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【絶対に離婚したくない(15)】弁護士を立てる場合のベストなタイミングは?

2023.10.30更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※
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1.弁護士を立てるタイミングの見極めは大切


 私が相談を受けておりますと、いつ弁護士を立てるのが良いのか、そのタイミングについて質問を受けることも多いです。
 そして、弁護士によっては、「すぐに弁護士を立てた方が良い」と言ってくる弁護士も相当数いるのが事実です。
 ただ、よく考えてみますと、こちらはパートナーと夫婦関係を修復したいのであって、対立したいわけではありません。
 弁護士を立てるタイミングはケースによって様々なのですが、いくつか場合分けをして解説していきます。

 

 

2.【ケース1】相手がまだ弁護士を立てていない場合


 相手が別居をスタートさせてしまったとか、相手から離婚調停を起こされてしまったというような場合でも、まだ相手が弁護士を雇っていないようでしたら、こちらもまだ弁護士は立てない方が良いと思います。
 理由は大きく二つあります。
 まず、理由の一つ目は、弁護士の役割にあります。弁護士は、残念ながら相手と対立し、本人利益の最大化を図るという性格がありますので、相手の目から見て、「弁護士を雇って攻めてきた」と感じてしまうのです。あなたとしては、相手とケンカをしたいわけではなく、関係を修復したいわけですから、弁護士を立てることが、相手に誤ったメッセージになることは避けた方が良いと思います。

 もう一つの理由は、間に弁護士が入ることで直接の会話がしにくくなるということが挙げられます。
あなたが弁護士を雇うということは、あなたの窓口が弁護士になるということを意味しますので、相手とのやり取りは基本的に全て弁護士を通じて行うことになります。
 そのため、残念ながらあなたが相手と直接話をする機会が減ってしまう側面が否定できません。
 私が夫婦円満のケースを多数取り扱っておりますと、弁護士を雇わないことで、夫婦関係を無事修復できたというお話をなさる方も多くいらっしゃいます。

 

3.【ケース2】相手が弁護士を立てたが、まだ調停等は起こしてきていないケース


 このケースは、相手が弁護士を立てているものの、まだ調停といった裁判所の手続きにはなっていないケースです。
 既に相手が弁護士を立てているものの、まだ裁判所の手続きになっていないのですから、極力こちらは弁護士を立てないことをオススメすることが多いです。
 既に相手が弁護士を立ててしまっていますので、相手と直接話をすることは難しくなってしまっているのですが、かといって、こちらが弁護士を立てると、前述のように、相手の目から見て、敵対行動と捉えられかねません。
 そのため、極力こちらは弁護士を立てないことをオススメすることが多いのです。
 但し、相手は弁護士ですから、対応を誤りますと、今後の進行にも悪影響が生じる場合があります。

 そのため、相手の弁護士と直接電話で話をすると「言いくるめられそう」だとか「一方的に攻められて気落ちしてしまいそう」といった不安があるようでしたら、相手弁護士とのやり取りを書面に限定するという進め方をオススメしています。
 要するに、あなたの意見などは、書面にして郵送で相手の弁護士事務所まで郵送するのです。こうすることで、相手の弁護士と直接会話して、「余計な話をしてしまう」という心配はありません。

 

4.【ケース3】相手が弁護士を立てて調停などの手続きを取ってきた場合


 相手が弁護士を立てて、調停などの裁判所の手続きを踏んできたケースです。
 この場合には、裁判所の手続きが始まってしまっていますので、あなたも弁護士を立てることをオススメすることが多いです。
 裁判所の手続きが始まってしまいますと、弁護士なしで対応することはリスクが大きいと感じるからです。
 ただ、弁護士を雇うタイミングは別途相談とさせて頂くことが多いです。
 と言いますのは、相手が「調停を起こす」と話していても、なかなか実際の調停が始まらないというケースもありますので、そのような場合には、こちらが弁護士を雇うのは、家庭裁判所から調停の案内が来た後からにするというケースも多いです。
 いずれにしましても、裁判所の手続きとなると、あなたにとっても不安が大きいと思いますので、早めに弁護士に相談し、弁護士を雇うタイミングも含めてご相談なさることをオススメします。

 

