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【こんな小さい子がいるから絶対離婚できない(8)】突如夫が家を出てしまったーそんな時の対処法9選

2025.06.23更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。

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【こんな小さい子がいるから、絶対に離婚できない】


私がご相談を受けておりますと、このようにおっしゃられる奥様は相当数いらっしゃいます。

それでは、どのような心境で、このようにおっしゃられるのでしょうか。私が直接お話を聞いている中でお聞きした内容は以下のようなものです。

 

①子供にとって両親が揃っていた方が良いに決まっている

②親の事情で片親というのは子供が不憫

③子供が成長した時に、友達から揶揄されたりいじめられたりと不利益が生じそう

④シングルマザーだと、私が体調を崩したときなどに大変

⑤片親だと将来の選択肢が狭まる(幼稚園入園や私立小学校への入学等)

⑥私の収入は少ないので、夫の収入なしでの生活は経済的に厳しい

⑦子供が生まれた途端に離婚なんて、夫は無責任

⑧子供のことを第1に考えられるなら簡単に「離婚」なんて言えないはず

⑨世間体、周囲の目が気になる

 

このようなご意見は、全てが法律上そのまま正しいというわけでもないのですが、「ご心情はお察しして余りある」というのが実情です。

 以下では、①お子様が乳幼児(概ね0歳から3歳)で、②あなたが奥様(旦那様側ではない)というケースを前提として、以下の通り解説していきます。

 

 

1.これは「同居義務」違反や「悪意の遺棄」では?


(1)同居義務違反か?

  法律で夫婦に同居義務があることは、あなたも何かで聞いたことがあるかもしれません。そこで、まずは、この点について整理していきます。

 民法752条には、「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。」と規定されておりまして、夫婦の同居義務を定めています。

 唐突に夫が家を出る行為は、この同居義務に違反するようにも見えます。

 

 ただ、同居拒否に正当な理由がある場合には、同居義務違反の責任は発生しないものとされていますし、そもそも、裁判所の命令をもってしても、同居義務を強制することはできないと解釈されています。現在の民法のスタンスは、法律は夫婦や家庭の問題に極力立ち入るべきではない、つまり、家庭の問題は当人同士の話し合い等に委ねるべきであって、強制に馴染まないというスタンスを取っているため、このような解釈が導かれてしまうのです。

 

 そのため、同居義務違反を根拠として、夫側に同居を強制するとか、ペナルティーを課すと言うことは非常に難しいです。

 

 (2)悪意の遺棄か?

 「悪意の遺棄」というのは、正当な理由なく同居義務や扶助義務に違反して婚姻生活を廃絶しようとすることを意味します。

 一家の大黒柱である夫が勝手に出て行ってろくに生活費を渡さないという状況ですと「悪意の遺棄ではないか?」とおっしゃる方もいるのですが、実際にはそう単純ではありません。

 「悪意の遺棄」は、「不貞行為」などと並ぶ離婚裁判事由でして、非常に悪質なケースでない限り「悪意の遺棄」には該当しません。

 

 以上のように、夫側を「同居義務違反だ」とか「悪意の遺棄だ」と責めていくことが現実的には難しいという前提で、以下解説していきます。

 

 

2.まずは場合分けが必要


 突如夫が家を出て行ってしまったケースは、大きく①不倫が強く疑われるケースと②不倫の可能性が低いケースの2つに場合分けができます。

 あなたのケースが、①不倫が強く疑われるケースと②不倫の可能性が低いケースのどちらなのかによって対応の仕方が大きく変わりますので、以下、場合分けして解説していきます。

 

 

