【絶対に夫に親権を渡したくない(9)】こちらの体調はどこまで考慮されるか?
2022.01.31更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。
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1.離婚の際に親権のことが一番心配
夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
今回は親権のことで、特に、こちら(妻側)の体調面にスポットライトを当てて解説していきます。
2.妻側の体調はどこまで重視されるか?
(1)旦那側からどのような言い分が述べられるのか?
旦那側が親権にこだわりを見せる理由は様々なのですが、親権を争っている以上、その理由付けをしていく必要があります。簡単に言いますと、旦那のもとでお子様を育てたほうが良いという理由付けをしなくてはいけませんので、裏を返すと「妻のところで育てていくことは不適当だ」という主張を展開してくるのです。
概要ですが以下のような主張がなされたりします。
① 同居中から妻は飲酒量が多く、酔ってしまうと子供の面倒がおろそかになっていた
② 妻は疲労のためかボーっとしていることが多く、調理している食材を焦がしてしまったり、キッチンでボヤ騒ぎになってしまったこともある
③ 妻は持病持ちで、症状が出ているときは数日寝込んでしまうこともあったので、その間子供の面倒を見られるはずがない
④ 妻は精神疾患を患っており、感情の制御が利かないので、子供にきつく当たっていないか心配である
⑤ 妻は元々朝が弱く、専業主婦をしているときから朝食の準備をしたことがないし、子供の通学準備等をしたことすらも一切ないくらいである
⑥ 妻は元々体が弱く、そのため、一度も社会に出て働いた経験がないので、子供を一人で育てていけるとは思えない。
上記をご覧いただくと分かりますように、半ば言いがかりに近いような主張もありますが、裁判所が、あなたの体調面で不安を感じてしまいますと不利に扱われる可能性もありますので、十分注意する必要があります。
(2)体調面はどこまで重視されるか?
大まかに言いますと、あなたの体調面で医師の正式な診断が出ているかどうか、その症状が日常生活にどの程度の支障を及ぼすのかが大きなポイントになります。
逆に言いますと、あなたが日常生活で多少体調を崩すことがあったとしても、「病院に行くほどではない」ということであれば、体調面が親権争いで悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
他方で、医師の診断が出ており、現在も通院中であるといった場合には、慎重に臨む必要になります。特に裁判所の手続きの中で、裁判所側からあなたのカルテの開示を求められるような場合には、裁判所もあなたの体調について不安を持っているという証拠ですので、必要に応じてカルテの詳細をしっかりと説明するなど、十分な準備を整えていく必要があります。
(3)体調不安を払しょくするには、働いてしまうことが端的ではある
あなたが夫と離婚しお子様との生活を希望している場合には、遅かれ早かれ仕事に就くことが必要になってくると思います。
そして、例えばフルタイムで週5日働いているようであれば、裁判所もあなたの体調について不安に感じることは少ないと思います。
ただ、お子様がまだ幼いような場合には、とても週5日も働くことができないということも多いでしょうし、「働く」ということを優先した結果、お子様の育児がおろそかになってしまっては本末転倒です。
また、専業主婦をしていた期間が長い場合には、急に週5日も働くということは一般的に難易度が高く、長続きしないこともあります。そのことであなた自身が大きく体調を崩してしまっては元も子もありません。
そのため、実際に働き始めるということは、体調不安を払しょくする切り札になり得るものの、お子様の年齢や状況、あなた自身の体調も考慮しながら慎重に検討する必要があります。
(4)夫からのモラハラ等が体調不良の原因だという主張は有効か?
私は、親権争いの事件だけではなく、モラハラ・DV離婚のケースも数多く手がけますので、「夫と一緒にいると滅入ってしまうが、別居して生活するとかなり安心して体調も良くなってきています」とおっしゃる方も多いです。
ただ、あなたの主治医が、あなたの体調不良の原因を夫からのモラハラと明確に断言してくれれば良いのですが、なかなかそこまでは断言してくれないケースの方が多いと思います。
そうすると、いくらモラハラ被害を数多く訴えても、そのことが体調不良につながっているということを裁判所に理解してもらうことは難しいと思います。
もちろん、そのモラハラの内容が暴力にまで発展しているなど程度が重いケースであれば、あなたの体調不良に直接関係すると判断される可能性も高いのですが、そこまでに至らないような場合には、あまり過去の経緯を体調面と絡めて主張することは有効ではないかもしれません。
3.神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切
旦那側も親権獲得にあたって決定打になるような言い分がない場合には、こちらの体調面を執拗に責めてくるケースもあります。ただ、その内容が言いがかりに近いような内容の場合、そのことに神経質になり過ぎてしまいますと、余計にこちらは体調を崩してしまうと思います。
詳しい内容は弁護士にご相談されたほうが良いとは思いますが、相談している弁護士から「旦那側の言い分は言いがかりに近いですよ」といったお話があるようなら、あまり夫側の言い分を真に受けずに、粛々と手続きを進めていったほうが良いと思います。
4.まとめ
・あなたの体調面が重要視されるかは、あなたの体調について正式な医師の診断が出ているかどうかが重要である。
・正式な病名がついているような場合には、その症状が日常生活にどのような支障を及ぼしているのかという点も重要になってくる。
・体調不安を払しょくするには、あなたが働き始めてしまうのが端的だが、お子様の年齢や状況、あなたの体調面にも十分配慮する必要がある。
・あなたの体調面に絡めて同居中のモラハラを主張することは、そのモラハラ等が重い場合には有効だが、そうではない場合有効とは言いにくい。
・神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切である。
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