財産分与

5年後退職予定の旦那から退職金分を考慮して財産分与したケース

2016.07.25更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.退職金は財産分与で見落としがちな財産


 

 財産分与においては、相手の財産の在処(ありか)を事前に把握しておくことが重要になります。

 離婚で夫婦間の対立が激しくなりますと旦那様は少しでも財産を分けたくないと思い、財産を隠す傾向があるからです。

 

ただ、相手の財産の在処の把握と言いますと、通常の方は、旦那様の預金がどこにあるのか、株式をやっているがどこの証券会社でやっているのかといった点に目が行きがちですが、退職金を忘れてはいけません。

 

一口に退職金と言いましても、既に旦那様が定年退職して退職金を既に受け取っているという場合には、預金残高等に退職金が含まれますので、預金残高を考慮すれば実質退職金分が考慮されることになります。

 

他方、まだご夫婦ともに若く、退職まで30年以上あると言った場合には、定年退職という事情は不確実性が高いため、退職金は財産分与の対象としないことが多いように見受けられます。

 

2.私が担当した事件


 

・ご依頼者様:50歳代後半の女性(Oさんとします)

・ご依頼内容:旦那様が十分な生活費を渡さないので離婚したい、ついてはできるだけ多くの財産分与を受けたいとのご依頼内容でした。

 

 なお、この事件の旦那様:50歳代後半、お子様:既に成人されたお子様お二人、婚姻期間:25年程度、家庭環境:ご依頼時別居中というケースでした。

 

3.私の弁護活動


 

 Oさんのお話では、旦那様が婚姻期間中生活費を渡さなかったとのことでしたので、婚姻期間のうちいつ頃までいくらを渡していて、いつ頃から生活費を渡さなくなったのか、また、生活費を渡さなくなったきっかけについて詳しくお話を伺いました。

 

 このようなOさんのお話を踏まえて、こちら側の離婚条件をまとめ、旦那様宛に通知を送りました。

 なお、この通知においては、旦那様の財産の詳しい残高等が分かりませんでしたので、旦那様の財産を開示するように要求する内容を盛り込みました。

 

 この通知を受け取った旦那様は、直ぐに弁護士に依頼をし、旦那様側から離婚調停を起こしてきました。

 

3.退職金についての言い分


 

(1)こちらの言い分

 当方としては、旦那様の定年退職まで5年しかないため、当然退職金を財産分与で考慮すべきことを主張しました。

 

 考慮する金額については、将来定年退職することを前提としたうえで、勤続期間の中でも婚姻期間と重複する部分を考慮して算出するように主張しました。

 

 今回のケースでの具体的な数字は差し支えますが、分かりやすくサンプルとして数字をあてはめて説明しますと以下の通りになります。

 ①定年退職した場合の退職金が1000万円と仮定します。

 ②定年退職までの勤続期間を20年

 ③婚姻期間と重複する期間を15年

 ④具体的考慮額は、1000万円÷20年×15年=750万円

(※この金額はあくまでサンプルとしての参考額で、今回のケースでの金額とは異なります)

と言った計算方法になります。

 

 本来は、退職金を実際に受け取るのは5年後の話になりますので、将来利息分を差し引くのが一般的なのですが、調停手続中と言うこともありましたので、将来利息分を差し引かずに提案を行いました。

 

(2)相手の言い分

 旦那様は、以下のような主張を展開してきました。

 

定年退職まで5年もの年月があり、実際に定年退職するかの確実性がないため、そもそも、退職金を財産分与で考慮すべきではない。

不動産業社に勤務しており、この業界は人の移り変わりが激しく、定年退職する可能性は極めて低い、そのため、退職金を考慮するにしても、中途退職を前提として計算すべきである。

 

4.最終的にはこちらの計算より一部減額して調停成立


 

 Oさんともよく相談して結論を出しましたが、最終的には、こちらの計算する金額と先方が計算する金額の中間値に近い数字で合意しました。

 

 先方が主張するように退職金を一切考慮しないという案は応じられないと言うことでこちらも強く主張したのですが、考慮する退職金の金額については、退職が5年後という一定の不確実性もありましたので、多少減額して折り合う形にしました。

 

5.退職金考慮の難しい点


 

 退職金は支給されれば、それなりの金額になるのですが、離婚するのは退職前ですので、計算上退職金を財産分与で考慮するにしても、旦那様がそのお金をどのように工面するのかという問題が生じます。

 

 この問題を解決するために、「旦那様が将来退職金をもらった段階で、分配を受ける」という方法もありますが、これでは、旦那様が退職したことを黙っていれば、こちら側から退職金分の支払いを請求することが難しくなってしまいます。

 

 そのため、やはり、離婚する時に退職金分も考慮すべきですが、あまり高額に固執しますと、旦那様の手元資金を超えてしまい、話し合いがまとまらない虞があります。

 この場合には、離婚裁判に移行するという方法もありますが、長期戦になってしまいますので、手続の進捗状況やご依頼者様のご意向を踏まえて最終決断することになります。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【面会交流】行事参加について明記したケース

2016.07.18更新

 

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1.面会交流とは?


