【夫から我が子への虐待(1)】これって児童虐待?(「しつけ」との線引きは?)
2024.01.29更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.児童虐待とは?
どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的な内容は以下の通りです。
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
2.それぞれの概要
児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。そこで、以下、それぞれの意味について、概要をご説明いたします。
(1)身体的虐待
厚生労働省のサイトなどでは「殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など」と具体例が書かれていますが、もちろん、身体的暴力に該当する行為は全て含みますので、これらの行動に限定されるわけではありません。
なお、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
(2)性的虐待
厚生労働省のサイトなどでは「子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など」と具体例が書かれています。
なお、実際には、上記のような露骨な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。これらの①や②のケースは、残念ながら、上記の露骨な性的虐待よりは悪質性が落ちるため、その言動の内容や鑑賞内容がかなり露骨なものであったり、執拗なものであったりしないと、直ちに「性的虐待には当たらない」ケースも多いので注意が必要です。
(3)ネグレクト
厚生労働省のサイトなどでは「家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など」と具体例が書かれています。
なお、朝登校準備等で慌ただしく、お子様が朝食を食べずに出かけたことをもって、ネグレクトなどとおっしゃる方もいますが、児童虐待防止法は児童の心身の正常な発達を妨げるような「著しい」減食としていますので、直ちにネグレクトには該当しにくいかと思います。
(4)心理的虐待・面前DV
厚生労働省のサイトなどでは「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など」と具体例が書かれています。
なお、児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義していますので、多少のきつい言い方は、直ちに児童虐待には該当しないこともあります。
3.「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ではないこと
上記のような児童虐待の解説をしますと、「夫は、機嫌が悪くなると子供に八つ当たりのようになるが、直接手をあげるわけではないから」とか「夫は、娘に対して、わいせつな冗談を言うけれど、児童虐待防止法の『性的虐待』とまでは言えないのかも」といった不安を持つ方もいらっしゃいます。
ただ、上記の児童虐待防止法が禁止する児童虐待は、それ自体が犯罪に該当したり、直ちに児童相談所が対応しなければならないような「重大・深刻なケースばかりを想定しています」ので、「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ということにはなりません。
4.結局「しつけ」との線引きは?
結局、児童虐待と表現するかどうかはともかくとして、許容限度を超えるような不適切な関わりと、しつけとの線引きはどこにあるのでしょうか。なお、「性的虐待」はあまりしつけとは関係性が薄いため、「性的虐待」との関連性は割愛させて頂きます。
(1)身体的暴力
前述の通り児童虐待防止法は、お子様が怪我をするとか怪我性があるという点が、児童虐待に該当するかの大きな線引きになっています。
ただ、怪我をするかどうかを問わず、夫がお子様を殴ったり蹴ったりするような行動をとること自体、かなり不適切な関わりと言えると思います。これは怪我をするかどうかの問題ではないと思います。
なお、暴力については、
・息子の勉強の出来があまりに悪かったからだ
・まじめに勉強しているように思えなかったから、こうした
・約束を破ったので、体罰は必要悪だ
・嘘をつくような子には、ある程度懲らしめることが必要だ
・妻が言うことを聞かせられないので、やむを得ず私がこうしている
・俺が小さい頃はこのくらいのことは普通だった
・少し殴られるくらいの方が体が頑丈になるんだ
・嘘をつくことが癖のようになってしまっているので、体で覚えさせる必要がある
・生意気な態度をとるので、社会の厳しさを教えてやってるんだ
などと、夫側が暴力の正当化の理由を述べることもありますが、暴力自体が許されないものですので、どのような経緯・理由があっても、それが「適切」になることはないと思います。
(2)ネグレクト
しつけとの関係でよく問題になるのは、体罰のような形で、例えば、①押し入れやトイレなど狭い場所や暗所に長時間閉じ込める、②些細な約束違反で食事を一切与えない・そのようなことが何度も続く、③お風呂で遊ぶことが好きなお子様も多いと思いますが、何日も入浴を禁じる、④室内がゴミ屋敷のようになっており、長期間そのような状態が継続している、といったものが具体例として挙げられると思います。
なお、相手のネグレクトを指摘する場合には、あなた自身がそれを改善できなかった事情等も証明しなければならないという問題があります。
例えば、あなたが仕事から帰って来ると、先に帰ってきていた夫が娘をトイレに閉じ込めていたというようなケースですと、あなたが気付いてから、娘様を救出するまでに長時間がかかってしまいますと、あなたが閉じ込めの共犯のようになってしまう恐れがあるということです。
閉じ込めだけではなく、お子様への食事禁止、入浴禁止、室内の清掃禁止の状況についても、同様のことが言えます。
そして、こちらから、夫の問題行動として指摘すると、逆に、夫の方から「子供に食事を与えていなかったのは妻の方だ」などと、逆にあなたの問題行動として指摘し返してくるケースもあります。
いずれにしましても、ネグレクトは「夫婦の連帯責任」というように捉えられやすいので、十分注意が必要です。
(3)心理的虐待
一口に心理的虐待と言っても範囲が非常に広いので、なかなか特定が難しいのですが、少なくともお子様への執拗な誹謗中傷やきつい責め立て、脅しといった行動が不適切であることは間違いがありません。
「身体的暴力」の箇所で解説しました通り、心理的虐待の経緯や理由がどうであろうと、その行動が「適切」となることはないと思います。
5.まとめ
・「児童虐待」については児童虐待防止法に定義があり、大別すると①身体的暴力、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVに分けられる。
・児童虐待防止法上の「児童虐待」に該当しないからと言って「許される」ということにはならない。
・身体的暴力は、いかなる経緯・理由があっても基本的には不適切な行為と言える。
・ネグレクトを指摘する場合「夫婦連帯責任」と言われてしまうことが多いので注意が必要である。
・心理的虐待についても、その言動が悪質であったり執拗であったりすると、許容し得ない。
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