5.上記の解説は、一般的なケースであって、あなたの場合当てはまらないこともあり得る


 以上のような解説は、一般的なケースの解説でして、あなたのケースで確実に当てはまるとは限りません。
 いずれにしましても、今後のことなどに不安があるような場合には、一度弁護士に相談だけはしてみることをオススメします。
 どうしても不安が大きいので早めに弁護士を雇うということもあり得るでしょうし、逆に、今は弁護士を雇わない方が良いことが分かって安心したということもあり得ると思います。

 

6.まとめ


・あなたが夫婦関係の修復をしたいという場合には、弁護士を雇うタイミングは慎重に検討する必要がある。
・少なくとも、相手がまだ弁護士を立てていない場合や、弁護士を立てていても裁判所の手続きに入っていない場合には、こちらが弁護士を立てることはあまりオススメしない。
・相手が弁護士を雇って調停を申し立ててきた場合には、こちらも弁護士を立てた方が良い。
・今後のことなどについて不安が大きいようであれば、早めに弁護士に相談だけでもしてみると良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(14)】セカンドオピニオンの活用法

2023.10.23更新

弁護士秦

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1.セカンドオピニオンとは?


 セカンドオピニオンとは、今雇っている弁護士の弁護活動や弁護方針などに疑問を感じ、別の弁護士の意見を聞いてみるというものです。
私は、夫婦関係修復の事件を多数取り扱っておりますので、夫婦関係修復の件でセカンドオピニオンを求められることも多くあります。

 

 

2.セカンドオピニオンの限界


 セカンドオピニオンは、現在あなたが雇っている弁護士よりも、より客観的に状況を把握する利点があります(あなたが雇った弁護士は、あなたと一緒に事件を戦っているため、どうしてもあなたの味方としての立場が表れてしまっていて、客観的な状況把握がしにくくなっていることもあります)。
 また、あなたが今雇っている弁護士の方針に疑問や不安があった場合、セカンドオピニオンで、その弁護士の方針に誤りがないと聞くことができれば、大きな安心材料になります。
 そのため、セカンドオピニオンは、「今雇っている弁護士と違う意見を聴く」ということではなく「今雇っている弁護士と同じ意見を聴いて安心する」というメリットもあります。
 ただ、セカンドピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限があることは否めません。

 

3.あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない


 たまに、今後の手続や結論への不安が強く、何人もの弁護士にセカンドオピニオンを繰り返しているという方もいます。
 前述のように、セカンドオピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、「弁護士によって少しずつ言うことが違う」と感じることも出てくるかと思います。
 そうなると「沢山の弁護士に話を聞いて、余計混乱した」とか「余計に不安が増してきた」ということにもなりかねません。
 そのため、セカンドオピニオンを求めるにしても、多くても2,3件程度にとどめておいたほうが良いと思います。

4.定期的アドバイザリーは?


 セカンドオピニオンからさらに進んで、今の弁護士を雇いながら、定期的なアドバイザリーをお願いしたいと依頼されることもあります。要するに、今の弁護士に引き続き弁護活動を行ってもらいながら、随時、私のセカンドオピニオンとしてのアドバイスを継続的に得られるようにする契約のことです。
 ただ、定期的アドバイザリーは、裁判所の法廷・調停室に足を運ばずに弁護士がアドバイザーになるというものですので、どうしても、裁判所が考えている方向性とずれてしまう側面が否定できません(実際に法廷に足を運ぶと、裁判官の発言や表情を直接見聞きできますので、アドバイザリーとして、そのような直接見聞きができないという点は大きなビハインドと言えます)。
 そのため、私自身は、そのような定期的アドバイザリーを引き受けることはしていません。
 他の弁護士も、「定期的アドバイザリーは引き受けない」という弁護士も多くいますので注意が必要です。

5.今雇っている弁護士を変えたほうが良いのか?


 セカンドオピニオンを受けていると、「今雇っている弁護士を変更したほうが良いのでしょうか?」という質問を受けることもあります。
 ご本人様が不満を述べられる事項としては以下のようなものがあります。
  ①今雇っている弁護士の返事が遅い。
  ②今雇っている弁護士の書面の作成が遅い。
  ③本当は打ち合わせをして話をしたいのに、忙しいからということで電話でしか話をしてくれない。
  ④こちらは夫婦関係を修復したいのに、離婚を勧められる。
  ⑤全体から見ると大きな事項ではないけれども、今雇っている弁護士の方針が理由なく変わることがある。
  ⑥一生懸命対応してくれているけれども、夫婦関係の事件をあまり取り扱ったことがない弁護士なので不安がある。

 ただ、私が詳しくお話を聞きますと、①や②については、そこまで弁護士の返事や書面作成が遅いわけではないと感じることも多いです。また、③から⑤についても、その弁護士として考えるところがあって、そのようにしていることも多い気がします。
 そのため、私が途中から交代して弁護につくことは、「ごく少数」という印象です。

6.セカンドオピニオンのタイミングは?


