【コロナ離婚特集5】離婚までにかかる期間はどのくらい?
2020.04.15更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.やはり解決までにかかる期間はとても気になる
離婚にあたっては、親権を獲得できるのか、養育費や財産分与でいくらもらえるのか、慰謝料はもらえるのかどうか、といった点については、今後の生活に直結する問題なので、皆様の大きな関心事の一つだと思います。
そして、このような金銭面の問題に次いで、離婚の問題がどの程度の期間で解決するのかという点も重要な関心事だと思います。正式に離婚が成立するまでは、いわば中途半端な状態とも言えますので、このような状態から早く抜け出したいと考えるのは当然のことだと思います。
離婚の問題は、①協議離婚→協議離婚が上手く行かない場合に②調停離婚→どうしても調停離婚が上手く行かない場合に③裁判離婚という流れを踏みますので、最終解決が協議離婚で済むのか、調停離婚での解決なのか等手続に応じて、要する期間も異なってきます。
このような期間はケースによって様々なので一概には申し上げにくいのですが、各手続に応じてどの程度の期間を要するのかの目安と、どのような問題が争点になると長期化しやすいのかについて解説します。
2.協議離婚で解決する場合
協議離婚というのは、離婚届を役所に提出して解決する場合を言います。
たまに依頼者の中には、弁護士が間に入る場合には、協議離婚にはならない(調停離婚で手続を進める)と誤解されている方もいらっしゃいますが、基本的には、弁護士が間に入った場合にも、協議離婚による解決を目指すことが多いです。
では、協議離婚の場合、解決までにどの程度の期間を要するかというと、おおよそ2か月から6か月程度というのが一つの目安かと思われます。ただ、これもケースによりけりですので、一つの目安と考えて頂ければと思います。
通常、協議離婚で解決したという場合には、離婚条件について大きな対立はないことが多いのですが、協議離婚が長期化する傾向があるのは、緻密な離婚協議書を作成する場合や公正証書を作成する場合ではないかと思います。
特に養育費などの金銭の支払いに強制力を持たせたい場合には公正証書を作成する必要がありますが、公正証書を実際に作成するのは公証人になります。そのため、公正証書を作成する場合には、公証人との折衝や公証人に提出する資料なども必要になってくる関係で最終解決までの期間が延びる傾向にあります。
なお、令和2年4月現在緊急事態宣言が発令しておりますので、離婚協議のために夫側に私の法律事務所に来てもらうとか、離婚届にサインしてもらうために法律事務所に来てもらうということに夫側が難色を示す可能性もあり、そのことは事件解決の遅延要因になる可能性もあります(私自身は事務所にて打ち合わせを行うことは対応可能なのですが)。
3.調停離婚で解決する場合
前述の協議離婚が上手く行かない場合、調停手続で離婚を目指すことになります。
特に離婚協議をしていても、話がうまく進展しなさそうな場合には、早期に調停を申し立てるケースもあります。
調停での解決にどの程度の期間を要するかですが、これもケースによって千差万別なのですが、一般的にはどんなに早くとも3か月、長い場合には1年、または1年を超えることもあるという回答になると思います。
それでは、コロナ離婚の調停の場合、どのような問題で長期化しやすいのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。なお、私自身、令和2年4月現在、ダイレクトにコロナ不和のみを理由とする離婚問題を扱っているわけではありませんので、これまでの事件解決経験に基づいて予測して記載しております。この点は予めご了承ください。
①離婚するかどうかの部分、または離婚原因の部分で対立が激しい場合
夫側が「コロナは一過性の問題であるから、コロナが終息すれば元の家庭に戻る」とか「コロナウイルス感染の重要な局面だからこそ家族・夫婦で助け合わなければいけない」といった主張を展開してくる場合、離婚原因の部分での対立が激化して、調停の長期化要因になりそうです。
そのため、夫側からの上記のような反論をあらかじめ想定したうえで、コロナの問題になる前から、夫側にこのような問題があったとか、夫婦が不仲であったというエピソードもしっかりと整えておく必要があろうかと思います。実際にはコロナ不和が離婚の直接の引き金であったとしても、クローズアップするのはコロナ問題以前の出来事に絞り、相手を早期に諦めさせるということです。
②お子さんとの関係で嫌がらせをしてくる場合
夫が離婚には応じたとしても、渋々合意したと言うことが多いため、何かしらの形で嫌がらせをしたいと考えてくる人もいます。例えば、以下のような形になります。
・実際自分では育てられないと分かっているのに親権獲得を希望してくる。
・親権は争わないが、今後の監護計画を事細かに聞いてくる。
・頻繁な面会交流を要求してくる。
・しきりに学校行事や習い事の発表会への参加を要求してくる。
・養育費を出し渋る。
夫側から以下のような要望が出された場合には、長期化要因になりますが、どの程度期間が延びるかは、夫側がどこまで執拗に要求してくるのかにも大きく左右されます。
③財産分与の対象財産が多い場合、争点が多い場合
財産分与の対象財産が比較的少ない場合や、そもそも婚姻期間が短く財産分与の必要がない場合には、その分短期決着が見込めます。
他方で、財産が多い場合や、特有の争点が生じる場合には長期化要因になります。財産分与で争点となるケースというのは、①自宅購入時の頭金の金額・性質等に争いがある場合、②相手が一部の財産しか開示しない場合(対象財産の範囲に争いがある場合)、③婚姻前の財産の範囲や額に争いがある場合等になります。