 

 面会交流(めんかいこうりゅう)という言葉は普段耳にしないと思いますが、ご夫婦(または元夫婦)の一方がお子様を育てている場合に、他方配偶者がそのお子様と会って交流することを意味します。以前は「面接交渉」という用語を用いることが多かったのですが、最近は「面会交流」という用語を用いるのが一般的です。

 

例えば、夫婦の折り合いが悪くなって、奥様がお子様と一緒にご実家に別居しているときに、旦那様がそのお子様と会って話をしたり、一緒に遊んだりすること等を「面会交流」と呼びます。

 面会交流は、ご夫婦が別居されている時にも問題になりますが、離婚した後の面会交流の方が問題は深刻化しやすい傾向にあると言えます。

 

2.私が担当した事件


 

・ご依頼者様:30歳代後半の女性(Nさんとします)

・ご依頼内容:旦那様からの暴言がひどいので離婚したいが、親権はこちらが確実に取得したい、面会交流についてもきちんと条件を取り決めて離婚したいとのご依頼内容でした。

 

 なお、この事件の旦那様:30歳代後半、お子様:保育園に通うご長男のお一人、婚姻期間:5年以上10年未満、家庭環境:ご依頼時別居中というケースでした。

 

3.私の弁護活動


 

 Nさんのお話では、旦那様が直接の暴力はしないものの、暴言がヒドイとのお話しでしたので、どのようなシチュエーションでどのような暴言を発したのか、頻度はどの程度だったのかと言った点をしっかりとNさんからお伺いしました。

 

 このような話を踏まえて離婚の希望条件を整え、旦那様宛に通知を送りました。この通知は、内容証明郵便という郵便方法でお送りしました。

 

 すると、旦那様も弁護士を立ててきて、弁護士同士での話し合いが行われましたが、親権の帰属について折り合いがつかず、家庭裁判所の調停手続で話し合いが行われることになりました。

 

4.調停手続での旦那様の言い分


 

 調停手続で、旦那様は、自分が親権者にふさわしいと言うことを主張すると同時に、ご長男様に会えていないということを強くクローズアップしてきました。

 この点は、旦那様が主張するとおりで、Nさんの希望もあってご長男様との面会交流は禁止していました。

 

 旦那様は、調停委員に対して「今ですら長男と自由に会えることができないのだから、離婚後はもっと会えなくなる。これでは長男があまりに不憫である」といった形でクローズアップしてきたのです。また「このように長男の自由を束縛するような女性に親権を委ねることはできない」などと主張してきました。

 

 これに対しては、Nさんとしても旦那様との面会交流をさせてこなかったのは、別居後長男が生活に馴染むまでの間は面会交流を控えさせたかったからであっても、ずっと面会交流させないというわけではないと言うことを主張しました。

 そして、現実にも調停手続中の面会交流を認めるようにしました。

 

5.面会交流での行事参加


 

 このようにして調停期日間の面会交流を認めつつ、離婚調停手続を進めていったのですが、その中で悩ましかったのが、行事参加の問題でした。

 

 Nさんは、旦那様からの暴言がひどいので転園したこと、旦那様が迎えに来ても長男を引き渡さないように予め保育園に話をしていましたので、旦那様が積極的に保育園の行事に参加することは好ましくありませんでした。

 

 そのため、離婚成立までは旦那様の保育園行事への参加は控えてもらい、その代わり、離婚後の行事参加については柔軟に対応する旨を明示する形にしました。

 

6.調停成立


 

 調停期日を繰り返していくにあたり、旦那様もお子様と直接会って話をするなどして親権については最終的に諦め、Nさんを親権者とする形での調停が成立しました。

 

 この調停の際には、上記の通り行事参加を認める旨を明記しました。

 具体的な調停条項は以下の通りです。

「相手方は、申立人に対し、申立人が2ヶ月に1回程度長男と面会交流することを認める。面会交流の日時、場所、方法等の具体的な内容については、当事者双方で事前に協議して定める。

 申立人は、長男が通園する保育園の、運動会、発表会、父兄参観、遠足、夏祭り、卒園式等の行事(保育園により父親の参加が認められているものに限る。)に参加することができる。」

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

面会交流の回数を明記せずに離婚したケース

2016.07.11更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.一般的に面会交流の回数ってどのくらい?