 今雇っている弁護士の弁護活動や弁護方針等について、複数疑問や不満を感じた場合には、「早めに」セカンドオピニオンを受けることをオススメしています。
 前述のように、セカンドオピニオンで私がお話を聞いておりますと、今雇っている弁護士の弁護活動等が許容範囲内と感じることが多いので、私の方から「特に大きな問題はないと思いますよ」とお話することで安心してお帰りになる方が多いからです。
 「今雇っている弁護士の言っていることは本当に正しいのだろうか?」という不安を持ったままですと、今後の対応にも不安が募っていくと思いますので、何か不安事等があれば早めにセカンドオピニオンの利用をお考え下さい。

 

7.インターネットで調べた情報を鵜呑みにしない


 今雇っている弁護士に不信を感じた場合、簡単な手段として、インターネットで検索したり、インターネット経由で質問してみるという方法があります。既に弁護士に不信を感じているので、また新しい弁護士に直接会って話をすることを負担に感じてしまう方も多く、インターネット検索等で調べられれば簡便で済みます。
 このようなインターネット検索を参考程度にするのは構わないと思いますが、その内容を鵜呑みにすることはオススメしません。
 インターネットで調べますと、あなたのケースと似たような事例で、大きな利益を得られたというような記事などを見かけることもあります。ただ、その事案はあくまであなたのケースと「似た事案」であって「同じ事案」ではありません。
 また、インターネットの情報は残念ながら法律的に十分精査されていない情報も多く、これを鵜呑みにすることはリスクが大きいのです。
 更に、インターネット上で質問できるサイトなどもありますが、そのようなサイトでは、あなたが持っている実際の資料などは見ないで回答しなくてはいけませんので、資料上の限界があります。
 いずれにしましても、インターネット上には様々な情報があふれていますので、ネット検索をして、それを鵜呑みにすることはかなり危険だと思います。

 

 

8.仮に弁護士を変更する場合の受任タイミング


 どうしても今雇っている弁護士への不信感が拭えないというような場合には、今の弁護士とは弁護士契約を解除して、私が交代で対応するということもあります。
 交代のタイミングとしては、今の調停が審判や訴訟になったときなどの節目の時にすることもありますし、早めに弁護士を切り替えたいということで早めに切り替えるということもありますので、ケースによって様々ではないかと思います。

 

 

9.まとめ


・セカンドオピニオンは客観的な意見を聴けることが多いが、時間的・資料的限界がある。
・あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない。
・定期的アドバイザリーについては、そもそも、そのような契約形態は引き受けないという弁護士も多いので注意が必要である。
・今雇っている弁護士を交代させたほうが良いというケースは稀である。
・今雇っている弁護士に不安などがあったときには、早めにセカンドオピニオンを受けた方が良い。
・セカンドオピニオンの代わりにインターネット検索するというのはリスクが高いのでオススメしない。
・弁護士を交代するタイミングはケースによって様々である。

 

 

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【絶対に離婚したくない(13)】夫婦の間を取り持つ機関としてどのようなものがあるか?

2023.10.09更新

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1.夫婦の関係を取り持つ機関としてどのような機関があるか?


