもあります。

 

6.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項1】別居中の誓約事項に関する条項


 別居中相手に守って欲しい約束事を取り決めるというものです。
 例えば、夫は酒癖が悪く、お子様に虐待行為に及ぶのはいつも酒が入っているときだというような場合には、別居中酒を控えることを取り決めるといった具合になります。
 それよりも夫のアルコール依存が激しい場合には、アルコール依存専門外来の病院に行って治療することを取り決めるといったことも考えられます。
 このような約束事は、あなたにとっては必ず取り決めたい事項になると思いますが、夫側からすると、このような議論は避けたいと考えるでしょうから、このような約束事を取り決めることにこだわり過ぎると話し合いが進展しなくなってしまう危険性もあります。また、あなたの方から夫に対して誓約事項を提案すると、逆に夫の側からも「そっちもこういう約束をしろ」などと逆提案がなされるケースも多いです。
 そのため、お子様の状況に鑑みて、別居を早めたいという場合には、このような誓約事項は一旦保留にして、別居を先行させるということも考え得ると思います。

 

7.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項2】ペナルティーに関する事項


 これは、前述の誓約事項について取り決めることができた時に、違反した場合のペナルティーを取り決めておくというものです。
 例えば、夫が別居中飲み過ぎた場合には、来月の小遣いを減らすとか、夫が別居中こちらに対して乱暴な言葉遣いをした場合には、その後1週間は連絡を取り合わない(連絡禁止)とするといった取り決めになります。
 このようなペナルティーの取り決めは、相手が誓約事項に合意することが前提になりますし、ペナルティーと聞くと夫側が強く反発してくる危険性も高いため、可能であれば取り決めておいた方がよい事項という扱いになります。

 

8.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項3】別居中の荷物に関する条項


 今回の別居が冷却期間としての別居で、自宅に戻る可能性もあるということでしたら、普段の生活に必要ないものは自宅に残すケースが多いと思います。または、実家を別居先とした場合で、自宅と実家が近いという場合には、あまり大きな荷物は搬出しない(自宅に残したままにしておく)というケースもあると思います。
 そのような場合には、荷物の運び出しについて取り決めをしておくこともあります。
 例えば、夫側が、あなたが勝手に自宅に入ることに抵抗を示している場合には、荷物を取りに戻るのは夫が在宅の時に限るといった約束をするケースもあります。または、逆に、別居中あなたやお子様の大切なものや思い出の品を夫が勝手に処分等しないことを約束させるケースもあります。

 

 

9.まとめ


・別居の際、最低限取り決めておいた方が良い事項としては以下のようなものがある。
 ①別居期間
 ②別居中の生活費
 ③別居中の面会交流
・別居の際、必須とまでは言えないけれども、取り決めておくのが望ましい事項としては以下のようなものがある。
①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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