特にコロナウイルスの問題で、夫側が退職を強いられたとか、減収になったというような場合には、今後の生活のことを考えて極力出費を控えてくるでしょうから、財産分与について抵抗してくる可能性が高まります。
④慰謝料が争点になる場合
コロナの件以外にも、浮気や暴力といった明確な慰謝料事由がある場合には、慰謝料請求も検討すべきということになります。
ただ、このような身勝手な行動をとる夫は通常自身の行動を正当化してくることが多いため、慰謝料を支払わないばかりか、こちらが慰謝料を請求してきたことそのものに不満をぶつけてくることもあります。
この慰謝料の問題で対立する場合も紛争が長期化する要因になります。
⑤今回のコロナウイルスの影響
今回のコロナウイルスに関わる緊急事態宣言によって、対象地域の家庭裁判所の4月中の調停期日は一斉に取り消しになりました。また、今後のコロナウイルスの感染拡大状況等を踏まえ、調停期日設定の体制にも影響が出ると見込まれます。具体的な影響として予測されますのは以下の通りです(これは、令和2年4月現在の情勢でして、今後変更があり得ます)。
①4月の調停期日が取り消されたので、再設定の期日が6月中に優先して指定される結果、新規調停の第1回調停日がさらに先になる可能性がある。
②ゴールデンウィーク後の感染拡大状況によっては、調停期日の指定は行うけれども1日に処理する調停の数を減らす可能性があり、その場合には、新規調停の第1回調停日がさらに後ずれしていく可能性がある。
③令和2年4月現在裁判所側は期日指定を行えないというスタンスなので、第1回調停期日の日程調整は「早くとも」ゴールデンウィーク明けになる。
④このように第1回調停期日の設定が遅延していくと、候補日が7月に突入する可能性も高く、そうなると裁判所の夏季休廷期間と重なると、さらなる遅延の可能性も出てくる。
このように今すぐに調停を申し立てても、第1回調停期日の設定に時間がかかるということが強く見込まれますので、調停手続き全体の遅延要因の一つになることは拭えません。
そのため、迅速なコロナ離婚を目指すのであれば、離婚調停ではなく、離婚協議に極力軸足を移して取り組んだ方が良いケースも相対的に増えていくのではないかと見込まれます。
4.裁判離婚で解決する場合
①裁判離婚に要する期間はどの程度か?
上記のような調停手続でも離婚が成立しない場合には、やむを得ず裁判を選択せざるを得ない場合もあります。
裁判に要する期間については、それこそ千差万別であって一概に申し上げることは非常に困難です。
ただ、裁判を申し立てる前に、既に離婚協議、離婚調停を経ているため、訴訟提起の段階で数か月は経っていることが多いと思います。そして、裁判そのものがスタートしても、さらに1年近い期間が経過することは覚悟しなければならないことが多いと思います。そのため、弁護士が事件に着手してからのトータル期間で見ますと、①裁判の申立前に既に数か月、②裁判スタート後に1年というイメージですと、1年数か月は覚悟しなければならないというイメージになると思います。
なお、離婚訴訟を起こすとなると、裁判で勝てるだけの離婚原因があるのかという点の検討も必要になります。
離婚を裏付けるだけの証拠が乏しいというケースですと、ある程度別居期間を稼ぐという観点から、多少訴訟提起の時期を遅らせるという場合もあります。そのため、調停が成立してからすぐに裁判を起こすのではなく、調停終了から裁判の申立までに一定期間を空ける場合もあるということです。
裁判離婚の場合、原則として相手も徹底的に争ってくるケースが多いため、各離婚条件について反論や証拠集めの労を要するというように考えた方が良いと思います。
②今回のコロナウイルスの影響
前述の調停同様、今回のコロナウイルスに関わる緊急事態宣言によって、対象地域の家庭裁判所の4月中の裁判期日も一斉に取り消しになりました。また、今後のコロナウイルスの感染拡大状況等を踏まえ、裁判期日設定の体制にも影響が出ると見込まれます。(これは、令和2年4月現在の情勢でして、今後変更があり得ます)。
これからコロナ離婚を考えているという場合には、今すぐ離婚裁判をするというケースはないでしょうから(少なくとも裁判をするには調停を経なければなりませんので)、直接関係しないケースの方が多いとは思いますが、現状の裁判所の状況としてご説明した次第です。
5.スピードよりも、「より良い解決」を!
たまに弁護士が間に入ったのだから早急に解決して欲しいという要望をお持ちの方もいらっしゃいますが、結論を急ぐあまりに十分納得できない結論で解決してしまうのでは本末転倒だと思います。
もちろん、離婚という問題を長期間抱えることは、それだけで心理的ストレスになると思いますので、早急な解決が望ましいことは間違いありません。
ただ、結論を急ぐあまりに不十分な内容で解決してしまうと、2年後、3年後に振り返ったときに後悔してしまうのではないかと思います。
そのため、解決を急ぎつつも、ご自身が納得いく解決を目指すことができればと考えております。
6.まとめ
・協議離婚はあまり長期化せずに解決できるケースが多い。
・ただ、協議離婚でも、離婚協議書に細かな内容を盛り込む場合や公正証書を作成する場合、長期化要因になることがある。
・調停離婚はいくつか長期化する項目があり、夫側の態度が大きく影響する。
・裁判離婚に発展した場合には、それなりの期間かかることを覚悟する必要がある。
・迅速な解決が望ましいが、迅速性よりも「より良い解決」の方が大事である。
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