 私が相談に乗っておりますと、夫婦の関係を取り持つ機関としてどのような機関がありますか?というご相談を受けることもあります。
 そこで、今回は、夫婦の関係を取り持つ機関としてどのような機関があるのか、また、その機関の特徴等を解説します。

(1)どのような機関があるか?
 夫婦の関係を取り持つ機関としては、以下のようなものがあります。
  ①心療内科やカウンセラーによる夫婦カウンセリング
  ②民間ADR
  ③裁判所を利用した夫婦円満調停の利用

(2)その他役立つ機関等
 直接夫婦の間に入ってくれる機関とは異なるのですが、夫婦関係修復に役立てるという意味で、ご夫婦のどちらか一方だけが心療内科やカウンセリングなどを利用することもあります。
 例えば、あなたが怒りっぽいことをパートナーが気にかけているというような場合に、アンガーマネジメントの講習やカウンセリングを利用するとか、カッとなるとパートナーに手を挙げてしまい、それを自分で直すことが難しいという場合に、DV更生プログラムを利用するといった形の利用法です。

 

2.夫婦の関係を取り持つ機関を利用する前に


夫婦の関係を取り持つ機関の利用を考えているということは、夫婦二人での話し合いが上手く言っていないからだと思います。
確かに、夫婦二人だけの話し合いが上手くいかない場合、無理に二人での話し合いに固執すると余計に関係が悪化するということもあります。
しかし、安易に第三者の機関に頼ることで、逆に、先方が余計に頑なになってしまうということも考えられます。

そのため、私が、第三者の機関利用を相談された際には、「まずは、ご両親とか頼れる身内に間に入ってもらうとか」「相手配偶者の職場の先輩や友人とか、もっと話しやすい人に間に入ってもらったらどうでしょうか?」などとアドバイスすることが多いです。
後述の通り、第三者の機関は夫婦の関係を取り持つ専門知識等を有することも多いのですが、見方によっては「赤の他人」ですので、余計話しづらくなるということもあると思います。
そのため、より話しやすい相手として親族や知人・友人を間に入れることをオススメすることが多いのです。

 

3.注意点


 それぞれの機関の特徴等については、後述しますが、その前提として誤解されがちな点等について解説します。どの機関を利用するにあたっても、常に頭において置いて欲しい事項でもありますので、一種の「心構え」のようにお考えいただければ幸いです。

(1)自分の正当性を認めさせる場として利用しないこと
 たまにお話を聞いておりますと、自分の言っていることは絶対に正しいので、当該機関を利用して諭して欲しいといったことをおっしゃる方もいます。
 確かに、パートナーに問題となる行動や言動がある場合、それを修正していくことはある程度必要なのかもしれませんが、自分の正当性を認めさせるという視点が前面に出てしまいますと夫婦修復の道は遠のくことが多いと思います。
 夫婦の関係はお互いに妥協しながら成り立って行くものだと思いますので、「自分の正当性を認めさせる場」という発想は避けた方が良いと思います。

 

(2)第三者の機関は勝ち負け(どっちの言い分が正しいか)を決める場ではないこと
 夫婦喧嘩などになってしまいますと、過去の出来事について夫婦の認識が異なるということも往々にしてあると思います。
 そのような場合に、「白黒つけよう」とか「どっちの認識が正しいか決めてもらおう」と考えてしまうのはやむを得ない面がありますが、機関の利用目的として正解とは言い難いと思います。
 「あー言ったじゃないか」「これがなければこんなことになっていなかった」という一つ一つの事実について、どちらの言い分が正しいかを確定していく作業は、逆に夫婦の亀裂を表面化していきかねませんし、第三者の機関としても、どれが正しくてどれが間違っているのかを正確に確定していくことは不可能に近いと思います。
 そのため、当該機関を、勝ち負けを決める場とは考えずに利用した方が良いかと思います。

 

(3)相手のレッテル貼りのために利用しようとしないこと
 これもお話を聞いておりますと多いのですが、「夫は絶対にアスペルガーだと思うので、どうにかしてクリニックに正式な診断をして欲しいです」とか「インターネットで調べていると、妻は自己愛性人格障害のチェック項目にいくつも当てはまります。妻には自分の障害を認めて非を認めて欲しいです」といった相談を受けることがあります。
 もちろん、パートナー自身がメンタル不調を自覚し、積極的に治療・改善していきたいということでしたら、あなたとしてもその手助けをするのが良いと思います。また、パートナーのメンタル不調が原因でパートナー自身が仕事もおぼつかなくなるなどの現実的な支障を生じているようであれば、あなたからも心療内科の受診等を積極的に働きかけた方が良いと思います。
 しかし、それらのような状況にない場合、あなたの言い分がパートナーにとっては「決め付け」と映ってしまうことが多く、そのことが夫婦の亀裂になる可能性が高いと思います。
 そのため、第三者の機関の利用がくれぐれも相手のレッテル貼りのための利用にならないようにした方が良いと思います。