 

(1)離婚成立前

離婚成立前で、離婚事件が家庭裁判所の調停手続に入っている場合、旦那様との面会交流の回数は、調停期日間に1回ずつというケースが多いように思われます。

 

 例えばですが、4月10日に第1回調停、5月15日に第2回調停、6月22日に第3回調停が開催されるという場合、2回目の調停日よりも前の4月30日に1回、第3回調停の前の6月7日に1回といった頻度で面会交流させるということになります。第4回目以降の調停期日についても同様になります。

 

 もちろん、調停手続は、裁判所を利用しますが、お互いの話し合いを基本とする手続になりますので、面会交流を一切拒否するというケースもあります。

 

(2)離婚成立後

 離婚問題の解決の仕方としては、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。いずれにしましても、弁護士が間に入っている場合には、面会交流の頻度についても取り決めるケースが多いです。

 

 その頻度ですが、一概に「○ヶ月に1回」と断定はできないのですが、私が取り扱ったケースを見ておりますと「1ヶ月に1回」か「2ヶ月に1回」という頻度に落ち着くことが多いように思われます。もちろん、旦那様が結婚生活中お子様に暴力をふるっていたと言った事情がある場合には、面会交流の取り決めをしないといった対応をすることもあります。そのため、最終的にはケースバイケースということになると思います。

ただし、お子様への暴力といった特別の事情がない限り、面会交流を一切認めないという形で離婚するケースは稀だと思います。

 

2.私が担当した事件


 

ご依頼者様:20歳代後半の女性(Lさんと言います)

ご依頼内容:旦那が浮気したので離婚を切り出したが、相手が応じる様子がないので、間に入って離婚問題を解決して欲しい、娘達は今の生活に慣れているので、極力面会交流させたくない、というご依頼内容でした。

 

なお、この事件の相手方:20歳代前半の男性、お子様:保育園に通う娘様お二人、婚姻期間:5年程度、ご家庭環境:ご依頼時別居中というケースでした。

 

3.私の弁護活動


 

私は早速、旦那様に対して、Lさんが希望する離婚の条件を記載した内容証明郵便を送付しました。2度ほど内容証明郵便をお送りしたのですが、全くお返事がなく、お電話も繋がりませんでしたので、家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てました。

 

4.旦那様の言い分


 

 旦那様は、内容証明郵便には返事をしなかったものの、家庭裁判所の調停手続には参加してきました。

 

 旦那様は、浮気を認めた上で、離婚にも応じるという姿勢でした。

 

 こちら側としては、旦那様が離婚を争ってくると予測していましたので、意外でしたが、こちらにとって有利な話ですので歓迎すべき話でした。

 ただ、旦那様は面会交流については、娘様が可愛いので、Lさんの許しが得られるなら面会交流をしたいということを話してきました。

 

5.Lさんの返答


 

 旦那様は浮気と同時に自宅を出て戻ってこなくなってしまったという経緯があり、旦那様の家出当初下の娘様が随分取り乱してしまったとのことでした。現在は下の娘様も落ち着きを取り戻しているものの、面会交流を実施することで下の娘様の情緒が不安定になることは避けたいとのことでした。

 また、Lさんは結婚生活中、旦那様から暴言を浴びせられることも多かったため、面会交流という形で旦那様と接触することは耐えられないとのことでした。

 

 このようなLさんの要望はストレートに調停委員に伝え、協力を求めました。

 

6.最終解決


 

 この事件では、旦那様が反省している姿勢は見せつつも、慰謝料や養育費を払えるだけの給料がないということで紛糾し、数回調停期日を重ねました。

 

 面会交流に関しては、Lさんの意向を踏まえ、面会交流の頻度を明記しない形で調停が成立しました。

 

具体的には、調停調書には「申立人は、相手方が前項記載の子らと面会することを認め、その日時・場所・方法については、子らの福祉に配慮し、当事者双方で協議して定める」と記載されました。

通常の場合「申立人は、相手方が前項記載の子らと月1回程度面会することを認め、その日時・場所・方法については、子らの福祉に配慮し、当事者双方で協議して定める」と記載されますので、違いがよく分かるかと思います。

 

このようにすることで1ヶ月に1回とか、2ヶ月に1回という形で面会交流させる義務を負いませんので、Lさんにとっては大きな負担軽減になります。

 

7.その後


 

この事件では、結局もと旦那様がLさんに対して面会交流を求めることはなく1年以上が経過したと言うことでした。

 

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