離婚問題

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(46)ー子供に手をあげてしまったのだが、敗訴確定なのか?

2023.03.20更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.私は子供に手をあげてしまったので、もう許されないのでしょうか?


 どんな理由があろうとお子様に対して手をあげてしまうことは、決して望ましいものではありません。
 ただ、お子様を傷つけたくて暴力を振るうというケースはむしろ稀で、やむを得ない事情や状況等を伴うことも多いです。
 暴力を振るってしまったという事情は、こちらにとってかなり不利な事情であることは間違いがありませんが、それでもケースによっては戦い方はありますので、諦めずに対応していく必要があります。

 

 

3.どのような作戦で臨むのか


 このようなケースでの対策は大きく3つあります。一つ目が①監護実績等、こちらに有利な点をクローズアップするという作戦、二つ目が②暴力の悪影響を最小限に抑える作戦、3つ目が③改善としてどのようなことをしているのかという作戦になります。
 具体的な対策は、事案や状況によって大きく違ってくるのですが、概要を以下の通り解説します。

 

 

4.【作戦1】こちらに有利なところ(特に「監護実績」)で優位に立つ


 暴力という事情は、こちらにとって不利な事情ですが、監護者の指定は、暴力という一つの事情だけで決まるわけではありません。特に、過去の監護実績については、裁判所も重要視する項目ですので、この「監護実績」で優位に立てるのでしたら、優位に立てるだけの必要十分な資料を提出して行くことになります。
 要するにこれまでの子育てをこちらが頑張って担ってきたということを証拠とともに提出して行くのです(暴力という事情がこちらにマイナスに働いてしまっていますので、そのマイナスを他の項目のプラスで取り返していくというようにイメージして頂くと分かりやすいかもしれません)。

 

 

5.【作戦2】暴力の悪影響を最小限に抑える


 暴力の悪影響を最小限に抑える作戦というのは、暴力に至る経緯にやむを得ない事情があったとか、暴力の態様等、こちらがこれ以上悪く見られないようにしっかりと説明するということです。
 夫側は、こちらの暴力について、強く主張してくると思いますので、そんなに日頃から暴力を振るっていないとか、むしろ夫が育児に無関心だったのでストレスが限界まで貯まって暴力を振るってしまったとか、詳しく事情を説明していくのです。
 暴力の悪影響を最小限に抑えていくためのキーポイントになるのは大きく以下の点です。

① 暴力の態様や強度

② 怪我の有無・程度

③ 暴力の頻度

④ その経緯

⑤ その動機

⑥ 暴力がお子様に与えた影響の程度

⑦ あなた自身の反省の程度

 これらのポイントの中から、自身に有利なものを徹底的に探して、指摘していく作業が重要です。そのことに加えて、そのような指摘に裏付け等があるようであれば、しっかりと裏付けの提出をしていく必要があります(例えば、夫側とのLINEやメールのやり取り等)

 

 

6.【作戦3】改善計画の作成


 お子様への暴力について深く反省した上で、再発防止のためにどのようなことをしていくのかの計画を立てるということです。
 例えば、①アンガーマネジメントの講習やカウンセリング等を受けて、突発的に感情的にならないよう努力していくとか、②今後のお子様の育児等にあたっては、ご実家のご両親にも同居してもらって、ご両親にも監督してもらうといったことが考えられます。

 

 

7.早めに弁護士を見付けて依頼すること


 あなたがお子様に暴力を振るってしまったという事情は、かなり不利な事情になりますので、これを打ち消すだけの主張、証拠集めを早急に実施する必要があります。その際には、弁護士の適切な助力がないと対応が難しいと思いますので、早めに信頼できる弁護士を見付け、準備していくようにして下さい。

 

 

8,まとめ


・暴力を振るってしまったという事情は、こちらにかなり不利な事情ではあるが、ケースによって戦いようはある。
・大きな作戦は、①他の項目で優位に立つ、②暴力の悪影響を最小限に抑える、③しっかりとした改善計画を立てるということである。
・難しいケースになると思うので、早めに弁護士を見付けて依頼した方が良い。

 

 

関連記事


>【弁護士秦の解決事例】モラハラ夫から突如起こされた監護者指定審判で勝訴したケース

>>【まとめサイト】監護者指定事件・総覧<<

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(2)ー妻側の勝率は?