 

4.それぞれの機関の特徴等


 以下では、それぞれの機関の特徴、メリット・デメリットなどについて説明していきます。

(1)夫婦カウンセリングについて
 夫婦カウンセリングは、メンタルクリニックなどで実施されているものですが、夫婦が一緒にカウンセラーのカウンセリングを受けるというものです。カウンセラーの意見を取り入れながら、夫婦の抱える問題を解決していくものです。

ア)夫婦カウンセリングのメリット
 夫婦カウンセリングのメリットとしては以下のようなものがあります。
① メンタルケアになる(特に、夫婦のお互い又は片方が精神的に疲弊してしまっていたり、精神的な不調を抱えている場合には、有効性が期待できます)
② 自分自身のキャラクターや傾向を知って、今後の自分自身の生きやすさにつながる可能性がある。
③ パートナーのキャラクターや傾向を知って、対応方法などを検討することができる場合がある。
④ 紛争が激化していない場合には、取り組みやすい(パートナーの抵抗感は相対的に低い)
⑤ 夫婦同席の形で実施されることが多く、相手の意見などを直接把握しやすい

イ)夫婦カウンセリングのデメリット
夫婦カウンセリングのデメリットとしては以下のようなものがあります。
① 夫婦が互いに精神的な不調などを抱えていない場合には、必ずしもカウンセラーの意見が効果的ではないケースもある
② パートナーがカウンセラーの意見を受け入れないようなキャラクターの場合には、逆効果となるケースもある(カウンセラーを批判し始めてしまったり、2回目以降のカウンセリングに参加してくれなくなったりする)
③ 法律的なアドバイスを受けることが難しい。
④ カウンセラーとの相性がある。

(2)民間ADRについて
 どのようなADR機関があるかは、地域によって異なりますので、下記のリンクなども参考にして探してみてください。
※全国の認証ADR機関(法務省サイト)
 なお、「民間」ADRなどといいますと、株式会社などの営利企業が運営しているかのようにも聞こえますが、面会交流支援の第三者機関や弁護士会・司法書士会といった業界団体が運営していることが多いです。
 それぞれの運営機関が、担当の法律専門家を割り当てた上で、夫婦の言い分を聞き、夫婦関係等を調整していくのが、民間ADRとなります。

ア)民間ADRのメリット
 民間ADRのメリットとしては以下のようなものがあります。
① 法律の専門家が間に入ってくれることが多く法的な意味で安心して手続を進められることが多い
② 夜間や休日対応をしているところもある
③ 裁判所の家事調停ですと、どんなに頻度を多くしようとしても月1回以上にすることは難しいですが、民間ADRでは、より頻度を高頻度にしやすい

イ)民間ADRのデメリット
 民間ADRのデメリットとしては以下のようなものがあります。
① 民間ADRで話がまとまっても、その場で強制執行力を持たせる文書を作れない。
② 調停前置の対象にならないリスクがある。
③ 法律の専門家が間に入ることは安心感につながる反面、相手が身構えてしまうリスクがある。
 上記の①と②については、これだけでは分かりにくいと思いますので、多少細くして解説いたします。
 強制執行力というのは、特にお金の支払いなどで、相手が支払いをしない場合に、相手の職場の給料を差し押さえるといった効力を意味します。例えば、夫婦関係修復の一つの形として、いったんは別居するものと取り決め、その間の婚姻費用(生活費)を確実に毎月支払ってもらいたいという場合、民間ADRだけでは、婚姻費用支払いの確実性を持たせることが難しいです。
 そのような場合には、公正証書を作成していくことになるのですが、民間ADRとは別に公証役場に足を運んで調整するといった手数がかかることになります(公正証書作成のための手数料もかかります)。
 次に、調停前置というのは、例えば、離婚裁判を起こしたいという場合でも、いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停からスタートしなければならないという原則です。今回は夫婦関係を円満に調整したいということですので、離婚裁判などを視野に入れる必要はないのでしょうが、パートナーの言い分によっては離婚を決断しなければならないという場合、民間ADRの機関によっては、この「調停前置」が適用されないこともあります(調停前置に対応しているかは、各機関に直接問い合わせて確認してみてください)

(3)裁判所の家事調停について
 家事調停は、家庭裁判所において、調停委員2名と裁判官1名が入って、夫婦関係の調整等をしてくれる制度です。
なお、夫婦円満調停の概要は以下の私のブログも参考にして下さい。

※夫婦円満調停って何だ?