3.【ケース1】不倫が強く疑われるケースにおける対処法


【そもそも、「不倫が強く疑われるケース」とは?】

 まず誤解がないように「不倫が強く疑われるケース」というのはどういうケースを指すのかについて、解説していきます。代表的な例を挙げると以下のようなものになります。

 ①同居中に夫が不貞行為をしており、夫も不貞を認めていた。

 ②同居中に夫が不貞行為をしており、夫ははっきりと認めなかったけれども、その時の不貞の確たる証拠がある。

 ③同居中の夫の不貞行為について夫側に問い質してはいないけれども、その時の不貞の確たる証拠がある。

 ④同居中に夫が不貞行為をしていたか確たる証拠まではないが、疑わしい事実・証拠が多数ある。

 なお、ここでの「不貞行為」というのは、夫が他の女性と肉体関係を持つことを指し、単にデートをするといったものは含みません。

 上記の①から④の例をご覧になると「不倫が強く疑われる」というよりも「ほぼ不倫で間違いがない」というケースではないか?と思われるかもしれません。

 ただ、例えば、上記の①でも、その不貞が行われたのが、今から7年前ということもあります。7年前に不貞に及んでいたからと言って、今回不貞の関係で別居したとまでは言い切れないかもしれません。

 そのため、いずれも「不倫が強く疑われるケース」に含まれるものとして、解説していきます。

 

(1)【対処法①】不貞の証拠をつかむ

 まず最初に取り組むべき大事な作業は、不貞の証拠をつかむという作業になります。

 なお、今回の不倫相手が過去の不倫相手と同じである可能性が極めて高いという場合には、改めて不貞の証拠を集める必要はないのですが、「違う相手の可能性がある」という場合には、改めて不貞の証拠をつかむようにして下さい。

 夫が別居した後ですと、不貞の証拠をつかむことは容易ではないことも多いので、必要に応じて調査会社への依頼も検討してみて下さい。

 

(2)【対処法②】不倫相手への慰謝料請求を検討する

 しっかりと不貞の証拠をつかむことができて、不倫相手を特定することができた後は、その不倫相手への慰謝料請求を検討してみて下さい。

 なお、この慰謝料請求は、夫と不倫相手を別れさせる目的で行うものになります。要するに、不倫相手に慰謝料請求をして、不倫相手の方から夫と別れるように仕向けて行くという対処方法になります。

 ちなみに、この慰謝料請求は、中途半端に請求する形を取ってしまいますと、①夫に足元を見られる、②夫と不倫相手の結束が逆に強くなってしまうというような逆効果になってしまうことも多いので、「請求すると決めたからには、強く請求していく」という姿勢の方がよいと思います。

 

(3)【対処法③】夫の親などから説得してもらう

 前述の不倫相手への慰謝料請求は、あなたにとっては全く知らない相手への慰謝料請求という形になるケースも多く、そこまでするのは抵抗があると感じる方もいらっしゃると思います。

 あなたとしては、もめ事を大きくしたいわけではなく、夫との関係を修復したいだけなのだとすると、慰謝料請求ということではなく、夫を説得してくれる人物を探す方が、あなたの目的に沿っています。

 そのため、夫の両親や兄弟姉妹などで、あなたの立場にも理解があって、不倫を思いとどまるよう伝えてくれる人がいれば、その人から夫を説得してもらうという方法も考えられます。

 

 

4.【ケース2】不倫の可能性が低いケースにおける対処法


 あなたが友人などに「夫が突然出て行ってしまった」「全く心当たりがない」といった話をすると、友人の方から「それって浮気じゃない?」と言われることもあります。

 ただ、前述のように同居中夫側の浮気の気配がほとんどないような場合には、浮気の可能性は低いことが多いと思います。

 もちろん、納得がいかないということで、調査会社に依頼して浮気調査をすることでも良いのですが、浮気調査を実施するかどうかは、調査費用との兼ね合いで慎重にご検討ください(調査費用は結構高額だったりします)。

 以下では、浮気の確たる証拠がないとか、浮気の確たる証拠を得る見込みがないというケースを想定して解説していきます。

 

(1)【対処法①】執拗に捜さない

 突如夫が家を出てしまった場合、不安で別居先を突き止めるまで探すという気持ちになっている方もいると思います。ただ、あまりしつこく探してしまいますと、夫側は余計に心を閉ざしてしまうこともありますので、慎重な検討を要することが多いです。

夫側が別居をスタートする経緯や原因は多岐にわたることが多いため、一概にどのような対処がベストかを決めつけることは難しいです。以下では、大きな類型ごとに分けて検討しますが、「この類型では、このような対応が無難であることが多い」というイメージでお読み頂ければと思います。

