内縁解消時に定めなければならない全事項
2019.02.11更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「本当に分かりやすい詳しいブログ解説」を目指して、解説していきます。
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1.内縁解消の際に話し合う必要がある事項とは?
内縁解消にあたっては、離婚届の提出のような戸籍上の手続は必要ありません。しかし、特に内縁夫婦間にお子様がいる場合などには、内縁解消の条件をしっかりと定めておかないと、後から大きなトラブルに発展することもあります。
また、内縁解消の問題になると、慰謝料に目が向かいがちですが、慰謝料だけではなく様々に決めなければならない事項があります。
まず、全体像を把握するためにも、内縁解消の際に話し合う必要がある事項としては、どのような項目があるのかについて解説いたします。通常は以下の6項目について話し合う必要があります(お子様がいらっしゃらない場合には、(1)、(4)~(6)の4項目になります)。
(1)そもそも内縁解消すべきかすべきではないか
(2)養育費をどのようにするか。
(3)面会交流をどうするか。
(4)財産分与をどのようにするか
(5)慰謝料をどのようにするか
(6)年金分割をどのようにするか
2.内縁解消すべきか解消すべきではないか
こちらが内縁解消を切り出したところ、内縁の夫側の反発が非常に強いような場合、少し立ち止まって離婚すべきなのかについて検討すべき場合もあります。
特にお子様がいらっしゃる場合には、お子様のことも考えて結論を出す必要があると思います。
3.養育費をどのようにするか。
念のため補足して説明しておきますが、内縁関係の場合、離婚のように親権者を決定する必要はありません。内縁夫婦間の子どもについては、出産と同時に内縁の妻の子となり、内縁の妻の単独親権となるため、内縁の夫が親権を取得することはないからです。
そして、養育費の問題が生じるのは、内縁の夫が子どもを認知した場合に限定されます。内縁の夫が子どもを認知しないと、内縁の夫と子どもの間に父子関係が発生しませんので、養育費の問題が発生しないのです。
以下では、内縁生活中に認知されているという前提で解説していきます。
(1)まずは、養育費をいくらにするかを話し合う。
養育費を月々いくらにするのかについては、実務上「算定表」というものが活用されており、具体的な内容は、最高裁判所のホームページなどにもありますので、具体的な内容はそちらのサイトをご参照下さい。
なお、「養育費」というと「毎月いくら支払わせるか」という点に目が行き、他にも決めるべき点について疎かになると言うこともありますので、以下の点にも十分注意して話し合って下さい。
(2)支払い終了時期を何時にするか。
最もオーソドックスな内容としては、「お子様が成人するまで」となります。
しかし、お子様が大学に進学することを予定している場合、大学卒業までは養育費を払ってもらいたいと考えるのが通常でしょう。特にお子様がまだ幼児であったり小学生の場合には、「大学入学はまだまだ先のこと」というイメージをお持ちかもしれませんが、今決めておかなければ、将来相手が養育費を出し渋る可能性もありますので、「いつまで養育費を払ってもらうのか」について、きちんと取り決めておく必要があります。
(3)入学費用や進学費用等の取り決め
今後のお子様に関する教育費として、私立高校への入学費用や進級時の学費、大学の入学費用や進級時の学費等は重要な問題になります。前述のようにお子様が小さい場合、まだイメージを持ちづらいかもしれませんが、入学費用等は高額なことが多く、月々の養育費では支払いきれないことが多いため、離婚時にきちんと話し合っておくべき項目になります。
ただ、お子様がまだ小さい場合には、「入学や進学の費用の負担について今後きちんと話し合いの席を持つ」といった取り決め方もあり得るかと思います。
他方、既にお子様が私立高校や大学に在学中という場合には、必要な学費の金額等も明らかになっているでしょうから、学費の半分を相手の負担とするといった具体的な数字を取り決めるべきことになります。
4.面会交流をどのようにするか
(1)まずは、面会交流の頻度を取り決める。