ア)家事調停のメリット
  ①調停で話がまとまった内容に強制力が認められる
  ②婚姻費用や面会交流については、調停で話がまとまらなかったときに、審判で決着を付けられる。
③調停委員長である裁判官の意見で話を促進し得る。
 上記の②と③について以下補足して解説します。
 上記の②については、夫婦の円満調停だけではなく、婚姻費用(生活費)を払ってもらいたいとか、お子様と会いたい(面会交流)といったトピックが問題になっている場合、どうしても夫婦の意見がまとまらないということもあります。
 そう言った場合には、調停を担当していた裁判官がそのまま担当として、手続きを審判という手続きに移行した上で、結論を出してくれるということができます(これを審判と言います)。
 上記の③は、上記の②に似たようなお話なのですが、婚姻費用や面会交流について、調停の話し合いが順調にいかない場合に、裁判官(調停委員長)の考え方などを示すことで、お互いが譲歩して話をまとめられるというケースもあるということです。

イ)家事調停のデメリット
 家事調停のデメリットとして以下のようなものがあります。
①最近、家事調停が込み合っておりまして、良くて1か月に1回、ケースによっては、1か月半とか2か月に1回のペースになってしまうこともあり、間延びしてしまう面があります。
②裁判官や調停委員が間に入ってくれるのですが、逆に相手が身構えてしまうリスクがあります。

 

 

5.各機関の利用順序


 特に各機関の間で、利用の手順や順番があるわけではありません。
 ただ、夫婦カウンセリング、民間ADRと家事調停ですと、一般的には、夫婦カウンセリングが一番取り組みやすく、(他の機関に比べますと)夫婦の亀裂が比較的軽いケースで利用することが多いかと思います。
 他方で、民間ADRや家事調停は、ご夫婦の一方が、離婚した場合の条件や法律的な整理も視野に入れていることも多く、その意味で、夫婦の亀裂が比較的重いケースが多いかと思います。
 そのため、通常は、夫婦カウンセリングから始めて、どうしてもうまくいかない時に、民間ADRや家事調停を考えてみるという手順がオーソドックスかと思います。

 

 

6.弁護士としては、夫婦カウンセリングまでにとどめておくことをオススメする


 これは皆様捉え方が異なるのですが、民間ADRや家事調停と言いますと、「そんなに大ごとになったのか」と感じる方は非常に多いです。
 このことは裏を返しますと、夫婦の間で深刻な問題・紛争を抱えているということを意味することになってしまいます。
 また、民間ADRや家事調停に参加するということになりますと、かなり身構えてしまう方も多いです。
 そのため、私は、どうしても夫婦同士での話し合いが難しい場合には、お互いの親族等を間に入れることを考え、それでも難しい場合には、夫婦カウンセリングを考えてみるという手順で進め、極力、夫婦カウンセリングのところでとめておいた方が良いと考えています。

 

 

6.まとめ


・夫婦の間に入ってくれる機関としては、夫婦カウンセリング、民間ADRや家事調停などがある。
・夫婦関係を改善するために、夫婦の一方だけがカウンセリングなどを受ける時もある。
・第三者の機関を利用する前に、親族等に間に入ってもらうということを考えてみた方が良い。
・第三者の機関を利用する場合、自分の意見を認めさせるとか、相手の非を認めさせるといった目的のために利用するとうまくいかないことが多い。
・第三者の機関には機関ごとに特徴がある。
・特に利用の順序があるわけではないが、第三者の機関としては、まず最初に夫婦カウンセリングを検討することが多い印象である。
・弁護士としては、夫婦修復のためには夫婦カウンセリングまでにとどめておくことをオススメすることが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(64)―夫はどうして「離婚したくない」などと主張するのか?

2023.10.02更新

弁護士秦
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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫は、いまだに「離婚はしたくない」と言っているが、こんなことはあるのか?