 

①夫がよく家出をする方の場合

 これまでの婚姻生活で相手が何回も家出をしたことがあるという場合、今回家を出たとしても、トラブルに巻き込まれた可能性は高くないことが多いように思われます。

 基本的にはこれまでの家出と同様の対応をするのがよいでしょう。

 ただ、今回の家出では夫が大量に荷物を搬出してしまっているという場合には、今までと異なり離婚等を検討している可能性もあり得ますので、夫の真意を早めに確認した方が良いように思われます。

 この場合でも、あまり執拗に相手に連絡を取ることは逆効果になることもありますので、注意が必要です。

 

②置き手紙その他のメッセージを残している場合

 方法がやや古い印象がありますが、夫側が別居にあたって置き手紙を残しているという場合も相当数います。手紙ではなくとも、LINEやメールにメッセージが届く場合もあります。

 いずれにしましても、夫が元気に暮らしていると言うことがメッセージに書き込まれている場合には、あまりトラブルの心配はしなくて良いと思います(但し、室内の様子から不審な点等が多い場合には、警察への相談等適切な対処の必要性がある場合もあります)。

 そして、そのメッセージの中に、あまりあなたからのコンタクトを望まない旨が記載されている場合には、執拗にコンタクトを取ろうとすることは逆効果になる可能性が高いです。

 

③今まで家出などしたことがなく、置き手紙もない場合

 この場合には、夫がトラブルに巻き込まれた可能性も否定できません。

 いずれにしましても、夫が突如家を出るような原因がなかったか、何か、それにつながるような話を相手が口走っていなかったかを慎重に思い出してみて下さい。全く心当たりがないようであれば、まずは、相手が行きそうな場所を探すなり、夫の実家に連絡を取るなりして安否を確認してみて下さい。

 夫の安否が明確ではないという場合には、最寄りの警察署への捜索願の提出も考えなければなりません。

 

④夫がトラブルに遭った可能性が低い場合、執拗に連絡を取らない方が良い。

 特に夫がトラブルに遭った可能性が低いという場合、あまり執拗に連絡を取ってしまいますと、相手の気持ちは余計に離れてしまいかねません。

 また、1日に何十件もメールやLINEを送ってしまいますと、夫側は、「普段からこのようにしつこい人間だった」ということで揚げ足を取ってくる可能性があります。

 夫のことを心配に思う気持ちやあなた自身が寂しい気持ちもあるかとは思いますが、今はぐっと堪えた方が、夫婦関係修復に役立つと思います。

 

(2)【対処法②】夫が残したメッセージにどのように反応すべきか

 夫が置き手紙その他別居に際してのメッセージを残しているような場合、その中には、あなたが納得できない記載やあなたを中傷する内容の記載がなされていることもありますが、その内容に対してすぐに返答するのではなく、1時間でも構いませんので冷静になる時間を設けてから返答した方が良いと思います。

 また、夫のメッセージが離婚を告げてくる内容等の場合には、まず、あなた自身が離婚に応じても良いのかという大きな方針を決断してから返答した方が良いと思います。特に離婚に応じられないという場合、あまり感情的な議論を持ちかけても、相手は余計にあなたに対する気持ちが離れてしまう危険性があるので、慎重な対応が必要になります。

 さらに、あなたが返信をした場合でも、しばらく夫側からの回答がないこともあります。この場合には、夫の方で一定期間あなたとの連絡を絶って冷却期間を設けたいと考えている場合もありますので、執拗に回答を求めるようなことはしない方が良いと思います。

 

(3)【対処法③】くれぐれも感情的にならないこと

 このような場合に、私が相談に乗っておりますと「居ても立っても居られず、夫の実家に押し掛けてしまいました」とか「夫に何回もLINEを送ってしまいました」、「こんなやり方はいくらなんでも酷いと思ったので、そのように電話して伝えてしまいました」といったお話を聞くこともあります。

 ただ、感情的になってしまいますと、状況は悪化していく一方です。このようなことになると、あなた自身も後悔することになると思います。

 そのため、くれぐれも感情的にはならず、冷静に今後のことを見据えて対応する必要があります。

 