内縁を解消する場合、あなたがお子様を育てていくことになりますので、内縁の夫とお子様とは別々に生活していくと言うことになります。そうすると、内縁の夫としては、今後どのくらいの頻度でお子様に会うことができるのかについては重要なトピックになります。これが面会交流の問題です。
まずは、面会交流の頻度について話し合う必要がありますが、一般的には1か月に1回か、2か月に1回程度とすることが多いように思われます。
なお、安易に頻繁な面会交流を約束してしまいますと、生活環境の変化(例えば、あなたが遠方に引っ越すことになり、内縁の夫の自宅との距離がかなり遠くなってしまった場合とか)等で頻繁な面会交流の実現が難しくなったときにトラブルのもとになりますので、どんなに多くとも、1か月に1回程度で十分だと思います。
(2)それ以上に細かな内容を取り決めるべきかはケースバイケース
面会交流については、相手がどこまでの要望を申し立ててくるかにもよりますが、あまり細々とした内容にしない方が良いケースが多いです。お子様の成長や環境に応じて離婚時とは状況が変化していく可能性も高く、そうすると、あまり画一的に取り決めておかない方が柔軟に対応できるからです。
相手から要望が出されることが多い項目としては、①宿泊を伴う面会交流の要求、②旅行を伴う面会交流の要求、③学校行事や習い事の発表への参加の要求等があり得ます。
5.財産分与
(1)財産分与というのはそもそもどんな話なのか
財産分与というのは、内縁期間中に内縁夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを取り決めると言うことです。
内縁生活中は、別れることを見越して準備しているという内縁夫婦はいないと思いますので、通常内縁夫婦の財産は均等ではないことが多いと思います。例えば、内縁の奥様が専業主婦で、内縁の夫が仕事をしているという場合、内縁の夫名義の預金はそれなりの額貯まっているとしても、内縁の奥様の預金はそれほど貯まっていないというケースもあると思います。
そんなときに、内縁の夫側が「これは俺の名義の預金だから離婚の時には、びた一文お前には渡さない」としてしまいますと、内助の功があった内縁の奥様にとって酷な話になってしまいます。
そこで、別れる時には、内縁夫婦どちらの名義になっているかを問わず、内縁中に築いた財産は半分ずつに清算すべきだというのが財産分与の基本的な考え方になります。
(2)慰謝料とは別問題なのでご注意
離婚に伴うまとまったお金の問題と言うことで、慰謝料の問題と混同している方が多いのですが、財産分与と慰謝料は別の問題とお考え下さい。
即ち、慰謝料というのは、相手に浮気や暴力といった一方的有責性がある場合に、こちらが受けた精神的苦痛を慰謝させるものになるのに対して、財産分与は、このような有責性の問題を抜きにして、夫婦の財産を清算しようという話になりますので、別次元の話と言うことになるのです。
(一昔前には、「財産分与の慰謝料的要素として、慰謝料分も考慮する」といった議論をすることもありましたが、最近は、財産分与は財産分与、慰謝料は慰謝料として話し合うのがオーソドックスです)。
(3)実際問題どのような手順で話をすべきか
厳密に財産分与の計算をする場合には、①対象財産の特定→②財産の評価→③総合計額の算出→④分与方法の検討という手順を踏むことになります。
以下具体的に解説いたします。
①対象財産の特定
財産分与は内縁夫婦で築いた財産を分ける仕組みですので、内縁夫婦で築いた財産以外の財産は対象外になります。
例えば、独身時代に貯めていた預金や相続で取得した財産は対象外になります。
対象財産として代表的なものは、内縁生活の中で購入したご自宅、自動車、預貯金、生命保険や学資保険、株式等になります。
まずは、内縁夫婦で築いた財産としてどのようなものがあるかを割り出して行く作業をすることになります。
②財産の評価
預貯金などは金額が明らかなので問題は少ないのですが、例えば自宅などはいくらになるのかおおよその評価額を調べる必要があります(住宅ローンが残っている場合、通常はローン残高は差し引いて評価することが多いです)。
他にも、生命保険等については今解約したらいくらになるのかを保険会社に問い合わせる必要があります(実際には解約しませんが、いくらの価値があるかを確認するために、保険会社に「今解約した場合いくらになるか教えて下さい」と電話するのです。
③総合計額の算出