 実際、私が担当した事件ですと、夫が監護者指定事件を起こしながら、夫婦関係についてはヨリを戻したいと言ってくる夫はかなりの数います。
 そのため、私の感覚で申しますと、「そんなに特殊な話ではありません」という回答になります。

 

 

3.夫の監護者指定審判申立書を読む限り、妻への攻撃ばかりなんですが…


 夫の監護者指定審判申立書を見ますと、どれだけ夫が育児に関わってきたのか、逆に、あなたの育児が至らなかったのかを縷々述べていますので、読んでいて「これだけ私の事を攻撃しておいて、良く離婚したくないなんて言えたものだ」と感じる方もかなり多いです。
 しかも、夫の言い分が正確な事実でしたらまだしも、虚偽や誇張が多いため、一層妻側の不信感が増すというケースは多いです。

 

 

4.夫は何を意図しているのか?


 私が実際に担当した事件での夫側の様子を見ていると、いくつかのパターンがありますので、以下の通り整理します。

(1)【パターン1】こちらが主張している離婚理由を全く理解していない・理解しようともしない。
 監護者指定事件で争っている場合、こちらからは平行して離婚調停を申し立てるなどして対応しているケースも多いです。
 その場合、こちらからは離婚したい理由をしっかりと伝えているのですが、夫側が全く理解していない・理解しようともしないということもあります。
 極端なケースですと、夫側から「こちらが妻から嫌われる理由がない」とか「どうして離婚と言われるのかがよく分からない」という主張がなされることすらあります。

 そのため、夫側は、「監護者指定事件で争いはするけれども、妻と別れたいわけではないんです」などと主張してくるのです。
 また、このような夫がよく口にするフレーズは「自分は暴力を振るったり、浮気をしたこともないので、後ろ指を指されるようなことは一切ない」とか「こんなことは他の家庭でもよくあることだと思いますので、これで離婚というのはおかしいと思います」といったものです。

(2)【パターン2】法律上の離婚原因がないことを証明したいというパターン
 どちらかというと、夫側の反応としては【パターン1】のケースの方が多いのですが、たまに、「法律上の離婚原因がないことを証明したい」と言い出す夫もいます(【パターン2】のケース)。
 要するに、離婚裁判などで、自分に非がないことをしっかりと証明したいというパターンでして、実際には夫婦の今後というよりも、夫自身の正当性を証明することを重視しているのです。
 特に自身のキャリアなどを重要視する夫ですと、「これまでの婚姻生活で過ちを犯していないことを証明したい」という考えを持つことが多いようです。

(3)【パターン3】他の離婚条件の話を進めたくない
 このようなパターンも相当数あるのですが、夫側としても、あなたの様子などを踏まえて、内心では、離婚は避けられないと感じていても、離婚に応じてしまうと親権や養育費・財産分与といった議論をスタートしなくてはいけなくなるので、このような議論をしたくないがために、「離婚したくない」と言ってくるのです。
 夫側も内心では「離婚やむなし」と思ってはいますので、離婚裁判になる前に夫側が離婚には応じて来たり、離婚裁判になった直後から、「離婚は争いません」と言ってくることも多いです。

(4)【パターン4】単純に寂しい
 上記の【パターン1】から【パターン3】と複合して夫側が述べてくることも多いのですが、お子様もいる生活だとにぎやかだったのが、急に別居で家庭内があまりに静かで「やりきれない」「寂しい」というパターンです。
 このような一人だけの生活は「どうしてもやりきれない」という感情が強いと、今後の離婚についても長期化することも多いです。

 

 

5.こちらは粛々と手続きを進めていく他ない


 夫が上記のように離婚したくないと述べたとしても、こちらは離婚の意思が固いことが多いと思いますので、粛々と手続きを進めていくしかありません。
 ただ、夫側が真剣に「離婚する理由が分からない」と考えている場合には、最後の最後までこちらが夫を嫌悪していることは伝わらないというケースもあります(その場合には、最終的に離婚裁判の判決で離婚を決めてもらうことになります)

 

 

6.まとめ


・夫側が監護者指定事件を起こしつつ「離婚したくない」と述べてくるケースはそれほど珍しい話ではない。
・夫側は監護者指定事件の中でこちらのことを積極的に攻撃しているが、それと離婚するかどうかは別個の問題だと捉えている。
・夫の「離婚したくない」は、本当に「離婚すべき理由が分からない」というケースもあれば、内心離婚は避けられないと思いながらも、今は離婚に向けて話し合いたくないというケースもある。
・こちらは、夫の意思はどうあれ粛々と手続きを進めていくしかない。

 

 

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