(4)【対処法④】基本的には待ちの姿勢にならざるを得ない。

 上記のように執拗に連絡を取ることも好ましくないことが多いので、基本的には夫側からの出方待ちとせざるを得ないケースが多いように思われます。

 その様な場合に、「何時まで待っていればいいんですか?」と質問を受けることもありますが、その時期は明確に申し上げられないと言うことになります。

 夫側があなたとの直接の接触を希望しないという場合には、弁護士を立ててくることが多いのですが、その場合には、夫側が、どのタイミングで弁護士を依頼するか等によって、こちらに連絡が来るタイミングはずれてきますので、1か月くらいとか2か月くらいという明確な目安をお話しすることは難しいです。

 

(5)【対処法⑤】心配がある場合には、離婚不受理申出を!

 例えば、夫が強引な方で、離婚届を勝手に提出してしまうと言う危険性があるような場合には(要するに、こちらの署名・押印を相手が偽装してしまう危険性がある場合という意味です)、あなたの方から離婚不受理申出をしておいて下さい。

 仮にあなたの方で離婚やむ無しという気持ちがあったとしても、離婚の際には取り決めなければならない項目がいくつもありますので、それらが決まる前に勝手に離婚届を提出されることは防止する必要があります。

 そのため、上記のようなリスクがある場合には、念のため、離婚不受理申出をしておくと安心です。

 

(6)【対処法⑥】夫の居場所が分かる場合、どのような対処方法があるか

 例えば、夫のご両親から心配して連絡があって、詳しく聞いてみると夫がご実家に戻っていることが分かったといったケース等、夫の現在の居場所が判明する場合もあります。

①すぐにでも押しかけて夫本人と話がしたいが?

 夫の居場所が判明したのですから、あなたとしては「すぐにでも押しかけて直接話をしたい」と思うかもしれません。

 しかし、急に押しかけると、夫側は居留守を使うなどして直接会うことを避ける危険性もあります。

 そこで、基本的には、あなたに協力してくれる人物がいるようでしたら、その人を介して、直接話をするように夫を説得してもらう方が効果的だと思います。上記の例えで言うと、夫のご両親に事情を話して、夫婦が直接話をする場を設けてもらった方が良いでしょう。

 

②手紙を送ることは?

 夫があなたからのメールやLINEに対して一切返信しない場合で、かつ、LINEも一向に既読がつかないという場合には、あなたの気持ちを伝える方法としては手紙という手段が考えられます。

 ただ、この手紙についても一方的に送りつけてしまいますと、相手は警戒して読んでもくれないという危険性があります。

 そこで、この場合にも、協力的な人物に手紙を託すといった方法の方が効果的なのではないかと思われます。

 

③調停という手段を取ることは?

 あなたの方から執りうる手段としては、家庭裁判所に夫婦円満調停の申立をするという方法が考えられます。調停の手続は何かを強制する手続ではないのですが、裁判所からの書類を受け取った相手がどのような感じ方をするのかについては慎重に検討する必要があると思います。

 

 

5.まとめ


・一口に突如夫が出て言ったケースと言っても、①夫の不倫が強く疑われるケースと②そうでないケースとに場合分けして考えたほうが良い。

①夫の不倫が強く疑われるケースの対処法

 ・不倫の証拠をつかむ。

 ・不倫相手への慰謝料請求を検討する。

 ・夫の両親などから説得してもらう。

②夫の不倫の可能性が低いケースの対処法

・突如夫が別居を開始してしまった場合、ケースにもよるが執拗に捜さない方が良いことの方が多い。

・夫の残した置き手紙等には冷静に返答する必要がある。

・くれぐれも感情的な行動・対応は控えるべきである。

・基本的には相手からの連絡を待った方が良いことの方が多い。

・夫が勝手に離婚届を提出する危険性がある場合には、離婚不受理申出をしておいた方がよい。

・仮に夫の居場所が分かっても、あなたに協力してくれる人物を介してコンタクトを取った方が良いことの方が多い。

 

 

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