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(3)ー夫はどういうつもりでこのような手続きを取ってきたのか?

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(5)ー監護者として指定されるための6個のポイント

>弁護士秦のモラハラ・DV離婚総合サイトはこちら!

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力フォームで簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号
【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(45)ー子供が「パパとママ3人で暮らしたい」と言いそうだが、大丈夫か?

2023.03.13更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.お子様の意向確認


 監護者指定事件では、お子様が就学年齢以上の場合には、その意向確認を実施するケースが大半で、就学年齢未満の場合でも、お子様の理解力によっては、その意向確認を実施するケースも多々見受けられます。
 お子様の意向確認は、まだ年齢が小さい子の場合には、家庭訪問時にご自宅で行うこともありますが、年齢が上がっていくにつれて、裁判所の一室で行うことが多いです。
 このような意向確認は、家庭裁判所調査官が行います。
 お子様の年齢が小さい場合、過去の経緯等について詳しく事実確認をすることはほとんどないのですが、現在の生活についてどう考えているのか、今後の生活についてどうしたいのかといったことは質問することが多いです。
 そういった時に、お子様の口から「パパとママ家族3人で暮らしたい」という言葉が出ることもあります。

 

 

3.こういう発言って多いの?


 あなたにとって良き夫でなかったとしても、お子様にとっては良き父親であるということもあります。
 そのため、お子様が素直な気持ちとして家族全員で暮らしたいと主張することはやむを得ないことだとも言えます。
 また、私もこのような仕事をしていますと、お子様が家族全員で暮らしたいという意見を述べることも相当数あります(全体的な傾向としては、お子様の年齢が小さい場合の方が、お子様がこのような意見を述べやすいように感じます)。

 

 

4.そのことで直ちに夫に有利にはならない


 このようなお子様の発言があると、夫側は、妻であるあなたよりも夫の方がお子様の意思に沿っていると主張してくることが多いです。
 つまり、夫は妻との復縁、家族全員での暮らしを希望しており、子どもも同じ気持ちである、これに対して、妻だけが、夫とバラバラの生活を希望しているというように主張してくるのです。
 ただ、あなた自身が夫が待つ自宅に戻る意思が全くないことを裁判所に伝えると、裁判所としても、家族全員での暮らしは難しいという前提で、夫と妻どちらが監護者としてふさわしいかを判断して行くことになりますから、夫の希望と子供の希望が合致するからと言って、夫側に有利にはなりません。

 

 

5.面会交流への対応


 上記のようなお子様の発言は、夫に対する親しみ等を表現しているものとも言えますので、お子様が夫との面会交流を希望しているような場合には、極力、そのようなお子様の意思は尊重した方がプラスになります。
 いざ面会交流させるとなると様々に検討しなければならない点があるのですが、お子様が希望するのであれば、交流を実現する方向で検討したほうが良いと思います。

 

 

6.まとめ


・家庭裁判所調査官によるお子様の意向確認の中で今後の生活の希望も尋ねることは多い。
・お子様が家族全員での生活を希望するケースは相当数ある。
・夫側とお子様の意向が合致するからと言って、夫側に有利になるわけではない。
・ただ、お子様が父親との面会交流を希望するようであれば、実現した方がプラスに働く。

 

 

関連記事


>【弁護士秦の解決事例】モラハラ夫から突如起こされた監護者指定審判で勝訴したケース

>>【まとめサイト】監護者指定事件・総覧<<

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(2)ー妻側の勝率は?

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(3)ー夫はどういうつもりでこのような手続きを取ってきたのか?

>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(5)ー監護者として指定されるための6個のポイント

>弁護士秦のモラハラ・DV離婚総合サイトはこちら!

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力フォームで簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号
【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

entryの検索

カテゴリ

弁護士 秦真太郎 -雨宮眞也法律事務所- 受付時間 9:30~18:00 定休日 土日・祝日 住所 東京都中央区日本橋兜町1-10日証館3階

※事前予約があれば平日夜間(22時まで)も対応可能です。