上記のように各財産の価値を算出することができた場合、それらの数字を全て足し算して総合計額を算出していくことになります。
例えば、内縁の夫名義の資産がご自宅(評価額3000万円、ローン残高2400万円)、学資保険(解約返戻金額200万円)、預金(3つの通帳の残高合計が300万円)で、内縁の奥さん名義の資産が預金のみ(2つの通帳の残高合計が100万円)というケースですと、総合計額は(3000万円-2400万円)+200万円+300万円+100万円で、総合計は1200万円になります。
この総合計額を算出する際には、内縁の夫側の資産だけではなく、あなたの資産分も加算する必要がありますので、ご注意下さい。
④分与方法の検討
前述の例ですと、総合計額が1200万円になりますので、あなたの取り分は半額の600万円になります。
このような600万円の取り分で何を取得するか、あなたの希望を検討することになります。
即ち、自宅の価値が600万円なので、自宅を取得し、同時に住宅ローンの名義もあなたに変更するという方法もあり得ますし、逆に、自宅は内縁の夫側に渡して、内縁の夫名義の学資保険をこちらに名義変更し、旦那さんの預金額全額を取得するという方法もあります。
要するに、取り分の範囲で何を要求していくのかという問題です。
6.慰謝料をどのようにするか
内縁解消の問題は、相手から突発的に内縁解消を切り出されるとか、相手が勝手に別居生活を始めてしまうなど、内縁破棄に向けた何らかの行動が発端になることが多いです。
ただ、内縁関係は婚姻に準じて保護される関係になりますから、これを正当な理由もなく破棄しようとする場合には、慰謝料の問題が発生します。そして、内縁を一方的に破棄できる「正当な理由」は法律上の離婚原因(民法770条)に準じるような重大な事由がないと認められないものとされています。
慰謝料をいくらにするのかは悩ましい問題ですが、相手が浮気を繰り返したり、あなたへの暴力を繰り返すような場合には、一般的な内縁解消のケースよりも高額な慰謝料を要求しても良いと思います。
7.年金分割について
内縁の年金分割の前提としては、内縁の妻が、内縁の夫の勤務先の保険や年金の被扶養者となっていることが必要です。年金事務所としても、内縁の妻が被扶養者になっていないと、記録上内縁関係にあるのかどうかの判断がつかないから、被扶養者であることが一つの条件になります。
なお、そもそもの年金分割のシステムというのは、内縁の夫が会社勤めで、内縁の妻は専業主婦というケースでは、内縁夫婦の年金積立額は大きく異なってきます(内縁の夫側は給料天引きで相当額の厚生年金を支払っていることと思います)。年金分割とは、婚姻中の内縁の夫の厚生年金支払履歴の半分を内縁の妻側に移す制度になります(つまり、年金分割をしておくと、将来年金の支給を受ける年齢になったときに、もらえる年金が増えると言うことになります(内縁の夫側は逆に減ることになります))。
年金分割の手続のためには、「年金分割のための情報通知書」を年金事務所にて入手する必要がありますので、事前に準備しておいて下さい。
この年金分割については、内縁夫婦で半分に分かるというのが一般的で、年金分割の合意ができあがったときには、年金事務所に書類を提出しなければいけません。
8.話し合いがまとまったときには必ず協議書を作成する。
前述のように、養育費など離婚後長期間にわたって約束された項目などもありますので、話し合いの内容は必ず離婚協議書という形で書面化して下さい。
この離婚協議書では「当事者間では本離婚協議書に定める他何ら債権債務がないことを確認する。」という一文を入れておけば、後から話が蒸し返される危険性はほとんどなくなります。
9.まとめ
・内縁解消の際には、以下の事項を取り決める必要がある。
(1)そもそも内縁解消すべきか解消すべきではないか
(2)養育費をどのようにするか。
(3)面会交流をどうするか。
(4)財産分与をどのようにするか
(5)慰謝料をどのようにするか
(6)年金分割をどのようにするか
・項目ごとに注意事項があるので、注意事項に留意しながら取り決める必要がある。
・話し合いがまとまった段階で、協議書を作成した方が良い。
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弁護士 秦(はた) 真太郎
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